KADOKAWA Group

Facebook Twitter LINE はてブ Instagram Pinterest

告別 (講談社文芸文庫)

告別 (講談社文芸文庫)

告別 (講談社文芸文庫)

作家
福永武彦
出版社
講談社
発売日
1990-06-05
ISBN
9784061960848
amazonで購入する Kindle版を購入する

告別 (講談社文芸文庫) / 感想・レビュー

powerd by 読書メーター

Mishima

池澤夏樹の作品に惹かれ、ついにその父なる著作に手を伸ばしました。甘かった。もとい、苦かった。なんて苦み走った人生の俯瞰でせう。「告別」「形見分け」中編二作収録。タイトルからして推し量るに余りある重い作風。これ以上ないくらいに水気を含んだ雪道を踏み締めながら歩くような読書。

2016/06/23

昭和っ子

この内向する感じ、引き込まれる。「告別」は、様々な主題が入れ子細工のように組み合わされる交響楽の様な構成と、映像的な場面転換の鮮やかさ、話の進行により徐々に主人公の内面が明かされていく様が巧みな作品だと思う。戦後の一知識人が、欧米の文化に強烈に憧れそれに接近するにつれて、日本に残してきた妻やそれに纏わる現実的な事をみすぼらしく感じつつも、自らを偽って日本での生活を選ぶことにより、より悲劇的な結末を得る。戦後の日本に西洋的な事物を位置付けるのは命がけの事だったんだな、と思ってしまった。

2014/03/21

冬見

「告別」異国で知り合った女との愛を諦めた上條は、妻と二人の娘を選び家庭へ戻った。娘・夏子の自殺、続く上條の死……時間は絡み合い、世界は暗く展かれてゆく。「生ハ暗ク、死モマタ暗イ」告別の予感。それは、愛した瞬間にあったのかもしれない。ひとは別れがあるから愛する。別れがあることを知っていたからといって、愛することをやめることはできない。視点の問題で夏子の自殺の理由は分かるような分からないような、のライン。失った愛への絶望が諦念を生み出す様は『草の花』を思い出す。

2018/06/26

妣の国はここにはない遠い国であり、しかも我々の魂のなかに生き続けている懐かしい古里である。故郷を求めて彷徨する生と故郷への回帰という死。マーラーの大地の歌・最終楽章<告別>が小説の題名ともなっている。人は生きていることの根源的な疑問や生の本質について考え出すと告別の予感(気配)が近づいてくるのかもしれない。しかし、それを考えずにして生きる人生が果たして生きているといえるのだろうかと問われているような気がする。相手の孤独を理解しえなくとも、相手の孤独を知る人間には近づきたい。

2014/11/05

コスモス

思っていたよりも話の構成がかなり重層的だった。個人的には、ストーリー展開よりも言葉の美しさを重視する人におすすめ。

2021/10/11

感想・レビューをもっと見る