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遺体: 震災、津波の果てに (新潮文庫)

遺体: 震災、津波の果てに (新潮文庫)

遺体: 震災、津波の果てに (新潮文庫)

作家
石井光太
出版社
新潮社
発売日
2014-02-28
ISBN
9784101325347
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「遺体: 震災、津波の果てに (新潮文庫)」のおすすめレビュー

震災の真実を伝える、遺体をめぐる数々の証言

本記事は、2013年に公開したものです。  東日本大震災から2年。映像、写真、活字のなかでさまざまな報道がなされてきた。

 被災地を訪れるテレビ番組では、被災後すぐの瓦礫の山の中で、あるいは自衛隊が捜索活動に専念する模様が取材され、あるいは一面の荒れ地と化した町の現在の惨状がレポートされる。

 私たちはそれで震災の悲惨さが分かった気になる。ひどい壊れ方だなあと嘆息し、恐ろしい災害だったなあと。

 だが、テレビも新聞も、決して報道しなかった場面があった。遺体の姿である。報道協定でもしいたように、遺体のありさまはひとつとて映し出されなかった。亡くなった方々の姿形はぬぐい去ったように映し出されるのを避けられていた。まるで震災の最も大きな被害は町が壊滅したことだと思わせるかのように。

 あの惨劇の最大の本当の被害者は、徹底的に破壊された町でも倒壊した無数の家屋でもない。津波や放射能に襲われてすべてを失った住民の方々、分けても無念のうちに亡くなってしまった人々ではないだろうか。それがいっさい報道されない。

 もちろん15,854名の死者、3,155名の行方不明者(…

2013/3/11

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遺体: 震災、津波の果てに (新潮文庫) / 感想・レビュー

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yoshida

東日本大震災の津波で甚大な被害に遇った釜石市。被災者でありながらも遺体の収容、安置、運営に必死に動く人々のルポ。私は福島県在住の為、原発モノばかり読んでいた。震災から8年で漸く読了。この世は理不尽だ。当たり前の毎日を巨大な自然災害が奪う。近親者を津波で失い安置所で再会したご遺族の姿は涙なくしては読めない。勿論、真の意味でご遺族の苦しみ、心中を私が知ることは出来ない。ただ、震災を知り生きている私達に出来ることは何か。震災の記憶を残し教訓を伝え、懸命に働くことだろう。その積み重ねが未来へと続く道標となるのだ。

2019/03/12

しいたけ

あの混乱の被災地で、自らも被災者でありながら遺体に尽くす人々がいた。遺体を少しでもときれいにし、家族が辿り着けるようにと調べ、孤独と寒さを慰め、腐りゆく身を励ます。「遺体は誰からも忘れ去られてしまうのが一番つらい。生きているものは彼らを一人にさせちゃいけない」との言葉が胸を打つ。震災後まもなくメディアが狼煙をあげた「復興」という言葉に著者は違和感を持つ。「被災地にいる人々がこの数え切れないほどの死を認め、血肉化する覚悟を決めない限り復興はありえない」人がいる場所は地獄にならない。そこにもきちんと花が咲く。

2017/03/22

kinupon

震災があって6年目にしてようやく読むことが出来ました。当時を振り返り、私の知人も津波で亡くなりました。遺体安置所に行き対面したときの状況は今でも忘れません。安置所には小さな棺もあり、胸を締め付けられる想いでした。知人の遺体に向かい合ったときは涙が止まりませんでした。「寒かったね。苦しかったね」心の中でそうつぶやいていました。私にとって3月11日は「サン・テン・イチイチ」と言った記号ではありません。3月11日なんです。この日を忘れません。 この文章を書いていても、また涙が出てきます。 合掌

2017/03/10

ちゃちゃ

あの日。押し寄せる濁流にのみ込まれて、一瞬にして命を奪われ、恐怖と苦悶の表情をそのままに、次々と安置所へ運び込まれた数多くの遺体。 ともすれば番号で処理され、人間としての尊厳を奪われたような扱いを受ける無念さに寄り添い、黙々と自らの任務に当たった人々がいた。疲弊しきった体を自ら鼓舞して真摯に遺体に向き合い、名を持つ個人の死へと導いた、民生委員や医師・歯科医や消防団、市職員等の方々の存在を忘れないでいたい。あの日から8年。多くの犠牲者を出した三陸の港町釜石で、遺体安置所に関わった人々の壮絶なルポ。

2019/03/10

おかむー

これに関しては感想を述べたり評価をつけたりはしない、できるはずもないのだ。幸いにして震災の直接の影響もない土地で、被災者に関わることもなく生きている自分にできることは、知ること、理解すること、忘れないこと。亡くなった方々のご冥福を祈りつつ、未だ十分とは言えない復興が進むことを望むばかりです。

2015/03/12

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