悲しみよ こんにちは (新潮文庫)
悲しみよ こんにちは (新潮文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
何から何まで感心、いや驚嘆することばかり。まずは、サガンが弱冠18歳の時にこの小説を書いたこと。小説の構成が実に緻密でスキのないこと。人物像の造型(とりわけ、わたし、父、アンヌ)が巧みでフランス風のリアリティに溢れること。半世紀も前の作品なのに、古さを全く感じさせないこと。あげていけばキリがない。ほんとうに完成度の高い小説だ。実はサガンはこれが初読で、他の作品もぜひ読んでみようと思うのだが、懸念することが一つある。それはサガン18歳のデビュー作のこの小説こそが彼女の最高傑作なのではないかということだ。
2015/02/24
ehirano1
このタイトルで先ず以って思いつくのは、めぞん一刻のOP曲、という当方(苦笑)。流石(?)薄い本だけあって読ませてくれました。前半は殆ど「セシル哲学」です。後半に入るとセシル哲学は鳴りを潜めますが、ストーリー展開の要所要所に見え隠れします。回顧録風的な淡々と粛々した記述が客観的視点を際立たせており、たとえどんな結末になったとしてもそれを穏やかに受け入れる(≒セシルの決断を尊重する)ことができると思いました。
2017/05/07
匠
サガンの生涯を知ってから読むと、この小説の主人公セシルが彼女自身にすごく重なる。このデヴュー作で一躍名を馳せていったのも頷ける表現力。幼い頃から大人に囲まれて育つと確かにこうなるよなぁと、なんだか公私がダブって見えてしまう。また、翻訳のほうもすごく自然で読みやすかった。それにしても小悪魔というか愚かというか、見事なエレクトラコンプレックスぶりで。未熟さゆえにコロコロと変わる感情や企みに振り回されていく大人たちが哀れで仕方ない。個人的にはセシルよりアンヌのほうが魅力的に思えてたので終盤はゾッとしてしまった。
2014/08/10
テディ
美しい南仏海岸別荘地を舞台に思春期の女性が主人公セシル。母親が亡くなったために父親はエルザを愛人として同伴。セシルはシリルという青年に恋して幸せな一時を送っていた。そこに母親の友人であったアンヌが現れる。洗練された頭の良い彼女に父親が奪われたと考えたセシルは、エルザとシリアを巻き込んでアンヌを引き離そうとする。そこで交通事故という悲劇を生んでしまう。けだるさと洒脱さ。そこに大人になりきれない娘としての父親愛がある。この作品を書いたサガンは当時18歳。世の中に信頼できる絶対的なものは無い事を何故悟れたのか?
2015/12/06
ちなぽむ@気まぐれ
【図書館本】ああ、どうしよう。また追いかけたい作家に出逢ってしまった。 太陽と海のきらめく夏の南仏、白い別荘。享楽的で刹那的な生活を送る17歳のセシルと父の生活に割り込んでくる、知性溢れる規律正しいアンヌ。憧れと抵抗。大人になりきれない、しかしもはや子どもではない17歳という微妙な年齢独特の純粋さと優しさ、相反する残酷さ。はっとするほどの達観した眼差しと戸惑う程の稚拙な考え。セシルの葛藤が生み出した残酷過ぎる結末。悲しみとの出会いが南仏の美しい世界と溶け合ってどこまでも美しく描かれている。
2018/09/02
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