ヤービは、私の中にずっとあった生命力そのものなんです。―『岸辺のヤービ』梨木香歩インタビュー
「夜、アオバズクの声がしているなあと思ったら、朝、それだけ玄関に落ちていたんですよ」 梨木さんがそう言って、水色の小箱をそっと開けて見せてくれたのは、カブトムシの頭だった。白い綿の上にうやうやしく置かれたそれは、まるで鹿の角のように輝いていた。 「見つけた時は日の光できらきら光って、目が宝石みたいでした。美しいでしょう」 ご自宅でのインタビュー。テーブルの上にはクローブとカルダモンが入ったお手製のレモネード。大きな窓の外にはサルスベリの木。おまけにこんなものまで見せてもらって、いきなり梨木さんの物語の中に招かれたようで、くらくらしてくる。
死を巡礼する物語から、命の喜びを歌う物語へ。
永遠の子どもたちに。 そんな献辞で始まる『岸辺のヤービ』は、梨木さんの児童文学への想い、フィールドワークを実践する中で培ってきた命へのまなざしがぎゅっと詰まった物語だ。しかも嬉しいことに、これはここから始まるマッドガイド・ウォーターを舞台にしたシリーズの記念すべき第一章でもある。 その主人公、二足歩行のハリネズミみたいなふしぎな生き物、クーイ族のヤービをどん…