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わたしのいるところ (新潮クレスト・ブックス)

わたしのいるところ (新潮クレスト・ブックス)

わたしのいるところ (新潮クレスト・ブックス)

作家
Jhumpa Lahiri
ジュンパ・ラヒリ
中嶋 浩郎
出版社
新潮社
発売日
2019-08-23
ISBN
9784105901592
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「わたしのいるところ (新潮クレスト・ブックス)」のおすすめレビュー

あなたには自分の居場所がありますか? 身の回りに潜む孤独と向き合って生きる女性の美しい物語

『わたしのいるところ』(ジュンパ・ラヒリ:著、中嶋浩郎:訳/新潮社)

 本書を読んでまず感じたのは、「孤独」はそれほど悪くないということ。世間一般には孤独はマイナスの要素として捉えられている節があるが、同時に一人で過ごす「静謐な時間」でもあるのではないだろうか。『わたしのいるところ』(ジュンパ・ラヒリ:著、中嶋浩郎:訳/新潮社)は、ピューリッツァー賞受賞作家でもあるジュンパ・ラヒリがイタリア語で書きあげた最新長編小説だ。彼女の独特の世界観が美しく描かれた、何度も読み返したくなる一冊となっている。

 小説の舞台となるのはローマと思しき町。主人公の45歳の女性の日常を淡々と描いた作品である。本来、小説にはストーリーを盛り上げるできごとが鏤められているが、本書は主人公の女性の視点を通して、あまりにも当たり前な日常を切り取ったまるでエッセイのような作品に仕上がっている。いつも通る歩道で、トラットリアで、広場で、本屋で、スーパーで、彼女が見たこと、体験したことがただ描かれている。ただし、共通するのはあらゆるところに孤独が潜んでいるということ。5年暮らした恋人…

2019/10/1

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【ひとめ惚れ大賞】ラヒリが描くのは、人が他者とのあいだで抱く普遍的孤独『わたしのいるところ』新潮クレスト・ブックス担当編集者インタビュー

『わたしのいるところ』 ジュンパ・ラヒリ:著 中嶋浩郎:訳

装丁(日本語版):新潮社装幀室 カバー写真(日本語版):大木靖子 編集(日本語版):須貝利恵子 新潮社 1700円(税別)

 クレスト・ブックスは1998年創刊なのですが、その頃はちょうど海外文学の売れ行きがとても厳しい時期でした。当時別の出版社にいた私は、新潮社が新レーベルを立ち上げたことにかなりびっくりしました。でも魅力的なシリーズにして息長く売れば必ず読者に届くというのが創刊編集長(現在小説家の松家仁之さん)の考えだったんです。昨年創刊20周年を迎え、総点数も160冊を越えました。クレストだからと選んでくださる読者がいて、刊行後何年も経ってから増刷になる作品もあり、ありがたいことです。

 ラヒリはクレストの中でも重要な作家のひとりです。初めてラヒリに触れたのは『停電の夜に』の仮綴じ本で、アジア系の作家に興味をお持ちだった小川高義さんに読んでいただいたところ、ぜひ訳したいと。校了直前に『停電の夜に』がピュリッツァー賞を受賞。新人、しかも短篇小説で受賞するのは異例のことでした。

 ラヒリはア…

2019/12/29

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わたしのいるところ (新潮クレスト・ブックス) / 感想・レビュー

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アン

イタリア語による初めての小説(掌篇連作集のよう)。主人公の「わたし」は40代後半の大学教師で一人暮らし。彼女の日常生活における出来事と記憶が静かな筆致で綴られています。同じ空間にいて会話をしていても、不安に駆られたり、ためらいを感じ戸惑い、孤独というものをいつも見つめている彼女がいます。両親の影響も垣間見られますが、彼女の抱える孤独感というものは、誰もが多少なりとも抱くものではないでしょうか。真摯に自分と向き合いながら、新たな一歩を踏み出す姿に心を引き寄せられます。「スーパーで」「海で」「鏡に」が好き。

2019/09/21

まこみや

うまくまとまらないので、感想の気付きをメモ風に記します。1)ベンガル語でも英語でもなく、自ら選んだイタリア語で書くことの意味は? 2)場所にも人にも固有名詞が存在しないのはなぜ? 3)一見身辺雑記風のエッセイかスケッチと見紛うけれど、実は環境の中に居場所を確定できない「わたし」の風景を描く。4)風景の通奏低音は孤独と旅立ち。5)場所やモノにはそれに付着する気分(情緒)があって、「わたし」はそれを描こうとしている。

2021/08/16

どんぐり

ジュンパ・ラヒリがイタリア語で書いた、短編小説よりもさらに短い46の章からなる掌篇小説。孤独な生き方を選んだ大学教師の女性の、歩道で、道で、仕事場で、病院の待合室で、本屋で、美術館で、田舎で、海で、プールで、ホテルで、バールで、墓地で、電車の中で、と様々な場所に「孤独でいることが私の仕事になった」と綴るモノローグ。何かが起きるわけではない。それでも引き込まれるのは、〈わたし〉を切り取った文章にある。

2020/08/20

秋風

46章に切り取られた何気ない日常生活における小さな出来事。歩道で、仕事場で、待合室で本屋で、美術館でと必ずそこには誰かがいて40代の一人暮らし大学教授の彼女が感じた言葉で心情を表現しているのだが、人恋しくて孤独を楽しんでいる様でもなく、どこか窮屈に感じた。人の名前も場所の名前も固有名詞が一つも出てこなく距離感が縮まった様で今まで出会った事のある誰かの物語を読んでいる様な不思議な気持ちになれた。こんな物語を描けるジュンパ.ラヒリ素敵な女性ですね。

2019/12/26

トラキチ

イタリアで3年間過ごしたラヒリがイタリア語で書いた初めての小説。英語で書かれたものはベンガル人としての苦しみや悩みを交えながらも矜恃が貫かれていて、読者にとってもインパクトの強いものであったが、本作はローマに住む四十代で未婚の女性の孤独に生きる様が淡々と語られていて、回りとの距離感を取る難しさが突き刺さる。主人公のいかにも頼りなさげなところが心地よく、思わず読者自身の過去と照らし合わせることを余儀なくされ、読み終えてのタメ息が充実した読書の証であると言えよう。人生は模索し続けるたびのようだ。

2020/10/08

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