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残像 (角川文庫)

残像 (角川文庫)

残像 (角川文庫)

作家
伊岡瞬
出版社
KADOKAWA
発売日
2023-09-22
ISBN
9784041137222
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「残像 (角川文庫)」のおすすめレビュー

前科者の女性3人と少年の奇妙な共同生活の謎。今、最も世間を騒がせる“少年の問題”を扱う衝撃ミステリー

『残像』(伊岡瞬/KADOKAWA)

 足元の水位が増していくように、不安感が這い上がってくる。感じるのは、正体不明の気持ち悪さ。得体の知れないものに巻き込まれているという感覚。だが、どうして人は怪しいものにこんなにも強く惹かれてしまうのだろう。気づいた時にはもう逃げ出せない。怖いもの見たさ、何かに慌てるようにページをめくる。そして、クライマックスにかけて明かされる真相に、ただひたすら打ちのめされる。——累計発行部数50万部突破『代償』をはじめ、ミステリー作家・伊岡瞬の作品を読むたびに味わわされるのは、そんな恐怖と興奮、衝撃だ。

 それは、最新作『残像』(伊岡瞬/KADOKAWA)も同様だ。いや、今までの作品以上、と言っても決して過言ではない。暗い過去への復讐を描いた本作は、角川文庫75周年記念、文庫書き下ろし作品。その刊行に際し、伊岡は「信頼、裏切り、後悔、敬愛、憎悪、憧れ、友情、希望。そんなあれこれをぎっしり詰め込みました」と語るが、読めば、感情を揺さぶられっぱなし。読む人の心を惑わせ震わせる、圧巻のサスペンスミステリーなのだ。

 主人公は、浪人…

2023/9/28

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またあれか――? 恭一に度々送られてくる不快な写真が印刷されたはがき。恐る恐る写真を確認すると…/残像④

『残像』(伊岡瞬/KADOKAWA)

4  吉井恭一は、今朝も寝覚めが悪かった。 「ふああ」  天井に向かって、大げさなあくびをする。また、一日が始まってしまった。くそ面白くもない、くそほどの価値もない一日だ。 「何時?」隣に寝ている女が訊いた。  女の柔らかい尻が、恭一の腰のあたりに触れる。 「会社」平坦な口調で答えた。「――そろそろ行く時間なんだ」 「うそお。もうそんな時間?」  それには答えず、上に掛かっているものをがばっと勢いよくはねのけた。そうでもしないと起きるスイッチが入らない。  下着しか身につけていない女の体があらわになった。 「やだ」  女は、薄手の上掛けをたぐりよせて、体にまきつけた。  恭一はそれにはかまわず、ボクサータイプのパンツ一枚を身につけただけで、ベッドから下りた。  六本木という立地ではあるが、タワーマンションの二十二階のこの部屋が、現実的に誰かに覗かれる心配はないだろう。だから、真夏以外はブラインドも開けっぱなしだ。すでに朝日が差し込んで、散らかり放題の部屋を無残に照らしている。  裸足のままトイレに入って用を足…

2023/10/1

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『残像』(伊岡瞬/KADOKAWA)

3 「で、学生さんなの?」  和風ラテン系の女が、正面に座って海苔を巻いた煎餅をほおばっている。  一平がポニーテールの暗殺者アサシンに腕を摑まれて、やはり振りほどいてでも逃げるべきかどうか躊躇しているあいだに、残りの二人が葛城に薬らしきものを飲ませ、押し入れから出した薄い布団に寝かせたようだ。  そのあと一平は、隣の一〇二号室に連れ込まれた。さっき、三人が次々に出てきた部屋だ。  なんだか悪いことをしたような扱いをされていることに、少し腹を立てている。そして少し怯えている。これでは拉致監禁だ。しかし、女たちを突き倒して逃げようとも思えない。いつも陽介に指摘されるが、致命的なまでの煮え切らなさだ。 「そこ、座って」と、冬はこたつになるタイプのテーブルを示された。なぜ知っているかと言えば、店で扱っている売れ筋商品だからだ。  とりあえず、百均ショップで買ったようなうすっぺらな座布団に腰を下ろした。  三人の女もそれぞれ座った。正面が和風ラテン系、右隣が若いすっぴんの寝癖、左隣が柑橘系のポニーテールだ。おそらく、…

2023/9/30

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残像 (角川文庫) / 感想・レビュー

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bunmei

文庫本書き下ろし作品。井岡作品らしい、人の闇に潜む絶対的な力によって、絶望的で存在意義さえも見いだせない立場の者と、それに何とか抗いながらも正義を交錯させてくる者との、重苦しいサスペンス・ミステリー。過去のトラウマを引きずりながらも、その復讐を果たそうとする執念には、心震わされる。そして、怪しい人物の登場によってミスリードしながら、最後に明かされるサプライズな企ては、良い意味で、読者をも欺く展開だった。浪人生・一平と知り合った3人の女性が仕掛けた、悪の化身に対する企てが、意外なラストシーンを迎える。

2023/11/05

いつでも母さん

こっちの話とあっちの話がどこかで繋がるのだろうか・・とソワソワしながら、ページを捲る手が加速する。えぇい、あんなヤツ罰が当たれ!と思ったのは私だけではないはずだ。ちょっと上手く行きすぎの感じは否めないのが正直なところ。今作は伊岡さんにしては軟らかい感じがしたが、こんなラストにホッとするのも正直な読後感。

2023/10/11

のり

大学生の「一平」は、バイト先での初老の同僚の介抱の為にアパートヘ。そこは朽ちかけたアパートだったが、他に3人の女性と子供が1人いた。不思議な組み合わせだが、一平と彼女達の距離感が縮まっていく。複雑な事情が絡み、犯罪の匂いもある。その対象になるのは政治家の息子だが、表に出ない悪事が多々ある。犯罪者に対する犯罪。協力しようとする一平だが、彼女達は先を読む事に長けていた。どう決着がつくのか?落とし所に納得。

2023/12/11

タイ子

謎を残して進んでいくストーリーに推理しようにも何も浮かばない。ただ読み進むだけ、それがいい。浪人が決まった一平がバイト先で助けた同僚の男をアパートに送っていくことに。そこには3人の女性と小学生の男児が住んでいた。その出会いが全ての始まり。一見何の繋がりも見えない住民たちのどこか謎めいた生活感に一平は惹かれていく。一方、政治家を父に持つ息子が見せるあくどい所業とムカつくような性癖の数々。アパートの住人たちとエグイ男の繋がりは何なのか?一平の立ち位置は?そんなに上手くは…と思いつつ先を促す手が止まらない。

2023/10/10

ma-bo

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2024/01/10

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