懐かしいあの頃をもう一度…少年時代の平成に転生する日常コメディ『平成少年ダン』/マンガPOP横丁(106)

マンガ

公開日:2022/4/15

平成少年ダン
『平成少年ダン』(サンカクヘッド/集英社

 平成は“レトロ”か否か――。こんな議論がネット上で熱く議論されていた2021年。その結果トレンドとして躍進したワードが「平成レトロ」だ。時代を懐かしむ物事を意味する“レトロ”。その人にとってその時代が「懐かしい」と感じればそれが“レトロ”であり、昭和末期生まれのはりまにとっては、少なくとも2000年(平成12年)くらいまでが“レトロ”である。ちなみにゲーム実況の祖であるゲーム番組の“某課長”で扱うレトロゲームの枠の中には2000年に発売された作品も。このことから平成の前半はもはやレトロといっても過言ではない。ということで“平成レトロ”を熱く語ってしまったが、今回は、まさに平成の前半に少年時代を過ごした主人公がその時代に転生してしまう日常コメディ、『平成少年ダン』(サンカクヘッド/集英社)をご紹介!


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ど真ん中世代は必見!令和を生きる青年に突然始まる、懐かしい日常

 マンガ家を夢見て上京した大鷹団(以下、ダン)は、唯一の収入源であったマンガ家のアシスタント業が終わり無職に。アシスタントと持ち込みで多忙だったダンはいつの間にか32歳の誕生日を迎え、そして時代は令和へ突入していた。ある日、世の中の生きづらさを感じながら街を歩いていると、お店のショーケースに展示されていた1999年の週刊少年ジャンプを発見。当時小学4年生だったダンは、あまりの懐かしさに興奮! そして同時に、当時仲の良かった女の子からMDをもらった記憶がよみがえる。するとダンは、楽しかったあの頃の思い出にもう一度触れたくなり思い切って実家のある山梨県の団地へ帰り、さらに20年前に隠した宝物を探すため、かつて仲間と放課後過ごした屋上の元秘密基地へ。宝物は奇跡的に見つかり開けてみると、その中には、一時世間で大ブームになったペットロボット玩具「ファービー」に似た、パチモノのペットロボットが! さらに強まるあの頃が楽しかったという想い。するとそのロボットの目が突然開き……。次の瞬間、目の前には少年時代の自分がいて、平成11年の実家の居間の光景が広がっていた。さらに大学生の頃に他界した母親や一緒に遊んだ団地仲間も現れ、ダンの懐かしい風景と小学4年生時代の日常が始まろうとしていた――。

 ペットロボットに転生した令和のダンと、ダン少年とともにかつての懐かしい平成時代を過ごす日常コメディ。そこにはダンと同じ団地に住む元太のほか、活発なツインテ女子のヒバリ、団地に隣接する豪邸に住むおっとり系女子のオジョウと、常に一緒にいた仲間がいて、賑やかな日々の様子が描かれ読んでいてめちゃくちゃ楽しい。ダンの母親のサイドエピソードなどもあり、その行方にも注目だ。著者のサンカクヘッド氏はまさにど真ん中の世代のようで、当時の少年ジャンプやゲーム、お菓子、懐メロ、グッズなど、この時代を過ごした元キッズたちには懐かしさで胸いっぱいになっちゃう要素やネタがたっぷり! 世代であればきっと“懐かしい”が出てくるハズだ。さらに、作中でダンが挙げる小学4年生時代のベストミュージックもナイスな選曲。この時代になじみのない方にもちょうどいい歴史のガイドになっていることだろう。

 90年代に少年時代を過ごした著者の90年代への想いが詰まったこの作品。ぜひとも「平成レトロ」を提唱している山下メロ氏とのコラボが実現してほしいところ!

マンガPOP横丁

文・手書きPOP=はりまりょう

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