クライマックスが最高に胸アツ! 多種族がわちゃわちゃするファンタジーコミック『ビーストリングス』/マンガPOP横丁(107)

マンガ

公開日:2022/4/22

ビーストリングス
ビーストリングス』(山本四角/KADOKAWA)

 読後の満足感がこれほどまでに満たされた作品に出会えたことは、このコーナーがなければあり得なかったかもしれない。コテコテのギャグやコメディ系の作品を好む私が心から魅了された山本四角先生の『ビーストリングス』(KADOKAWA)は、いろんな種族が入り混じったファンタジー作品で、久々に目と胸が熱くなった。この素晴らしい作品をどうしても紹介したく、今回は急遽作品をチェンジしてPOPと本稿を制作したので、ぜひともお付き合いいただきたい。


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 作品の舞台は、かつて「白鯨大迷宮災」と呼ばれる“厄災”に見舞われた「十奏市(じゅうそうし)」。ある大陸にある人口約300万人の中核都市で、経済・流通・学問・文化そして娯楽の中心地である。この街にはヒューマンのほか、獣人やエルフなど多種多様な種族が共存している。街の発展・治安の維持のために自ら現場へ赴いて種族関係の友好をはかりながら魅力的なまちづくりを目指す、厄災から十奏市を守りヒーローとなった市長を筆頭に、それぞれがそれぞれの日常を送っていた。そんなある日、十奏市に再び“厄災”が訪れる。果たして十奏市と彼らの運命やいかに……! バトルあり、コメディあり、恋愛や人情ならぬ「獣情」ドラマありの、種族わちゃわちゃファンタジー作品だ。

 この作品は大きく4つの章から構成されている。4つは別々のお話だが、ひとつの都市で起きている物語なので、別の章の登場キャラとクロスする場面も。そしてこれらの物語がラストで集約されていく。そう、それが再び訪れる“厄災”についてである。まさにこの作品タイトルである『ビーストリングス』になっているのだ。すべての物語を読んだ者だけが味わえるこのクライマックスは最高に胸が熱くなるところ! 個人的に好きなのは、ある意味この物語のメインともいえる市長のエピソードなのだが、竜人レスラーとアイドルを目指す吟遊詩人の出会いと絆の話、エルフお嬢様と狼獣人の執事との話も可愛らしくて、正直どの章も甲乙つけがたい。そして登場キャラがどれもコミカルで愛らしいところもこの作品を推したい要素のひとつでもある。

 フルカラーで描かれた山本氏の力強くて美麗なキャラクターたちの“導かれし者たちの物語”は、最高のエンターテインメント作品であり、ファンタジー作品を愛するすべての方に贈りたい。これは間違いなく名作だ。

マンガPOP横丁

文・手書きPOP=はりまりょう

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