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椿宿の辺りに

椿宿の辺りに

椿宿の辺りに

作家
梨木香歩
出版社
朝日新聞出版
発売日
2019-05-13
ISBN
9784022516107
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椿宿の辺りに / 感想・レビュー

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なゆ

前作「f植物園の巣穴」読んだとき、ちょっとした引っ掛かりを感じたのが、ここに繋がってきている。あの時佐田豊彦の話は歯痛から始まったが、今度は肩の痛みに耐える山幸彦と、股関節等々の痛みに苦しむ従妹の海幸比子という、痛みつながり。導かれるように辿り着いた鍼灸院、不思議な力を持った亀シ、海幸山幸の神話、宙幸彦の存在、謙虚な稲荷…。痛みをどうにかしようと動いた結果、自分のルーツを辿り、為すべきことを知ることとなる。過去は今、そして未来に繋がる…気になることを先送りするということの、ツケは複雑になる、ということか。

2019/07/18

のぶ

前半は親しみやすく、後半はやや難しく、不思議な世界を持った作品だった。「f植物園の巣穴」の姉妹編という事で意識して読んだが、本の終盤で繋がっていました。主人公、佐田山幸彦は肩の関節痛に悩み、治療に通うがなかなか良くならない。鍼灸院に行ったら、という助言を受け入れ診察に訪れる。そこで言われた言葉に従い、山幸彦は鍼灸師のふたごの片われを伴い、祖先の地である椿宿へと向かう。そこで古事記にある海幸山幸物語に3人目の宙幸彦が加わり、物語は神話の世界に展開していく。梨木ワールドがよく出ている一冊だった。

2019/05/26

nico🐬波待ち中

鬱に頭痛、腰痛、三十肩に頸椎ヘルニア…痛さの百花繚乱状態の佐田山幸彦。彼はあの『f植物園の巣穴』の主人公・佐田豊彦の曾孫。歯痛に悩んだ豊彦の痛みが伝染するかのように、山幸彦もまた様々な痛さに悩まされる。これはもう一族の宿命と言っても過言ではない。痛みの原因を探る内に一族の歴史を紐解くこととなり、またもや不可思議な世界へと誘われる。登場人物達のコミカルなやり取りに何度もニヤリとなり『家守綺譚』シリーズが読みたくなってきた。たとえ同じ時代に生きていなくとも、先祖とは確かに繋がっているのだな、としみじみ思う。

2019/07/05

jam

実家の屋号は「大黒」という。だから私は近所では「大黒の○○ちゃん」と呼ばれていた。祖父の父は地主だったが、祖父は三男のため、土地の一部を継ぎ商売を始めたという。店の名は「大黒」。だから私は神の名をとても近しく感じて育った。祖父のすぐ上の兄は北海道に渡り根をおろし、祖父はその兄を訪い祖母と出会った。時は大正、明治生まれの祖父の青春時代である。私の父は本家の田畑を継ぎ、父の兄ふたりと弟が祖父の商売を継いだ。その祖父も伯父たちも今はもう遠い。神々の物語は世界のそこかしこに根付き、今に繋がり、遥か未来へ続く。

2019/07/16

ちょろこ

繋がりを感じた一冊。前作の巣穴以上にすごく好きな世界観。痛みから始まり導かれるように紐解かれる様々な物語、土地、歴史、自然、そして縁。全てが必然的だったと思うぐらいの繋がりなるものを感じた。自分に当てはめ、身体の内、外での繋がり、巡り巡るものを想像したくなる。巡る痛み、身体と心の繋がり、そして何よりバランスを保つことの大切さ、自分の中の「痛み」や「滞り」に目を向け向き合う時間の大切さを教えられた気分。梨木さんの紡ぐ言葉、世界がスッと沁み渡っていくこの心地よいひとときにもう少し浸っていたかったぐらい。

2019/06/12

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