KADOKAWA Group

Facebook Twitter LINE はてブ Instagram Pinterest

星の子 (朝日文庫)

星の子 (朝日文庫)

星の子 (朝日文庫)

作家
今村夏子
出版社
朝日新聞出版
発売日
2019-12-06
ISBN
9784022649409
amazonで購入する Kindle版を購入する

「星の子 (朝日文庫)」のおすすめレビュー

2020年、芦田愛菜主演で映画化! あやしい宗教にのめりこむ両親とその娘を描く『星の子』

『星の子』(今村夏子/朝日新聞出版)

 今年、芦田愛菜さん主演で映画化が決定し、再び注目を浴びている小説がある。今村夏子さんが芥川賞を受賞する前に執筆した、初の長編小説『星の子』(朝日新聞出版)だ。

 本作では、宗教にのめりこむ夫婦の次女・ちひろの視点から、歪んでいく家族の姿が描かれる。

 幼い頃、ちひろは病弱だった。ある日、父親が「金星のめぐみ」という水を同僚にもらい、ちひろに飲ませると健康になった。両親は水のおかげだと思い込む。それが、両親があやしい宗教を信じるきっかけとなってしまった。

 病弱だった幼い頃の自分をちひろは覚えていない。両親の信仰は、彼女にとっては物心ついてから続いている当たり前のことだ。両親は自分や姉に対してとてもやさしいし、ちひろ自身思春期を迎えるまでは違和感を抱いていなかった。

 しかし“金星のめぐみ”を勧めた父親の同僚の家を訪れたとき、読者はちひろより先に、彼らが信仰する宗教の異常性を垣間見ることになる。

 父の同僚とその妻に勧められるがまま、ちひろたち家族4人は“水に浸したタオルを頭の上にのせた”。同僚夫婦によると「金星のめぐみ…

2020/4/18

全文を読む

おすすめレビューをもっと見る

星の子 (朝日文庫) / 感想・レビュー

powerd by 読書メーター

さてさて

『この小説では「この家族は壊れてなんかないんだ」ということを書きたかったので、ラストシーンに登場させるのも家族だけにしました』、と語る今村夏子さん。そんなこの作品では、新興宗教を信じる両親の元に育つ子供視点から、その内側にある世界がどのように見えるのか、とても興味深い世界を垣間見ることができました。そして一方で、そんな新興宗教という土台の上に展開する物語の中に、お互いを信じ合う家族の深い絆を感じさせる物語。それは、壊れていない家族の繋がりの素晴らしさ、”家族愛”をとても感じさせてくれた、そんな作品でした。

2021/06/19

ろくせい@やまもとかねよし

人間の多様さを読者に問う物語。結論なき結末もユニーク。人間の多様さを、幸福に不可欠な信仰、そんな個人が集う社会の同調性、そして同調を支える慣習の虚構をもちい表現。絶対的虚像で裏打させる信仰である宗教。時代時代で新しく産まれ、一定の人々に幸福をもたらす。一方、このような新興宗教は、過去からの慣習で支えられている社会の隙間を指摘するため、同調から外れた異端として排除される。しかし、生まれた時から新興宗教の社会で育った子供は、それが慣習の社会観をもつ。そんな子供の心境を柔やわに描写。巻末対談も読み応えがあり。

2020/12/09

hit4papa

謎の宗教に傾倒する両親の元に育った少女の物語です。本作品は、新興宗教にのめり込むことの恐ろしさを描いたものではありません。このような家庭に育った少女の姿を通して、価値観が違うものへの向き合い方へ一石を投じているように、自分は受け止めました。深刻さとか悲惨さが殊更表現されていないため、却って読んでいて辛い気持ちになります。ただ、こういう境遇の子というのは、第三者が想像するより、ずっと逞しいのかもしれません。ラストは、賛否あるでしょうね。自分は、両親が敢えて、ちひろとの別離を選んでいるように感じました。

2020/10/27

あきら

意外な終わり方でした。ただ、このラストがきっと良かったんだろうなあ。 時間を止めたり、そのままにすることは生きてるとできないけど、小説ならできる。 本当の結末なんて決めなくていいんだとしみじみ思った作品でした。

2021/10/31

エドワード

日本人は無宗教な人が多い。ちひろは幼い頃に身体が弱く、水が悪い、との父の同僚の薦めで、特別な水を使い全快した。狂喜した両親は新興宗教に入信する。交流会、研修旅行、まだわからない子供のちひろと姉の困惑がリアルだ。本当に水の力なのか、水道水と入れ替え、父母を止めようとする親戚と絶縁する。クラスメイトを集会で見かけ、カッパのような恰好の父母を先生に見られ、とまどいながら過ぎる小中学校。自分がちひろだったらどうする?ドキドキの読書だ。家を出る姉、両親と離れたくないちひろ。両親との愛に満ちた終幕、その後が知りたい。

2020/01/03

感想・レビューをもっと見る