いつも人と比較してしまう人は… 「比較して自分を否定する自分はダメ」という考えもやめましょう/精神科医Tomyの自分をもっと好きになる 「自己肯定感」の育て方③

暮らし

公開日:2021/2/1

Twitter上で多くの人の不安や悩みを吹き飛ばしてきたTomy先生が、自己肯定感を見つけて育てていく方法を、さまざまなケースから読み解きます。これであなたも、肯定感が持てないパターンと対策がわかる!

精神科医Tomyの自分をもっと好きになる 「自己肯定感」の育て方
『精神科医Tomyの自分をもっと好きになる 「自己肯定感」の育て方』(精神科医Tomy/マガジンハウス)

いつも他人と比べてない?

 今日の患者様は比嘉周人さん。27歳の男性の方ね。有名な大学を出て、有名な会社に入って入社して4年目ね。カルテを見る限り、順風満帆に見えるけど、どんなことでお困りなのかしらね。お呼びしてみましょうか。

周人 入ってもよろしいでしょうか?

Tomy どうぞお〜。アテクシ担当医のTomyと申します。よろしくお願いしますね〜。

advertisement

周人 よろしくお願いします。

Tomy どんなことで今日はいらっしゃったんですか?

周人 単刀直入に申しますと、私は何かと周りと比較して自分に嫌気がさしてしまうんです。そんな自分をなんとかしたくてこちらに参りました。

Tomy ええっ、そうなんですか。ご立派にやってらっしゃると思うんですが。たとえばどんな感じに比較してしまうのかしら?

周人 たとえば、僕は実は一浪しているんですが、そのときも周りはストレートで入っている友人ばかりだったので落ち込みました。一浪して希望の大学には入ったんですが、「一年も無駄にしてやっとスタート地点か、俺はいったい何をやっているんだろう」と思ってしまうのです。

Tomy えー、でも立派な会社に入られたんですし。

周人 会社も、本当は大学に残って研究職をやりたかったんです。でも研究の道は狭く、自分はどうも才能がない。それで就職を選びました。そのことも頭にひっかかっていて「どうして俺はやりたいことをやれなかったのだろう」と思ってしまうんです。

 それに就職した会社も第一希望の会社ではなく、第二希望の会社です。第一希望の会社は最終面接で落ちてしまって。そこでも「なんて俺はダメなんだ」と自分を追い込んでしまうのです。

Tomy 常に比較して、自分を追い込んでしまうのね。

周人 そこまで追い込むことはないと考えたいのですが、いつも「もっとできたはずなのに」「もっとできる人もいるのに」と考えてしまうのです。そんな考え方しかできない自分も嫌になってしまいます。先生、何かお知恵を貸してください。

Tomy まあまあ。ところで、アナタは今の会社で何か問題でもあるかしら?

周人 あります。周りと比べて仕事も遅いですし、ノルマも十分にこなせていません。特に怒られたりはしていないですが、同期でよくほめられている人も多くいます。特に残業もないのですが、それは僕があまり仕事を任せられないからです。

Tomy ちょっとちょっと。アテクシからみたら、『そつなく順調に仕事はうまくいっている』としか思えないけど。だって何も具体的な問題は発生していないわよね。注意もされていないし、仕事に行けなくなっているわけでもない。

周人 そういう言い方もできるかもしれないですが……。でも僕はそんなんじゃ嫌なんです。

Tomy ふう、じゃあ、アナタはどうしたら満足できると思う?

周人 えっ。たとえば、仕事がもっと早くなって同期の中でもっとも評価されるようになって。

Tomy そうしたら本当に満足する? 研究に進めなかった自分を責めるんじゃない?

周人 そう……、だと思います。

Tomy そして、アナタが研究職についたとしても、思うように結果が出せないと自分を責め立てる。そうでしょ?

周人 きっと、そうなりますね。やっぱり僕の考え方もダメなんですね。

Tomy ちっともダメなんじゃないわ。ただ肯定できていないだけなのよ。

周人 どんなに事態が改善されていったとしても、自分を肯定できず責め立ててしまうことは変わらないということですね。正直つらいです。どうやっていったらいいんでしょうか。

Tomy そうねえ。いろいろやり方はあるけれど、まずは自分を否定するのをやめて言い換えてみたらどうかしら?

周人 言い換える?

Tomy たとえば「自分を否定するのをやめて肯定してね」と言ったところで、それができないから困ってるわけでしょ。だからそれを言ったところで、「比較して自分を否定する自分はダメなんだ」みたいに、自己否定の二重みたいなことになるだけなのよね。

 ここはまず、

 比較してもいい

 ってところから始めましょ。

周人 比較してもいい?

Tomy そうよ。比較してもいいのよ。比較することがアナタのモチベーションにつながっているし、だからこそ今の自分がある。もし比較もせず、自分をダメだとも思わなかったから、ここまで来れていないと思うのよね。比較をする自分はダメだって思うことがすでに自分を否定しているんじゃない?

周人 確かにそうですね。でもこのままだとつらいです。

Tomy それは比較をすることが問題なんじゃなくて、比較をしたあとの問題なのよ。

周人 比較をしたあとの問題?

Tomy そうよ。たとえば、今アナタが一番比較をしてつらいことって何かしら?

周人 ええっと。仕事の覚えが人より遅いってことです。

Tomy じゃあ、人より早くなればいいんじゃない? それが目標なんじゃない?

周人 そうですね。目標です。

Tomy アナタには目標がある。それはつらいことでも何でもないんじゃない?

周人 あっ。そ、そうですね。

Tomy アナタの比較して自分を責める点を、「これからの目標」と置き換えればいいだけなのよ。責めたところで何にも生まれないんだし。

 そして、ある程度努力したところで、「過去の自分」と比較すればいいんじゃない? つまり他人と比較して出てきたポイントは「自分の目標」に変え、がんばってみる。そして、「過去の自分」と比較する。

周人 なるほど! 他人と比較して落ち込むところに気持ちをもっていかないようにするんですね。

Tomy そうそう、所詮、

 自分と他人は土俵が違うのよ。

周人 ありがとうございます。やってみます。

他人と比較したら、自分の目標と置き換え、過去の自分と比較するようにする。

<第4回に続く>