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死の島 下 (講談社文芸文庫)

死の島 下 (講談社文芸文庫)

死の島 下 (講談社文芸文庫)

作家
福永武彦
出版社
講談社
発売日
2013-03-09
ISBN
9784062901871
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死の島 下 (講談社文芸文庫) / 感想・レビュー

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長谷川透

Aから始まってMで終わる“内部”の蠢き、核心に迫っていく予感を孕ませつつも読者をそれから遠のかせながら進行する物語。上巻と変わらぬ小説の構成を保ちながらも、不穏な空気が小説の終わりが近づくにつれて濃くなっていき、次第に息苦しくなっていく。生から始まり、どんな過程を経たとしても誰もが死ぬ。原爆による即死、後遺症による死、あるいは直截的な理由ではないにしても自ら死を選ぶときもある。乱れた時系列、視点を辿ってきたからか、最後に死を見届けてもなお、その後にある何か予感めいたものを感じずにはいられなかった。

2013/10/12

風に吹かれて

いつも、ではないけれど、毎年、夏の今頃には『核』のことを考えさせられる。広島・長崎に原子爆弾が投下されて73年の年月が過ぎた今でも核弾頭を複数装備したミサイルや通常兵器として使えるような小型核ミサイルが研究されている。本作は73年前の悲惨な事をテーマの一つとしながら、人の俗な面にも焦点を当てつつ、生と死の相克、人間相互の理解・信頼、そして自分自身による自分自身の理解・信頼といったことを、作中小説、登場人物の独白などを駆使して表現している。安易な結末を導かないことで作者の複雑な想いがずっしりと伝わってきた。

2018/08/10

sabosashi

ストーリー的にも構成的にも解き明かしがたい作品について触れることは容易ではない。  しかし補助線を描くような試みで、拙いながらも、英文、スペイン語文にて要約してみて、ありがたいことにようやく日本文でもなにか綴れるような気持ちになった。  主人公の女性絵描きはヒロシマの地獄を生き抜きはしたものの、そのトラウマからは脱すスことはおろか、終始、囚われ続けている。  そんな負の刻印を刻まれたひとは、復興・成長期のニホンにおいてとりわけ蟻地獄のような様相を帯びる。  

2021/07/17

沙織

上下読みました❗戦争の文学や映画が苦手で避けてました。この本も怖いところはやや流したけど、相馬、綾子、素子、そして相馬の小説のA子とM子が気になり読み進めました。やっぱり素子が好き。長い髪でタバコを持つ喫み絵を書く姿はカッコいいですね。他は『トゥオネラの白鳥』のRの奥様の言葉が印象に残った。ただ、相馬の『理想の綾子』像は引いた。散々理想を語って「美人ではないが魅力ある」?同じ女性としてちょっと複雑(*_*)翡翠ペンダントを渡されたら私も素子と同じように思うだろうな。

2019/02/07

YumiNya

一度地獄を見た人間はそこから逃れることはできない。それでも素子は苦しみから逃れたかったのでは…と思うのだが。相馬は生きることに疑問を抱かず、素子の死の匂いに惹かれながらも踏み込んでいくことができなかった。また別の苦しみの中にいた綾子に対しても、自分の理想を押し付けていただけのようにも思える。あの結末は、どれであってもおかしくはない。あともう少し、彼らがわかりあえていたら、全く別の未来もあったのかもしれない。

2015/09/29

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