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海炭市叙景 (小学館文庫 さ 9-1)

海炭市叙景 (小学館文庫 さ 9-1)

海炭市叙景 (小学館文庫 さ 9-1)

作家
佐藤泰志
出版社
小学館
発売日
2010-10-06
ISBN
9784094085563
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海炭市叙景 (小学館文庫 さ 9-1) / 感想・レビュー

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遥かなる想い

駅の本屋で、さりげなく紹介されていた本。筆者佐藤康志は何度も芥川賞候補作品を書きながら受賞できず、1990年突然の自殺を遂げた作家だそうである。この本の「海炭市」は筆者の育った函館をモチーフに、そこで暮らす多くの人たちを克明に描いている。読んでいてひどく懐かしい気がしたのは、その文体なのか、その叙景なのか…普通の人たちの18の人生を描く その筆力には非凡なものを感じるのだが…

2011/05/15

はるを

🌟🌟🌟🌟☆。いつかガッツリ向き合いたかった作家のひとり。「無冠の帝王」と言ったら天国から怒られるだろうか。海炭市で生きる様々な人々の生きザマを描いた二部構成全18編の人間讃歌。どいつもこいつも愚直で頑固で不器用で生き方が下手クソでバカばっかりで俺はたぶん登場人物の誰とも友達になれないと思うけれど何故か全員愛しくてなってくる。親近感が湧いてくる。抱きしめたくなってくる。「まだ若い廃墟」「裂けた爪」「夜の中の夜」「週末」「裸足」「まっとうな男」「夢みる力」「しずかな若者」が特に良かった。

2022/01/10

新地学@児童書病発動中

これは傑作。函館らしき街を舞台に普通の人々の喜び、哀しみ、怒りを描いていく内容。一つの街を丸ごと描こうとする作者の意志が好きだ。華やかに生きている人たちではなく、どん詰まりで懸命に生きている人たちを丁寧に描いていくところに作者の人間的な優しさを感じる。都会ではなく、地方で生きている人間は、ここに出てくる登場人物たちと同じやるせなさや憤りを感じているだろう。飲酒運転で警察に捕まって、警官に手を出す男の話「まっとうな男」の「ただ働いてきた、それだけの人生だ」と言う独白は悲しくも、切ない。

2016/08/28

ワニニ

悲しいけれどどうしようもない、どうしようもないけれど変わらず明日は来る。だから、うっすらと感じる光に導かれるよう、でも淡々と生きていく。衰退した地方都市、うらぶれた街、痛いほどに冷たく寒く、もがくように懸命な人々、そして流入してくる首都の画一的煌びやかさ…、寂しさと少しの希望が支配する街と人間を18の叙景として描いている。静かに心が揺さぶられる。短いが、もうすぐ来る“夏”をも書いて欲しかった。…しかし、やはりクラい。ちょっと気分が落ちている時は、さらに浸れるような?閉塞感と不安感でドキドキする。

2015/10/28

Nobu A

佐藤泰志著書初読。手に取った理由は今度の読書会の課題図書のため。正直期待外れ。芥川賞候補に5回も挙がったものの受賞を逃し41歳で自死と言う悲運。没後再評価され、本書は91年に文庫化。函館出身で地元を模したと言う作品。評価基準は現実性。私も仕事で函館には2011年まで3夏過ごしたことがある。地元密着のバーガーショップの存在を無視してマクドナルドやダンキンドーナツが出てくる。また、東京を「首都」と表現。その意図が読み取れなかった。当然その土地独特の儚さも。刊行当時読んでいたら感想も違っていたかもしれないが。

2023/06/28

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