類
「類」のおすすめレビュー
直木賞作家・朝井まかてが描く森鷗外の末子・類…文豪の家に生まれた宿命を負った生涯が鮮やかに蘇る
『類』(朝井まかて/集英社)
親という存在は一体何なのだろう。初めて目の前に現れる他者であり、愛着せずにはいられない相手であり、畏敬の対象でもある。大人になっても、越えられない壁のように、ずっと自分の目の前にそびえ立っている。そんな存在とどう向き合えば良いのだろうか。
直木賞作家・朝井まかて氏による最新作『類』(集英社)は、森鷗外の末子・類の生涯を描き出した感動巨編。森鷗外といえば、小説家としてだけではなく、陸軍軍医や官僚としても名高い人物。そんな彼には、於菟、茉莉、不律、杏奴、類の5人の子どもがいた。この作品では、主に鷗外の末子で「不肖の子」の類や、勝手気儘な長女の茉莉、勉強家でしっかり者の杏奴の姿を描き出す。
彼らは、鷗外という存在とどのように向き合ってきたのだろうか。明治、大正、昭和、平成…と時代の荒波に大きく揺さぶられながら、「鷗外の子」としての宿命を負った子どもたちの姿を生き生きと描き出す。
世の中「カエルの子はカエル」とは限らないし、「トンビが鷹を生む」とも限らない。鷹がトンビを生むようなこと、優秀な親からあまり出来の良くない子どもが…
2020/9/11
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類 / 感想・レビュー
starbro
朝井 まかては、新作中心に読んでいる作家です。文豪 森鷗外は知っていますが、彼の不肖の息子 森類の物語は初めてです。森類の姉たちは魅力的ですが、類は私には単なる出来の悪い息子のままでした。類に著者の愛情が感じられるのは、著者が女性だからでしょうか?ダメ男に魅かれるみたいな。 http://seidoku.shueisha.co.jp/2009/read06.html
2020/11/02
ろくせい@やまもとかねよし
森類さんの半生を綴る物語。父は明治期日本を牽引した森鴎外さん。主人公は未子で、21歳上の兄、8歳上と2歳上の姉をもつ。父と過ごす明治末、父の死で少しずつ環境が変化する大正、渡仏などを経験する青年期、そして社会の民主化が加速した戦後以降の家族内出来事で展開。主題は、偉大な父をもった男子子孫の不遇な人生。心根優しい人柄が人生の仇となったか。激変した社会。父が残した貴重な人脈や莫大な遺産を偉大な父の子孫としての果たすべきとの責務に囚われ、自立する自己形成機会を脱した印象。しかし貴重で無二な人生に違いはない。
2020/12/20
いつでも母さん
息をする・・生きてるだけでもお金はかかるのだよ。それが私の率直な気持ち。世の中には『父親が偉大過ぎて、息子は何一つその天資を受け継がなかった』人は沢山いるだろう。「人はパンのみにて生きるにあらず」もわかるけれど、親は母親は特に子を思うとね・・『鷗外の子であることの幸福。鷗外の子であることの不幸。』この帯は刺さる。まかてさんが描く森鷗外の末の息子・森類の生涯。書かずにいられない鷗外の子等が怖ろしくもあった。
2020/09/15
みっちゃん
偉大な父の子として生まれた、生まれてしまった幸いと不幸と。もしあの戦争がなければ、一生高等遊民として暮らせたかもしれない。父から譲り受けた財産を無くし、妻子の明日の食事にも事欠く生活でも、煙草と珈琲を我慢できず、何度も一意奮闘を誓うも画家としても、小説家にも、商売人にもなりきれず。一生涯保てたのは「鴎外の子」という気概と看板だけ、だろうか。身を粉にして尽くしてくれた妻亡き後の人生も、その逞しさに何だか苦笑してしまった。母、姉、妻との関係を描ききった作者の筆力のお陰で500頁近い厚みも苦にならず読めたけど。
2020/10/22
のぶ
森鴎外の4人の子供の末っ子で、明治から平成まで生きた、類の生涯を描いた物語。兄が一人と姉が二人いる。大正11年に父が亡くなり、自らの道を模索する類は、次女の杏奴とともに画業を志しパリへ遊学する。帰国後に画家の安宅安五郎の娘と結婚する。しかし戦争によって財産が失われ困窮していく。戦後、千駄木で書店を開業し、文筆の道で才能を認められていく。人の一生なので色々あるが、類の人生はそれ程に波乱万丈の一生だとは感じなかった。面白いのは取り巻く人たちとの関係。それを大作に仕上げた、まかてさんの筆力に感心した。
2020/09/21
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