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私の消滅

私の消滅

私の消滅

作家
中村文則
出版社
文藝春秋
発売日
2016-06-18
ISBN
9784163904719
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私の消滅 / 感想・レビュー

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W-G

さらっと読める苦しみのお話。ミステリ―側面がチープ過ぎ、文学面の重たさを緩和させてしまっている印象を受ける。各人物の過去の書き込みがもう少しあって、宮崎や前上といった現実の殺人犯の考証も無駄でももっと掘り下げれば、夢野久作のような作品になったかもしれない。心の痛みを無理くり悲愴に描き、イカれた行動を美的なものに見せようとしているような危うさも感じ、先述した点も要因となって、入り込む前に終わってしまった印象。まだ『教団X』と2冊しか読んでいないものの、独特の蒼さは好きなので、少しずつ手をつけていこうと思う。

2016/08/06

starbro

中村文則は、全作品を読んでいる作家です。本作はボリューム、内容、暗さから著者の初期作品のテイストに近い感じがします。最近の作品はエンタメ度が高めでしたが、本作は少し純文学回帰の兆しが見えます。性、暴力、マインドコントロール、狂気等、大作『教団X』を経て進化した中村文則の姿があります。もう過去の人になっている宮崎勤を現代に蘇らせたのは、何か彼にインスパイアされたからなのでしょうか?

2016/07/19

抹茶モナカ

不思議な手記から始まり、魂の闇へ降りて行く。僕は精神科外来に定期的に通院しているのだけど、中村文則さんの捉えた精神病、精神科外来の診察と、僕の思うそれが全然違って、精神病患者の一人としては、この本を読んだ人が精神病や精神科に偏見を持つような気がして、厭な感じがしました。宮崎勤死刑囚についても触れていたけど、心意気は買うけど、必要性はビミョー。子供の頃、オタクな僕は母親に『宮崎』と呼ばれていたのを、思い出して、厭な感じ倍増でした。中村節は心地良いのだけれど、という本。

2016/07/20

Yunemo

やっぱりダメでした。人物設定の複雑さと継続されない展開、でもこれをきちんと理解して読了する方もいるんだと思うと頭が下がります。本作品、基本的にはこれでもかと念押しの悪意と絶望感、救いがない展開に心折れます。精神科医という職業、本来の職分を全うすべき立場、そもそもメインの立場をこの職業に設定したことに混沌の意味を表現したのかもしれませんが。ついて行けない自身を、ある意味正当化して読了です。自身の過去を書き換えること、封じ込めること、一部分の脳の記憶を消しさえすればいいのだから。とは想ってもやはり理解し難く。

2018/06/17

パトラッシュ

奇妙な悩みを抱えた女が精神科医を訪れる場面は三島由紀夫の『音楽』に似ているが、三島が女好きで冷徹な観察者としての医師を設定したのに対し、本書では異父妹を殺しかけた過去持ちで不能だ。当然こちらは女を愛してしまい、彼女が自殺すると原因を作った面々を拷問して殺すという凄まじい展開になる。物語としては興味深いが、例によって250枚に満たぬ中編で語り手が何度も変わり、故意に時制をずらすので読者は混乱してしまう。医師の異常さを説明するため引用される宮﨑勤も、今ひとつこなれていない。もっとじっくり書き込んだ長編を望む。

2021/02/01

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