KADOKAWA Group

Facebook Twitter LINE はてブ Instagram Pinterest

箱男 (新潮文庫)

箱男 (新潮文庫)

箱男 (新潮文庫)

作家
安部公房
出版社
新潮社
発売日
2005-05-01
ISBN
9784101121161
amazonで購入する Kindle版を購入する

ジャンル

「箱男 (新潮文庫)」のおすすめレビュー

生誕100年安部公房『箱男』ってどんな話? 永瀬正敏・浅野忠信・佐藤浩市らで映画化予定の実験作

『箱男(新潮文庫)』(安部公房/新潮社)

 2024年は小説家・安部公房生誕100周年。本記事でご紹介するのは、同氏の著作の中でも実験的なことで知られる1973年の作品『箱男(新潮文庫)』(安部公房/新潮社)です。永瀬正敏・浅野忠信・佐藤浩市などが出演する映画版も2024年に公開予定で、2月のベルリン映画祭でプレミア上映がおこなわれたニュースは話題となりました。まずは簡単にあらすじをご紹介します。

 社会とのつながりを絶ち、ダンボール箱をかぶって町をさまよいながら生きる「箱男」は、ダンボールにあけられた小窓から世の中を見つめる。全国にはかなりの数の「箱男」がいるといわれているが、そのうちの一人である「ぼく」は、看護師の女性から箱を売ってほしいと尋ねられる。抵抗感を覚えつつ「ぼく」が彼女の病院を訪ねると、「贋の箱男」である医師と出会う…

 本書を詠み進める上で厄介だけれどもある意味ユニークな点は「物語が誰によって書かれているか」というのが撹乱される感覚にあります。物語の最初は「ぼく」が腰のあたりまで丈のあるダンボールをすっぽりかぶりながら、「箱男が、箱の…

2024/4/8

全文を読む

おすすめレビューをもっと見る

箱男 (新潮文庫) / 感想・レビュー

powerd by 読書メーター

ヴェネツィア

安部公房の小説は、その構想の根底から荒唐無稽でありながら、奇妙なリアリティを持っている。この『箱男』も例外ではない。それを可能にするのは、表現のリアルな細密化と(その意味では、これは徹底して「視線」の小説である)、もう一方には現実の中に立脚しているはずの読者である自分も、あるいは箱男になるかも知れないという危うさである。箱男にとって、対人、対世間との間にインタラクティブな関係性が構築されることはない。常に一方向からであり、まさしく「窃視」に他ならない。したがって、「言葉」もまたここでは不毛なのである。

2014/10/06

遥かなる想い

ダンボールを被った浮浪者が主人公である。「箱」が何を意味するのか今でもよくわからないが、他人から見られることなしに、相手を一方的に覗く快感に溺れていくという感覚はきっと存在するのだろう。ダンボールには覗き穴があり、箱男は自分を見られることなしに相手を覗き見ることができる。設定はよくわかるのだがストーリーは全く理解できかった。読者にわざとわからないような困難な話にした、というのが今では定説のようだが。

2010/06/20

ykmmr (^_^)

まずは…自分が読むことを、初・挑戦しようとした時と、TVで紹介されて、作者が注目されることになったタイミングの良さに、笑ってしまった。同時に、自分に読めるかに恐れを成した。実際は…やはり難しい。まずは…どうして…『箱』なのか…ミステリーなのか?空想なのか?実際に『箱』を被って生活してみた話なのか?物語的に、どれとも取れて奇想天外。箱外の状況は想像出来て、その通りだと思うが、その状況も、写真や作者の考察コメント入りだからなのもあるが、これは分かりやすい。読者の読解力の相比が、この話の解釈になると思い、

2022/07/07

康功

安部公房二冊目で早くも試練の読了。難しさは半端なかった。主人公が誰なのか、登場人物の視点でコロコロ変わる。贋箱男、箱男、医師、看護婦、箱男の父親、少年、ピアノ女教師。これらの中に同一人物がいて、断片的な文章の中から一つの繋がった物語が浮かんでくる。箱男の心的状態は、現代人の引きこもりの目線を、偶然にも予言しているかのように表現している。サイコの様に見える物語も、もしかしたら自分の住んでいる近所にもいそうな隣人の姿かと想像させてくれる、そんな現代に生きている自分がいることを、再確認させられた気分だ。

2017/11/09

Vakira

数十年かぶりに再読。当時読んだ時は10代だったので、全く異なる印象を受けた。箱男は段ボールをかぶり最低限の生活道具を持って街を徘徊する。街に溶け込み風景と同化する。他人の目に映っても、ない物と判断される。箱男は見られずに覗けるのだ。覗く者と覗かれる者、本物と偽物、箱と裸体、男と女。まるでSとMのようにも感じられる。この世界観は凄い。実験的小説だ。この世界を創造した安部公房恐るべし。もう20年位前に亡くなってしまったが、悔やまれてならない。

2014/07/19

感想・レビューをもっと見る