学びは本来楽しむもの。算数も体験して理解しよう。勉めを強いる「勉強」という言葉は使用禁止に!?

出産・子育て

2018/3/23

 入学シーズンを迎え、もうすぐ期待と不安で胸いっぱいの子どもたちの新生活がはじまる。親も我が子の成長に大きな喜びを感じながら、内心では「うちの子、大丈夫かな。勉強についていけるかしら? 友だちできるかしら?」と心配事は尽きない。特に新小学1年生は、国語、算数、生活科の授業がスタートする大事な時期。

 2020年度から小学校高学年で英語も成績の付く教科になり、中学年でも成績は付かないが必修科目となる。大学入試改革もはじまるこの転換期に、我が子が勉強を好きになってくれることを願わない親はいないだろう。

 ではどうすれば、子どもが勉強に興味を持つのだろうか? 家庭でどんな学習教材を与えれば、自ら学ぶ子どもに育つのだろう?

 そこで各教科で、子ども目線に立った人気学習教材、図鑑、漫画を作っている達人たちに、子どもを勉強好きにさせるヒントを伺った。

 子どもの「なぜ?」「どうして?」にこたえる記事や付録満載の『小学一年生』は、子どもの知的好奇心を育てる総合学習誌として長年、愛読されている。雑誌づくりの現場で培った、子どもの「知りたい!学びたい!」気持ちを引き出す方法とは? 特に好き嫌いがわかれやすい「算数」に興味を持たせるため、親が子どもにできることはあるのか? 3人の子どもを持つパパでもある編集長の渡辺朗典氏に話を伺った。

渡辺朗典編集長

――今年の『小学一年生』4月号の特別付録は、ドラえもんの音声アラーム付きの目覚まし時計ですね。ピッカピッカの一年生はまず規則正しい生活習慣を身につけましょう、と。

渡辺朗典編集長(以下、渡辺) そうですね。楽しい学校生活も学習習慣も、規則正しい生活習慣を身につけるところからはじまります。これは学校現場の先生方が口をそろえて言うことです。早寝早起きが基本ですが、勉強、ゲーム、テレビも時間を決めて計画的にやったほうがいいので、ドラえもんやしずかちゃんたち5人が「はじまり」と「おわり」の時間を知らせる音声アラームも選べるんですよ。これは世界初の新機能! 今しか買えないスペシャル時計です(笑)。

――学習習慣も、普段の生活習慣のなかで自然に身につけられるといいですよね。

渡辺 6歳という年齢は、世界的に見ても学習をはじめる適齢期で、自分からどんどん知識を吸収するようになる、知恵の爆発期みたいなもの。ついついいろんなものを与えたくなる親御さんもいると思いますが、まずは健康的な生活習慣を身につけさせて、子どもの好奇心や興味関心の赴くままにいろんな体験をさせてあげるのが一番だと思います。

「勉強」という字は「勉めを強いる」というネガティブな意味にとれるので、あまり良くないですよね(笑)。この言葉だけで、“勉強はイヤイヤやるものだ”というイメージが強くなるので、個人的には使用禁止にしたほうがいいと思っているぐらい(笑)。
 本来は、「学び」って楽しいことであるはずなんですよね。英語の「school」は「学校」の意味ですが、語源は古代ギリシャ語で「余暇」を意味する「schole」に由来するといわれています。古代ギリシャは奴隷が労働を担わされていたこともあって、貴族は暇でやることがないので、芸術や数学や哲学を娯楽として楽しんでいたわけです。

――教育熱心な親ほど、「遊びより勉強が先」と思いがちかもしれません。

渡辺 最近すごく感じるのは、特にお母さんが正解を求めたがっていることですね。「何歳でこれをやっておけば大丈夫」と誰かに言ってもらいたい。真面目で責任感が強い親が増えているのかもしれません。
 でも残念ながら、子育てに正解はありません。ただひとつはっきり言えるのは、繰り返しになりますけど、できるだけいろんなものに出会い体験する機会を与えてあげたほうがいいということです。子どもが何に興味関心を持つかは、その対象に出会うきっかけがないとわかりませんからね。

 僕自身も4月から中1、小4、小1になる子どもがいて、とにかくみんな本好きです。長男が幼稚園のとき、小学館の図鑑NEOを全巻買い揃えて、家に“図鑑コーナー”を作ったんですよ。妻には、「一度に全巻買わなくても、子どもがほしがる図鑑を少しずつ買っていけばいいんじゃないの?」と反対されたんですけど、「いや、違う。図鑑というのは、子どもが興味を持ったその瞬間にそこにないといけないんだ!」と、そのときだけは突っぱねて(笑)。そのおかげかどうかわかりませんが、長男は今は新聞で政治や時事問題も読むようになりました。

――そういう意味では『小学一年生』も、新しいことを知るきっかけがたくさん詰まっている総合誌です。

渡辺 今年で創刊94年目なので、時代ごとにいろいろ変化してきているんですが、ここ最近は、実験や工作の記事を増やして好評をいただいています。キャラクターやゲーム関連の記事をつくるときも、その「お仕事」を紹介するなど、広がりのある、学びにつながる企画を心がけています。

 僕のなかでのコンセプトは、「楽しく読んでいるうちに、知る楽しみを味わえる雑誌」です。知らなかったことを知ることが、いかに面白くて楽しいかということを、多くの子どもたちに伝えたいんですよね。


――料理から恐竜まで1冊の内容がバラエティに富んでいるので、子どもは「次はなんだろう?」とページを開くたびにワクワクしそうです。

渡辺 総合誌のいいところは、自分が関心あるテーマ以外のページも目に留まるので、興味の幅が広がっていくことです。
 たとえば、恐竜の記事に興味を持つ女の子もいるでしょうし、料理をやってみたい男の子もいるでしょう。男だから、女だからという理由で、親が勝手に興味対象の幅を決めつけるのもよくないですし、むしろ、意外なところに子どものツボにはまるものってあったりしますからね。
 子どもが新しい情報や思いがけない情報に出会えるきっかけづくりとして、総合誌は格好の材料だと思います。

――国語、社会、理科は生活体験のなかで自然と学びやすいと思いますが、算数はいかがでしょうか。

渡辺 数字って抽象概念ですよね。目の前にないものの学習ですから、抽象概念をいきなり理解するのは子どもには難しいと思います。
 子どもが知っている具体的なものと結びつけてあげないと意味がわからないので、算数の学習は、りんごやいちごといった目に見える具体物を指でひとつひとつ数えていくところからはじまるわけです。いきなり1+1=2と言われてもわからないことが、経験と結びつくことで学びにつながっていくんですね。
『小学一年生』にも「まいにちドリル」というのがあって、こういうページを遊びの延長でやってできれば、子どもに自信が芽生えるきっかけになります。

「9歳の壁」という言葉がありますが、小学3、4年で分数や小数の計算がはじまると、もっと複雑な抽象の世界に入っていきます。
 そこでも、たとえば丸いケーキを人数分に等分するといった実生活の中の経験にもとづいた理解ができないと、つまずきやすいといわれているんですね。
 そういう実体験なくして教材学習だけをやらせても、子どもは嫌がるだけだと思います。

――算数の重要性はどういう点にあると思いますか。

渡辺 これからAIと共存する時代になっていくことを考えると、AIができることは人間がやらなくてもいいんじゃないか?という話になりますよね。確かに算数に関して言えば、計算なんてコンピューターや電卓に任せてもいいんじゃないの?という考えもあります。実際に海外の多くの学校では、テストに計算機は持ち込み可だと聞きますし。
 では生きていくうえで算数の何が重要かというと、その問題をどう解くかを知ることが大事なんですよね。
 それから、大ざっぱな概数もイメージできるようになっておいたほうがいい。つまり、ざっくりとした量の大きさですよね。それがわからないと、とんでもないミスにつながることがありますから。

 世の中のことはすべて数字がついてまわるので、自分の生活や仕事の数字的な状況がぼんやりながらも理解できていたほうが絶対に良いです。それがわからないと、悪い人にだまされちゃったり、おかしなデマに惑わされちゃったりする恐れもありますよね。また一般論ですが、経営や経済に対してあまりにもピントがずれていると、当然、経営者にはなれないでしょうし、経済的な問題点がどこなのか数字で理解できないと厳しいですよね。

――算数は、中高学年になると複雑な図形も出てきます。

渡辺 図形も、折り紙やブロックや工作を遊びのなかでたくさん体験しているほうがイメージしやすいですよね。そういうことが得意な子どもは、物事を多面的に見ることができるので思考力も高いと思います。
 体験と学びは、鶏が先か卵が先かみたいな話になりますけど、先ほども申し上げたように、やはりできるだけいろんな実経験をしていることが、本当に身につく学びにつながるのだと思います。
 それと最近、教科書を正しく理解できない中高生が増えていると話題になっていますが(参考資料:東大ロボの研究で有名な新井紀子氏『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』)、算数でも問題文を明らかに理解していない学生が少なくないそうです。
 ですから、算数の前に大事なのは国語力だという気もしますね。文章題の意味を理解できないことには算数の問題も解けませんし、数学になると自分の言葉で証明する記述力も必要になってきますから。

 AIと共存する時代に、人間の才能でますます重要視されるのは論理的思考力で、何かを理解して解説するためには、理系と文系両方の能力が必要だと思います。

――確かにおっしゃる通りだと思います。では最後に、『小学一年生』を卒業したら次にどんなものを読んでほしいか、希望があれば教えてください。

渡辺 弊社から、2年生から6年生まで学年を問わず好奇心を刺激する『小学8年生』が出ているので、ぜひそちらを購読いただきたいです。でも、どの雑誌でも書籍でも図鑑でも漫画でも何でもいいので「読む」習慣をぜひ続けてほしいですね。
 もちろん他の出版社さんから出ているものでもかまいません。他社の本も買って、小学館の本も買ってください。子どもたちが雑誌や本を読むことを習慣として身につけてくれることを願っています。

取材・文=樺山美夏