みちづれの猫
「みちづれの猫」のおすすめレビュー
猫に寄り添われ、救われた女性を描いた唯川恵の短編集『みちづれの猫』
『みちづれの猫』(唯川恵/集英社)
猫、というのは不思議な存在だ。気まぐれで、ときに冷たさも感じてしまうほど愛想がないが、なぜか一緒にいるだけで心が安らぐ。辛いことがあったとき、ただそばにいてくれるだけで慰めになったりする。
そんな猫が救いとなる物語『みちづれの猫』(集英社)が発売された。著者は、『肩ごしの恋人』で第126回直木賞を受賞した唯川恵。本作は、猫にまつわる七つの物語が集まった短編集である。
最初は、実家の猫の死期が近いことを知り実家に戻る主人公の話「ミャアの通り道」から始まる。三人兄弟で猫が欲しいとねだった幼少期、成長するにつれて少しずつ世話をしなくなり始めた子供たち、ひとりで世話をし続けた母の姿、猫の死期が迫ったことで集まる家族たちの団欒。
一度でもペットを飼い、死の淵に旅立つその時までを見送ったことがある人なら、読むのが辛くなるほどにそこに描かれる生々しい息遣いに衝撃を受けるだろう。実際、筆者も過去に犬を飼っていたことがあり、いつのまにか自分の経験に重ね合わせて涙を流していた。
しかし、物語は決してただ辛いだけでは終わらない。ミャ…
2019/12/21
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みちづれの猫 / 感想・レビュー
starbro
『手のひらの砂漠』に続いて、唯川 恵、2作目です。猫のいる風景の連作短編集、心を温かくする物語集です。オススメは『運河沿いの使わしめ』&『祭りの夜に』だにゃあ(=^・・^=) 猫祭りに行ってみたいミャア🐈
2019/11/18
ウッディ
「ふり返れば、いつもかたわらに猫がいた」帯の言葉どおり、猫をテーマにした7編の短編集(ぬいぐるみの猫も含んでいたけど)。猫がいた思い出は、幸せだった頃の記憶をより鮮やかにし、辛い時には心の支えになっていたことを思い出させる。恋愛の話も多く、唯川さんらしく丁寧に描かれた一冊でした。引き籠りになりそうな弟が、猫のために部屋のドアを少し開けているから大丈夫と思う家族の愛情はジーンとしました。自分の学生時代に下宿で飼っていた猫のことを思い出しながらのしみじみとした読書時間でした。
2020/05/23
旅するランナー
十猫十色な猫と出会える、ニャニャ(7)短編。猫を通して、心癒され、涙溢れ、愛思い出す。人生の道連れに猫を飼いたくなる一方で、猫との別れを思うと躊躇してしまう。でも、確かに、猫好きは、すべての猫を好きになるのだ。神様の使わしめ、猫に招かれる、ニャンダフルな一冊です。
2020/03/12
ぶち
女性とその女性の人生の道連れとなってくれた猫との短編集。登場するのは、飼い猫、野良猫、あるいはぬいぐるみの猫と様々ですが、女性に寄り添ってくれる猫の存在に胸がジーンとします。それは、登場する女性たちが年齢を重ねていくことで人生の切なさを感じていく姿が、自分の気持ちと重なってしまい、奥深くまで沁みてくるから。 泣いてしまいそうになるのをずっと耐えていましたが、最後の短編で涙腺が崩壊してしまいました。猫のお腹に顔を埋めて、匂いを嗅ぎたくなりました。
2020/03/14
とろとろ
最初のミャアの話が自分の家に居た猫の最後とあまりにも良く似ていたので、いきなり涙腺崩壊してしまう。この先どんな話が出て来るのかと(涙腺が)心配だったが、その後は猫の話というより猫に癒される人間の話に主眼が移っていったようで、そうなると自分も興味が薄れていった。猫に心情を救われるというような話はどこにでもあるような話になってしまうのか。猫が主人公となる最初の話の感動から比べると最後は人間の感情が主となってしまうから、淡々とした気分で読むことになる。いっその事「吾輩は猫」的な話も読みたかったな。
2020/01/15
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