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苦役列車 (新潮文庫)

苦役列車 (新潮文庫)

苦役列車 (新潮文庫)

作家
西村賢太
出版社
新潮社
発売日
2012-04-19
ISBN
9784101312842
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苦役列車 (新潮文庫) / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

2010年下半期芥川賞受賞作。歴代の芥川賞作家の経歴を見ると、黒田夏子さんをはじめ、稲門の出身者が圧倒的に多い。そうした中では西村賢太の中卒というのは、やはり異彩を放っている。表題作は、私小説ではないものの、作法は私小説的であり、そこでも中卒に対するコンプレックスと強固な自我とがせめぎ合い、それがこの小説に独特の力強さを与えているのである。選考委員の小川洋子が指摘する「汗と酒の匂い」に噎せ返るのが、まさにこの小説の個性だ。また同時受賞が朝吹真理子というのもシニカルだ。なお、併録作はいくぶん太宰を思わせる。

2013/07/17

だんぼ

「藤澤清蔵の作品コピーを常に作業ズボンの尻ポケットにしのばせた、確たる将来の目標もない、相も変わらずの人足であった」アルコールで冷えた体に一枚羽織りながら、さいごの一行がしみた

2023/10/21

ちょこまーぶる

ここまで赤裸々につづられた私小説は初めて読んだ気がする。少々、文体や言葉が馴染めなかった箇所があったりして、読みずらかったがその日暮らしをしている若者のリアルな焦り、悩み、恨み、怒り・・・と言った混沌とした感情の日々が表現されていて、むしろスッキリとした読了だった思いである。また、現場で友人となった日下部との微妙な生活感や経済感のズレを表している辺りが、個人的には好きである。

2014/02/13

ソルティ

北町貫多って自分の名前モジリだね。主人公の若い頃が嫌。自分もいい所を見せなければそんなもんなのでよくわかるがこう露骨にゲスいと⋯。でもそれは読む人が「こういうところがあっても生きてける」って希望になるように逆説とか狙いかも。「そして更には、かかえているだけで厄介極まりない、自身の並外れた劣等感より生じ来たるところの、浅ましい妬みやそねみに絶えず自我を侵食されながら、この先の道行きを終点まで走っていくことを思えば、貫多はこの世がひどく味気なくって息苦しい、一個の苦役の従事にも等しく感じられてならなかった。」

2023/12/30

hit4papa

中年の腹を裂いてはらわたを覗き見たような気にさせる作品です。私小説ですから、著者の西村賢太は、すなわち主人公の貫多なんでしょうが、よくもまあここまで惜しげもなく(?)自身をさらけ出せるものです。「苦役列車」は、日雇い労働に明け暮れる青年期の貫多の日常が切り取られています。ちらりとやっかみや悪意が頭をかすめてもそれを封じ込めるのがあるべき大人ですが、それをドロドロと吐き出すイタさに、むしろ潔さを感じました。古式ゆかしい文体が、作品世界をいっそう負のオーラで包み込み、匂い立つようなものに仕上げているようです。

2016/11/23

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