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彼岸先生 (新潮文庫 し 29-4)

彼岸先生 (新潮文庫 し 29-4)

彼岸先生 (新潮文庫 し 29-4)

作家
島田雅彦
出版社
新潮社
発売日
1995-05-01
ISBN
9784101187044
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彼岸先生 (新潮文庫 し 29-4) / 感想・レビュー

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佐島楓

「こころ」のオマージュ(この表現が適当かどうかはわからない)だそうで、構成など凝っているが、島田雅彦の筆の力(というか変態力)に漱石もびっくりだろう。三角関係の設定がとくに「こころ」と違っている。読みやすくて面白いので、おすすめです。

2017/08/13

harass

『こころ』を読んだときにこれのパロディがあったなと思いだして再読。平成版『こころ』は恋愛の身体と関係を語り、『からだ』とも言いかえられる。主人公は、プレイボーイの小説家と知り合い弟子入りする。彼は小説家のことを『彼岸先生』と名付け彼の生活と意見を謹聴するのだが…… 軽妙な文章で小理屈と性生活の話をこね回す語りのあまりのアクロバティックに感心する。不真面目さを徹底させているのが面白い。酒場の止めどないお喋りのような心地よさを読んでいて感じた。

2014/07/02

メタボン

☆☆☆ 文体は相変わらず歯切れよく面白かった。平成版こころというほどの重さはない。先生の日記を頂点として、物語は盛り上がるものの、後半の精神病院のくだりは蛇足に思われる。何よりも、先生とぼくの視点や語りに変化がなく、「島田雅彦」という実体を痛烈に意識させてしまうことが、この小説の決定的な欠点に思われる。泉鏡花文学賞受賞作ということで大いに期待し、読む前にハードルを上げすぎてしまった。とは言え、面白いエピソードにあふれているのは確かであり、この時期における島田雅彦の代表作と言えるのだろう。

2017/11/18

ちぇけら

勃起の瞬間からわかってた。ベッドメイクされた部屋が粘液の楽園になり果てるころ、快感の頂点から急降下していく、あの感覚の訪れを。でもそのとき実感するんだ、ボクは生きてるって。生活や愛は形而上学的遊戯にすぎないよ。おちんちんで実存哲学をやり、嘘と偽りで虚構を生きた彼岸先生は、誰よりも愛を求めながら、愛はとっくに打ちのめされてるって、気づいてたんだ。だから虚ろな空洞におちんちんを入れてつなぎ止めてた。「底なしの孤独に落ち込みそうな時はセックスに限るよ」限界だったんだ。涙のかわりに迸るのは、3ccのラブレターだ。

2020/01/15

ソングライン

大学生の主人公の対岸にすむ37歳の小説家の先生、知り合いとなった先生を人生の師と決め、付き合いを始める主人公。妻以外に何人もの女性を愛人に持ち、週の3日間だけ物を書く先生。先生の自殺未遂を機に、その若い頃からの日記を主人公は読むことになり、そこにはニューヨークで奔放な性生活を送る先生の青春が描かれていました。フィクションの如く生きる先生、その自殺行為もフィンクションなのか、そして弟子の主人公が選ぶ道とは。人生とは何か、人間とは何かを問う漱石の「こころ」とは異なる、狡く、弱い男の恋愛の真実を語る小説です。

2020/11/24

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