真面目な人に潜みやすい、「10体の怪獣」とは?/無意識のため息が驚くほど消えて うつうつしなくなる

暮らし

公開日:2021/8/13

最近ごはんがおいしくない、ふとした瞬間に不安になる…。コロナによる自粛生活で、沈んだ気持ちになっていませんか? それは“うつうつした気持ち”が原因かもしれません。

うつ病まではいかないが、以前より“うつうつとしがちな方”に向けて、心療内科医・産業医でもある石川陽平先生が、患者や自身にも応用している「毎日を少し楽にする実践テクニック」をご紹介します。

※本作品は石川陽平著の『無意識のため息が驚くほど消えて うつうつしなくなる』から一部抜粋・編集しました

advertisement

『無意識のため息が驚くほど消えて うつうつしなくなる』を最初から読む


無意識のため息が驚くほど消えて うつうつしなくなる
『無意識のため息が驚くほど消えて うつうつしなくなる』(石川陽平/KADOKAWA)

気をつけたい無意識を、怪獣に例えて見つけてみよう

 自分をうつうつに追い込んでしまう感じ方は、実はいくつかのパターンがあります。このパターンを事前に知っておくと、「あ、自分の中でこの感じ方をすることが多いな」というものが見えやすくなります。

 本書では、この感じ方のパターンを、怪獣になぞらえて紹介しましょう。自分自身の感じ方を直そうとすると、自分自身が悪いような気がして何か気持ちが重くなってしまうからです。自分自身を悪く思うのではなく、自分自身に潜んでいる怪獣くんを見つけるような気持ちで考えましょう。

「あ、自分の中にあのパターンの怪獣がいた、このパターンの怪獣も見つけちゃった」という感じで、自分の中に潜んでいた怪獣を見つけて手なずけることで、気持ちを和らげていきましょう。

 人によって潜みやすい怪獣がいて、同じ怪獣が日々顔を出していることがあります。うつうつしたときには、これから紹介する怪獣が自分の中に潜んでいないか、振り返ってみましょう。

 この本では、10体の怪獣をA〜Dの4タイプに分けて紹介します。

タイプA:理想追求型怪獣
タイプB:ネガティブ思考型怪獣
タイプC:気の使いすぎ型怪獣
タイプD:決めつけ型怪獣
 です。

 

怪獣は、真面目な人に潜みやすい

 具体的な10体の怪獣を見ていく前に、先程のタイプの名称をみると、真面目な人が陥りやすいものが多いように思えませんか? そう、うつうつしやすい人、というのは、真面目な人が多いのです。チャランポランという言い方は失礼かもしれませんが、「ま、いいか」「ま、なんとかなるっしょ」という考えを持っているときは、実はあまりうつうつしづらかったりします。

 よく、「私なんて、仕事ができなくって……」とうつうつしている方がいらっしゃるのですが、話を聞く限り、「それ、とても真面目に考えているからこそですよ」ということが多いです。そもそも、適当な人なら、「仕事ができなくても、ま、いいや」となっても全然おかしくありません。「仕事ができない私が悪くて……」と考えてしまうのは真面目な人だからですよね。

 その真面目さは、とても大切なことですし、長所になることもあります。しかし真面目さが行きすぎて、自分をうつうつさせる考え方につながっているとしたら? 真面目な性格の長所は残して、無意識に潜んでいる怪獣だけを手なずければ、よいところを残したまま、ラクになるのではないかと思います。

 それでは、早速タイプAの理想追求型怪獣を見ていきましょう。

 

*** タイプA:理想追求型怪獣 ***

 初めに紹介するタイプの怪獣は「理想追求型怪獣」です。真面目によいものを追求する、理想を掲げること自体は決して悪いことではなく素晴らしいのですが、その理想が強くなりすぎてしまったときに出現してきやすい怪獣です。

 この怪獣がいるときは、自分としては理想を追い求めているだけで、むしろ悪くない状態だと考えていることが多いです。しかし、理想が知らず知らずのうちに高い場所に置かれすぎたり、完璧を求めすぎたりすると、心の中の怪獣が暴れて自分をつらい状態に追い込んでしまうことがあります。

 

怪獣1号*「すべき思考」怪獣

 まず最初にお伝えするのは、「すべき思考」の怪獣です。「べき思考」とも言われることがあります。 「こうすべき」「こうあるべき」など、自分独自の基準・ルールを作り上げて自分を追い込んでしまう怪獣です。

無意識のため息が驚くほど消えて うつうつしなくなる

 実際、私自身がこの本を書いているときにこの怪獣が顔を出してきました。

 本を書くために、「あの論文引用したいな」とか、「間違った内容を書かないように、論文と内容のずれがないようにしなきゃ」とか考えているうちに、次第に、

「医師たるもの、科学者として全て研究や事実を引用しなければ! 徹底してロジカルに詰めるべき!」

 という無意識のルールが自分の中でできあがってしまいました。

 すると、編集者の方から、

「内容がかたくなってしまっています」

「だんだんコンサルタントのようなロジカルな内容になってきていて、うつうつしているときに読みにくいです」

 という指摘をもらい、大幅に書き直しました。

 

 このとき、私の中で起きていたことは、書き進めていくうちに、「医師たるもの、科学者として全て研究や事実を引用して、徹底してロジカルに詰めるべき!」という「すべき思考」が強くなっていったということです。しかし、実際には、その怪獣が現れることによって、文章はどんどんとかたくなり、書いている自分自身もどこか追い込まれてしまっていました。

 変なことを書いて、「怪しい医者」「科学者としての医師の道から逸脱し始めた」という後ろ指を指されるのが怖くなり、この怪獣がひょっこり現れました。「怪しい医者」と呼ばれるのは絶対避けたい、という思いが強くなりすぎて、「論文を引用! 徹底してロジカルに説明すべき!」という、すべき思考(独自のルール)ができあがり、もともとの「できるだけわかりやすい文章を」というゴールから遠ざかって、自分を苦しめていたのだと思います。

 この怪獣は、医師以外の職場でも、もちろん姿を現します。例えば、教師の方が、「子供は大人を見て育つ、生徒の模範となろう!」

 という意気込みを持って入職したとします。そのこと自体は素晴らしいことなのですが、それが行きすぎて、

「教師は、生徒の模範となるため常に真面目でなくてはならない!」

 というところまで行ってしまうと、模範になること自体がルール化してしまい、自分を縛ってしまいます。

 

 さらに、「すべき思考」の怪獣には、サブタイプがあります。自分の中だけではなく、他の人にも独自の基準をあてはめ、それができていない人に怒りなどを感じるパターンです。例えば、特に正式に決まったルールではないのに、「うちの部署ではこういう進め方でやることがルールになっているのに、その通りにしなかった!」と、誰かにイライラしている人がいたとします。

 でも、それは、部署の暗黙のルールだったり、その人の中で「当たり前」として無意識にルール化されている「その人の独自ルール」だったりするのです。こういうとき、このルールで怒られてしまう人もかわいそうですが、怒っている人自身も、つらい状況に自分を追い込んでいるのです。

 すべき思考の怪獣が潜んでいることに気づけたら、それだけでうつうつ気分が和らぐこともありますが、もし可能であれば、もう一歩先に進んで、怪獣を手なずけて〝よい怪獣〞にしたいですよね。

「すべき思考」の怪獣を手なずけたいときには、そのルールが作られるに至った理由を遡って、 「そのルール、本当?」と問いかけて、修正してみましょう。

 

 例えば、私の場合であれば「全て論文を引用して、ロジカルに詰めて説明すべき」という独自ルールが作られていたのですが、「そのルール、本当?」と問いかけました。

 そうすると、「この本は教科書や論文ではないので、正確性は担保しながらもわかりやすく書くことが大事だよね」という考え方に修正されます。

 また、教師の例でも「教師は、生徒の模範となるため常に真面目でなくてはならない!」という考えに対して、「そのルール、本当?」と問いかけてみます。

 そうすると、「教師であっても、完璧ではないし失敗もする。むしろ失敗から学ぶ姿勢こそが大切ではないか。真面目にやることだけがルールではない」というように修正できます。

 このように、「すべき思考」の怪獣が自分の中にいた場合には、その強すぎる独自のルールに対して「そのルール、本当?」と問いかけてあげることで、うつうつを和らげることができます。

<続きは本書でお楽しみください>

あわせて読みたい