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わたしたちに翼はいらない

わたしたちに翼はいらない

わたしたちに翼はいらない

作家
寺地はるな
出版社
新潮社
発売日
2023-08-18
ISBN
9784103531920
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「わたしたちに翼はいらない」のおすすめレビュー

自殺するくらいなら人を殺してから?嫉妬・復讐・侮蔑などがもつれ合う世界が生々しすぎる『わたしたちに翼はいらない』

『わたしたちに翼はいらない』(寺地はるな/新潮社)

 いじめ、自殺、復讐、嫉妬、侮蔑……あらゆる立場にある人間の機微を丁寧に掬い上げ、表立っては言えないが確実に存在している人間のどす黒い部分を見せてくれる小説『わたしたちに翼はいらない』(寺地はるな/新潮社)が発売された。

「わたしたち最強だったよね」10代の感情を今でも懐かしむ人たち

 本書には明確な主人公は存在しない。複数の人間が、それぞれの視点で自分たちの生きる世界を語るスタイルだ。4歳の娘を育てるシングルマザー。その娘と同じ保育園に娘を預ける専業主婦。不動産関係会社に勤務する独身の無口な男。彼らの夫、父、母、娘……。そういった複雑な人間関係が巧妙に交じり合う、狭いが色の濃い世界が舞台である。

 彼らの中には、学生時代に青春を謳歌していた人たちと、彼らにいじめられていた人たちが含まれている。前者は「わたしたちあの頃最強だったよね」と懐かしみ、後者は「毎日びくびくしていた」と言って苦々しくなる。そんな彼らが大人になった世界を描く。

第一章で自殺しようとしていた男、殺しに急転換

 第一章の時点で早くも、園田…

2023/8/18

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「学生時代だったら、ぜったい仲良くならなかった」と実際に言われた。中学時代の「友達」と大人の「友達」の価値観。寺地はるなさんインタビュー

 今年、『川のほとりに立つ者は』で2023年本屋大賞9位に入賞した寺地はるなさん。2021年には『水を縫う』で河合隼雄物語賞を受賞するなど、さまざまな賞にもノミネートされ、今もっとも注目されている作家の一人だ。そんな寺地さんの最新作『わたしたちに翼はいらない』(新潮社)は地方都市を舞台に、人間関係のしがらみから抜け出せずにもがく人たちを描いた物語。発売前重版も決定し、ますます注目を集める同作に、寺地さんがこめた想いとは。 (取材・文=立花もも 撮影=後藤利江)

「学生時代に知り合っていたら、ぜったい仲良くならなかったですよね」と実際に言われた

――本作では“友達”って何なんだろうと考えさせられました。中学時代の同級生で、地元の王様だった大樹と結婚し、そのまま人間関係を保ち続けている莉子。友達はいないと言い切る、シングルマザーの朱音。かつて自分をいじめていた大樹と会社で再会し、恨みを募らせる園田。地方都市に生きる人たちのしがらみも、ひしひしと迫ってきて。

寺地はるなさん(以下、寺地) 良くも悪くも、学生時代のことを引きずり続けてしまうことってありますよね…

2023/8/30

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わたしたちに翼はいらない / 感想・レビュー

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さてさて

『十代の頃って、人生でいちばん良い時代だよね』。そんな問いの答えに『いちばん良い時代じゃなかった…』と答える主人公。この作品では、園田、莉子、そして朱音という三人の主人公達が、中学時代に負った傷に癒されないままに大人な今を生きる様が描かれていました。まさかの”黒テラチ”な展開に新鮮な読み味を感じるこの作品。それでいて三人の主人公達の心の機微を丁寧に掬い取っていくいつもならではの寺地さんの筆致に安堵もするこの作品。まさかの”寺地はるなのサスペンス”にこの作品にかける強い意気込みを感じた素晴らしい作品でした。

2023/08/22

starbro

寺地 はるなは、新作中心に読んでいる作家です。 日立市のような企業城下町を舞台に、閉塞感の中で生きる市井の人々の群像劇、読み応えはありますが、今読みたいストーリーではありませんでした。 https://www.shinchosha.co.jp/book/353192/

2023/09/06

fwhd8325

寺地さんのサスペンスと聞いていましたが、なかなかイメージがつかないでいました。率直な感想として、とてもスリリングな物語でした。言葉少なに映像化してくれたら、とても面白いものなると思います。誰でも心に闇をもっていることを、こうした表現で描いた寺地さんの新境地ですね。私にとっても刺激的な読書になりました。

2023/12/09

hiace9000

"黒"寺地との評もある本作。だが私は、これまでどんなピースも嵌まらなかった心の凹みに、次から次に言葉が収まる気持ち良さを感じた。黒なのか、否、何気ない言葉に潜む、善意や常識に擬態した真意や悪意を炙り出す、より深化した寺地ismなのだ。小さな子ども同士の諍いを「ごめんなさい-いいよ」ごっこで解決したかのように暗示をかける大人のまやかし。「希望溢れる言葉」では救われない孤独感と疎外感。心の傷と向き合い「ひとりで立つ」ことをどう捉えるべきかー。読後直ちに再読した初めての作品。私のなかのわたしに出会えた一作だ。

2023/11/03

kotetsupatapata

星★★★☆☆ スクールカーストにモラハラ夫、さらには殺害願望やらと冒頭から不穏な空気に包まれ、いつもの寺地さんの作品なら、「きみには翼がある、雲に届くよう高く飛べ」と言った浜田先生のような人と、手を携えて前向きに歩いていく作品が多かったですが、今作はその手を振り払い、地べたを這いつくばっていく生き方を描いた「黒テラチ」作品。 スッキリとしないラストに、どうコメントしたらよいか難しい作品でしたが、三人が選んだ今後の道のりに障害物が無い事を祈りたいと思います。 人間なんてみんなどこかちょっとずつおかしなもの

2023/11/28

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