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伊岡瞬

伊岡瞬 写真:干川 修
職業・肩書き
作家
ふりがな
いおか・しゅん

プロフィール

最終更新 : 2021-07-20

1960年、東京都生まれ。広告会社勤務を経て、2005年『いつか、虹の向こうへ』で第25回横溝正史ミステリ大賞とテレビ東京賞をW受賞しデビュー。16年『代償』で啓文堂書店文庫大賞を獲得し、同書は52万部を超えるベストセラーとなる。他の著書に『瑠璃の雫』『教室に雨は降らない』『痣』『悪寒』『本性』『冷たい檻』『不審者』『赤い砂』など。

受賞歴

最終更新 : 2021-07-20

2005年
『いつか、虹の向こうへ』(応募作「約束」を改題)第25回横溝正史ミステリ大賞
2005年
『いつか、虹の向こうへ』(応募作「約束」を改題)テレビ東京賞
2016年
『代償』啓文堂書店文庫大賞

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会社がなくなり、2億円が消えた──二転三転する迫真サスペンス『清算』著者・伊岡瞬インタビュー

会社がなくなり、2億円が消えた──二転三転する迫真サスペンス『清算』著者・伊岡瞬インタビュー

 ※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2024年1月号からの転載です。

 「最初に断っておきたいのですが、登場人物はすべて架空のキャラクターです。実際はとても家族的で温かい職場でした」  開口一番、伊岡さんがそう述べたのには理由がある。『清算』は、伊岡さんの実体験から着想を得たサスペンス。かつて勤めていた広告会社が解散・清算されることになり、その実務に携わった経験が生かされている。

取材・文=野本由起 写真=干川 修

「私は以前ある広告会社に勤務していました。入社後数年して例のバブル景気が到来し、今では考えられませんが、企業には広告費に糸目をつけないというような風潮さえありました。私の在籍した会社も恩恵を浴しました。しかし、夢の時間は長く続かず、やがてバブルが弾け、リーマンショックが追い打ちをかけ、長く続く不況の時代になります。赤字基調から抜け出す見込みが立たなくなったため、傷が浅いうちにと解散することになったのです」

 倒産を扱った小説はあっても、解散・清算を描いた作品は珍しい。そもそも両者には、どのような違いがあるのだろうか。 「乱暴に言ってしまうと、…

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またあれか――? 恭一に度々送られてくる不快な写真が印刷されたはがき。恐る恐る写真を確認すると…/残像④

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『残像』(伊岡瞬/KADOKAWA)

4  吉井恭一は、今朝も寝覚めが悪かった。 「ふああ」  天井に向かって、大げさなあくびをする。また、一日が始まってしまった。くそ面白くもない、くそほどの価値もない一日だ。 「何時?」隣に寝ている女が訊いた。  女の柔らかい尻が、恭一の腰のあたりに触れる。 「会社」平坦な口調で答えた。「――そろそろ行く時間なんだ」 「うそお。もうそんな時間?」  それには答えず、上に掛かっているものをがばっと勢いよくはねのけた。そうでもしないと起きるスイッチが入らない。  下着しか身につけていない女の体があらわになった。 「やだ」  女は、薄手の上掛けをたぐりよせて、体にまきつけた。  恭一はそれにはかまわず、ボクサータイプのパンツ一枚を身につけただけで、ベッドから下りた。  六本木という立地ではあるが、タワーマンションの二十二階のこの部屋が、現実的に誰かに覗かれる心配はないだろう。だから、真夏以外はブラインドも開けっぱなしだ。すでに朝日が差し込んで、散らかり放題の部屋を無残に照らしている。  裸足のままトイレに入って用を足…

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隣の部屋に連れ込まれた一平は女性たちから質問攻めにあい、流されるまま彼女たちと夕食を共にすることに/残像③

隣の部屋に連れ込まれた一平は女性たちから質問攻めにあい、流されるまま彼女たちと夕食を共にすることに/残像③

『残像』(伊岡瞬/KADOKAWA)

3 「で、学生さんなの?」  和風ラテン系の女が、正面に座って海苔を巻いた煎餅をほおばっている。  一平がポニーテールの暗殺者アサシンに腕を摑まれて、やはり振りほどいてでも逃げるべきかどうか躊躇しているあいだに、残りの二人が葛城に薬らしきものを飲ませ、押し入れから出した薄い布団に寝かせたようだ。  そのあと一平は、隣の一〇二号室に連れ込まれた。さっき、三人が次々に出てきた部屋だ。  なんだか悪いことをしたような扱いをされていることに、少し腹を立てている。そして少し怯えている。これでは拉致監禁だ。しかし、女たちを突き倒して逃げようとも思えない。いつも陽介に指摘されるが、致命的なまでの煮え切らなさだ。 「そこ、座って」と、冬はこたつになるタイプのテーブルを示された。なぜ知っているかと言えば、店で扱っている売れ筋商品だからだ。  とりあえず、百均ショップで買ったようなうすっぺらな座布団に腰を下ろした。  三人の女もそれぞれ座った。正面が和風ラテン系、右隣が若いすっぴんの寝癖、左隣が柑橘系のポニーテールだ。おそらく、…

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倒れた葛城を家まで送ることになった一平。部屋のドアを開けようとすると、隣の部屋から中年の女性が顔を出す/残像②

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『残像』(伊岡瞬/KADOKAWA)

2  三十分ほどして、一平がストックヤードからの品出しのついでに様子を見に行くと、葛城はベンチに座っていた。  上半身を起こせたということは、多少痛みが引いたのかもしれない。 「大丈夫ですか」  一平が声をかけると、力なく微笑んで「そろそろ帰ります」と答えた。そのまま立ち上がろうとするが、ふらついている。どう見ても一人で帰るのは無理そうだ。  一平は添野を捜して、再度相談しようか迷った。もうよけいなことをするな、という声が記憶の隅から聞こえてくる。そんな心配は社員たちにまかせておけばいい。おれはただのバイトだ。  あの一件、、、、以来、だれかに親切にしようとすると、心のブレーキがかかるようになってしまった。  同じく品出しに来た陽介が近寄ってきた。立ち上がりかけてまた座ってしまった葛城を見ながら、どうしたものか相談する。 「おまえ、女子にはまめじゃないが、老人には優しいよな」  本人は褒めたつもりかもしれないが、後半は強烈な嫌味に聞こえた。  結局、一平が添野チーフを捜して相談することになった。インカムも貸与…

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アルバイト中の一平が休憩から戻ろうとすると、通用口から入ってきた後輩の葛城が急に苦しみだした/残像①

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『残像』(伊岡瞬/KADOKAWA)

第一章 出会い 1 「今日は、楽でいいなあ」  あくびのあとの涙を拭いながら、隣に座る幸田陽介が言った。 「まあな」  おなじ程度に気の抜けた声で、堀部一平は答える。  たしかに、平日という点を考えても今日の客足はかなり少ないほうだ。朝から雨が降り、五月の中旬にしては肌寒い陽気のせいもあるだろう。  一平は、中学時代からの友人である陽介と一緒に、このあたりでは最大規模のホームセンター『ルソラル』で、三か月ほど前からアルバイトをしている。つまり、陽介は第一志望の大学に合格し、一平は浪人が確定した時期からだ。  午後の十五分休憩中だった。普段「詰所」と呼んでいる、小さな事務部屋の近くのベンチに、二人並んで座っている。この詰所は社員通用口のすぐ脇にあって、監視カメラ用モニターなどのちょっとした機材の置き場と、出入りする関係者をチェックする警備員の控室なども兼ねている。  ちなみに、社員たちの机がある正式な事務所や、ロッカー、休憩室などはすべて二階にある。  そのベンチのすぐそばの従業員向け自販機で、缶コーヒーを買っ…

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誰にも見せない、“仮面”の内側……人間心理に斬り込むクライムサスペンス《伊岡瞬インタビュー》

誰にも見せない、“仮面”の内側……人間心理に斬り込むクライムサスペンス《伊岡瞬インタビュー》

 人は誰しも、仮面をつけて生きている。他人には見せない素顔、心の奥の触れられたくない領域。伊岡瞬さんの新作は、そんな仮面の内側に迫るクライムサスペンスだ。

(取材・文=野本由起 撮影=干川 修)

「凶悪事件の裁判が結審すると、情報番組のコメンテーターが『心の闇は明かされないまま終わりました』などと言いますね。でも、心の闇なんて誰が覗けるでしょうか。たとえ家族といえども、心の内側までは絶対に覗けない。それを仮面というのであれば、人はみな仮面を被っていることになります。前作『本性』からつながるテーマではありますが、別の角度から人間の仮面について描いてみようと思いました」  登場人物の中でも、もっとも謎に満ちた存在が三条公彦だ。彼は、読字障害というハンディキャップを抱えながらも、アメリカの名門大学に留学した経歴を持つ作家・評論家。帰国後に出版した自叙伝がベストセラーとなり、現在テレビ番組のコメンテーターとして人気を集めている。 「読字障害は、文字を認識するのが苦手という特徴を持ちます。“障害”という名称がついていますが、例えば歌が下手な人を障害とは呼ばな…

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水脈

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2024-02-02
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奔流の海 (文春文庫 い 107-4)

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発売日
2023-09-22
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朽ちゆく庭

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奔流の海

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祈り (文春文庫)

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白い闇の獣 (文春文庫 い 107-3)

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