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その世とこの世

その世とこの世

その世とこの世

作家
谷川俊太郎
ブレイディみかこ
奥村門土(モンドくん)
出版社
岩波書店
発売日
2023-11-23
ISBN
9784000237475
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「その世とこの世」のおすすめレビュー

ブレイディみかこ×詩人・谷川俊太郎の往復書簡をまとめた本。実は面識もなかった2人のやりとりが異色すぎる

『その世とこの世』(岩波書店)

『その世とこの世』(岩波書店)は、英国在住歴の長いライターのブレイディみかこ氏と詩人の谷川俊太郎氏による、1年半に及ぶ往復書簡を記録した本である。東京と英国ブライトンの慣習の違い、老いや介護にまつわる雑感、日々の暮らしの中での気づきなどが綴られており、ふたりがマイペースに言葉を紡いでいるのが印象的だ。奥村門土による描きおろしイラストが添えられているのもしみじみといい。

 帯にもあるように、ふたりは面識も接触も持たぬままに「言葉の逢瀬」を重ねた。筆者には、それによってこの本が結果的に途轍もなくロマンティックな相貌を帯びているように思える。見知らぬ畏友同士の文通が焼き付けられているかのようだ、とでも言おうか。そう、本書は、ネットやメール以前の直筆の手紙のやりとりのような、おくゆかしさと品の良さを湛えている。

 ふたりの間では、同じ事象に関する感想に温度差があるし、意思の疎通がうまくいっていないように映る箇所もある。でも、それも込みで滋味に富む交感/交歓が成り立っているのだ。話が広がる、というよりは膨らむ、膨張する、という言葉…

2024/2/25

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その世とこの世 / 感想・レビュー

powerd by 読書メーター

いつでも母さん

面白い企画があったのですね。一年半の往復書簡。谷川俊太郎さんとブレイディみかこさん。対照的にも思えるお二人の詩と散文に、私の意識は群青の空を漂うようなそんな感じでした。谷川さんの『その世』には自然に泣けてしまい、結びの『自分だけ』には考えさせられてしまいました。

2023/12/21

アキ

この世はthis world、あの世はthat world、じゃあ「その世」って何?この世とその世のあわいにある、その世に谷川さんは住んでいる。ブレイディみかこと谷川俊太郎の往復書簡。お互いに一度も会うこともなく、一年間に渡る散文と詩の交歓。その間にブレイディさんの母親が亡くなり、谷川さんは両親の思い出を語る。なんだか噛み合っている様で、全然違う方に志向が行くのが、まるっきり他人である以上に、別人種のようで、それはそれで楽しめました。谷川さんの詩「自分だけ」でこの本が終えるのが、とっても良かったです。

2024/03/26

trazom

谷川俊太郎さんとブレイディみかこさんの一年半に渡る往復書簡。会ったことのない二人、親子のような年齢差、散文のブレイディさんに詩で応える谷川さん。何とも味わいの深い言葉が紡がれる。有邪気な笑い、「うりゃあああ、なんとかなる」、現場、幽霊とお化け、トランスヒューマン、「ケアとは他人と一緒にダンスを踊ること」、母のこと・他人のことなど、ブレイディさんが投げつける直球を、のらりくらりと受け止める谷川さんの懐の深さ。この世とあの世のあわいにある「その世(somewhere in between)」の感覚が心に響く。

2024/02/26

けんとまん1007

「その世」という言葉は、初めてのように思う。途中で出てきた、國分功一郎さんの中動態という言葉を眼にした時に、そうなのか・・と思った。お二人の言葉は、表面的に受け取るのではなく、そこに至る思索・背景を考えながら受け取るようにした。それでも浅く狭いかもしれない。ただ、考えること。そこにいる人たちを想像すること。ここを抜きにしてはいけないのではないか。その中で、自分がどう存在しているのか。ここに尽きるのではと思う。

2024/03/04

ネギっ子gen

【この世とあの世のあわいに/その世はある/騒々しいこの世と違って/その世は静かだが】「その世」に目を凝らす詩人・谷川俊太郎と、「この世」の地べたから世界を見つめるライター・ブレイディみかこ。詩と散文よる“言葉の逢瀬”ともいえる、“体に沈む”往復書簡。『図書』連載を書籍化。ブレイディは、母親の死後ふらっとウィーンに行き、ワインを買い部屋に戻って思う。<ワインの空ボトルを眺めながら、しみじみと考えたのは、人間は時々、この世とあの世のことを忘れるために、「その世」を歩きたくなるのだろうかということでした>と。⇒

2024/02/06

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