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終りし道の標べに (新潮文庫 あ 4-11)

終りし道の標べに (新潮文庫 あ 4-11)

終りし道の標べに (新潮文庫 あ 4-11)

作家
安部公房
出版社
新潮社
発売日
1975-08-01
ISBN
9784101121116
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ジャンル

終りし道の標べに (新潮文庫 あ 4-11) / 感想・レビュー

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ドン•マルロー

安部公房の処女作。らしからぬ感傷的な描写がちらつくのも、若さゆえのことだろうか。著者自身が直截に主人公に投影されているのも珍しい。ことに《亡き友に》捧げられた献辞の言葉がこの作品の全てであるように思われる。ーー記念碑を建てよう。何度でも、繰り返し、故郷の友を殺しつづけるためにーー若かりし日を満州で過ごした安倍にとって、故郷とは日本でなく満州であった。そして敗戦とは直截に故郷の喪失を意味した。終わった所から始めた旅に、終わりはない。故郷の墓標を胸中に、安部公房の「限りない有限の旅」はここから始まったのだ。

2016/06/24

高橋 橘苑

安部公房の処女作。なんとなく、自分の中で推測していたものが、うっすらと形になるような気がしてきた。なぜ、安部公房という作家が気になるのか、そして、何かの十字架を背負った人が持つ心の足枷があるのではないかということ。このデビュー作は、安部作品とは思えない素直な文章であり、後年のユーモアや凝った展開とは無縁である。故郷からの脱出が本作のテーマであり、新大陸に渡った移民のように、何か意味あるものを追求せずにはおれない衝動を感じる。逃亡と創世、望郷と自己否定の果てにこそ、わずかに自分だけの安息の世界が現れる。

2014/09/09

安部公房の処女作。日本の敗戦という終わりを故郷の満州で経験した著者。その終わりからの出発、故郷との訣別が本小説のテーマとなっており、安部公房を語るうえでの必読書と言えます。どうでもいいですが安部公房は結晶という表現が好きみたいですね。

2018/07/05

mstr_kk

10年ぶり3読め。真善美社版の青臭い部分を抹消するため、テキストの動機付けやテーマまでまったく違うものにしてしまっている。真善美社版の青春文学としての特徴も失われ…個人的には、ヒロインまでロマンティックで清純な美少女からエロティックで妖艶な小悪魔に変えられたのがショック。ま、これはこれとして面白い。気になるのは時間設定。主人公が陳に捕まったのは、1944年の晩秋か、1945年の晩秋か?前者なら身代金の交渉が1年以上長引いているし、後者なら日本の敗戦を知らないのはいくらなんでも不自然。

2013/04/13

quickening

シュルレアリスム作家で有名な安部公房の処女作である。故郷を捨てて、異国の地で「自分がかく在る」ということを否定?し、自己の占有を目指す者の自己同一性を語る小説である。「壁」や「砂の女」にも通ずる箇所がいくつかあり、それらの作品の存在のおかげで、この作品の難解さが軽減されている。この2作品を読まずにこの小説を読んだら、何が言いたいのか分からなかったと思う。安部公房の生涯にわたる文学のテーマを記念碑的に描いた渾身の作品だ。ただ、主人公が阿片に蝕まれてしまっては、かく在る以前の問題になるのではと矛盾も感じた。

2022/05/25

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