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海市 (P+D BOOKS)

海市 (P+D BOOKS)

海市 (P+D BOOKS)

作家
福永武彦
出版社
小学館
発売日
2016-06-07
ISBN
9784093522694
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海市 (P+D BOOKS) / 感想・レビュー

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藤月はな(灯れ松明の火)

大阪オフ会のビブリオトークでおおにしさんが文庫版復刊への希望も込めてご紹介してくださった本でした。質疑応答で「印象に残っているシーンは蜃気楼以外、ありません」と言うのにズッコケましたが、読むと前戯や情交を匂わせる場面は矢鱈、エロい。しかし、「樹」や「風花」と言い、個との調和が取ろうとして断絶を深めてしまう家庭を抉り出しているので「福永武彦は大丈夫だったのか」と心配になってしまう。そして「愛するのは得意だが愛されるのは御免だ」と言う人程、本当は自分(が望む像)以外の人を愛した事がないという事に気付かないのだ

2018/05/13

みつ

蜃気楼を見に旅に出た画家と若い女性の出会いから始まる。芸術家(福永作品の例に漏れずここでも画家)を主人公に据えているが、他の主要作と比べればずっと俗っぽい表現が多いのが珍しい。「愛」「芸術」「死」はいつもの福永文学の特色であるが、「愛」の感情表現と行為の描写が直截的であるところがその要因だろう。それでも先の戦争と結核が影を落とすこと、「死を目指す人間」「生き残った人間」「死に無関心な人間」とカテゴリー分けをする議論、時点と語り手の頻繁な交替(いずれも短い挿入)から主人公を取り巻く人々の関係性が次第に➡️

まるっちょ

彼の長男である池澤夏樹のあとがきのコメントで、「(愛情を)比較してどうするのだ」と半ばあきれ顔のコメントがある。彼の作品には芸術に思いを寄せすぎて周りの人物を後回しにしてしまう男が多いのは仕方がないことだ。恐らく彼自身にも思い当たる節があったのだろう。そう思うと何故か他人事とは思えなくなる。自分が抱いていた愛情も、他人から見るとエゴなのかもしれない。

2018/01/13

ゆかっぴ

愛について突き詰めて考えていくと、自分自身を見つめなおすことになる。そういった状況になること自体が幸せではないのかもしれないとも思う。相手を大切に想っているようでいて、自分が大事なのか、考えさせられます。恋愛から遠ざかった私には淡々とした感じで読み進むことになりました。

2016/06/16

アレカヤシ

安見は初めて澁の絵を見たときから、こうなることを無意識の何処かで分っていたんじゃないだろうか。著者の他の小説と同じ過去や心理的背景を持つ登場人物が出てきて、主題も同じなのに、全編気を抜く事が出来ない。他のいくつかの作と同じく過去と現在がばらばらに組み込まれているけど、本作はさらに彼と彼女という書き方で五組の過去が書かれているので、初めの内誰の話なのか分かりにくい。それがだんだん焦点があってきて、状況もどんどんスリリングになって、やっぱりこうなった、という感じ。起こるのは単なるメロドラマかも知れないけど。

2017/10/20

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