“恋愛運”最強の日! 複数の男性から同時に告白された詩都花。その答えは…/5分後に恋の結末 友情と恋愛を両立させる3つのルール⑤

文芸・カルチャー

更新日:2022/7/20

「ちょっと、なんで最初から断る前提なの? 会ってから決めればいいじゃん」

 紗月だったら、そうするのだろう。しかし、詩都花のなかには明確に、断る理由があった。

「私、乙女座なの知ってるよね?」

 詩都花の唐突な質問に、紗月とエミがきょとんと目を丸くする。詩都花はかまわずに淡々と続けた。

「『ホロスコ!』で、今日の乙女座の運勢は最高によかったけど、『獅子座の人との相性だけは最悪』ってなってたの。たぶん、獅子座のほうにも同じことが書いてあると思う。『乙女座との相性は最悪』ってね。今日、私に告白してきた男子たち、たぶん、全員、獅子座なんだと思う。きっと、『恋愛運が最高』っていうのに、背中を押されたのね。でも、『ホロスコ!』で、自分の星座だけしか見ていないんだわ。私、SNSに自分の誕生日は公開してるから、私が乙女座ってことは、調べればすぐにわかるはずなの。それなのに、自分の運勢だけを見て舞い上がって、突っ走って告白してくる人なんて、私に興味があるんじゃなくて、自分本位ってことだと思わない? そういう人とは、うまくいきっこないわ」

 占いを信じるも信じないも自由だ。そこをとやかく言うつもりは詩都花にだってないし、エミが言っていたように、占いに背中を押されて勇気を出すのも、悪いことではないと思う。

 しかし、それでまわりが見えなくなってしまったのでは、本末転倒だ。いくら獅子座でも、それでは、ナマケモノの百獣の王。とても告白を受け入れる気にはなれない。

「それじゃあ、断ってくる」

 そう言って、険しい表情でエントランスを出ていく詩都花を、紗月もエミも追わなかった。いや、追えなかった。自分が好きでもない相手から告白されることは、詩都花にとっては嬉しいどころか、重荷なのかもしれないということに、今さら思い至ったのだ。実際、詩都花は、たくさんの人から告白されたことを手放しで喜ぶタイプではないのだから。

 そんな詩都花のことだから、「体育館裏の名無しクン」だけでなく、手紙をくれた美術部の松岡先輩や、図書室で告白してきた1年生、出会い頭に「好きだ!」と声を張り上げた大柄な男子――獅子座の男子たちに、キッパリと断って回るんだろう。そして、詩都花はますます「高嶺の花」と噂され、男子にとって近寄りがたい人になってしまうのかもしれない。

 それでも、「占い」のようなフワフワしたものに流されない。それこそが詩都花だ――紗月とエミは、そう思った。

<続きは本書でお楽しみください>

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