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人間タワー

人間タワー

人間タワー

作家
朝比奈あすか
出版社
文藝春秋
発売日
2017-10-24
ISBN
9784163907406
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「人間タワー」のおすすめレビュー

運動会の組体操とは一体何だったのか、そしてこれからどうなるのか? 「人間タワー」から考える人と人とのつながり

『人間タワー』(朝比奈あすか/文藝春秋)

 運動会のかけっこでよくかかるあの曲を、思い出せるだろうか。通称「天国と地獄』は、「地獄のオルフェ』の序曲である。地獄というほどエグくはないものの、パン食い競走も最近は食べ物をムダにしないようにその場で完食する方針の学校があるなど、運動会は大人になった今振り返ってみるとさながら社会の縮図のようだ。本作『人間タワー』(朝比奈あすか/文藝春秋)は、運動会の数ある競技の中でも組体操に焦点をあてて、生徒・先生・親・卒業生・テレビ視聴者など様々な視点から現代社会の複雑さを描いていく。

 私は小学校の時背が小さく体重も軽かったため、組体操の「人間タワー」(我が校では総称して「秋の花」と呼んでいた)の一番上になった。今でもやや高所恐怖症な私は、足を震わせながら頂点で手を高くあわせてポーズをし、「なぜこんなことをしなければいけないのだろう…」と心の中で思ったのをよく覚えている。作中、運動会のアナウンスで、「人間タワー」の意義はこのように説明される。

「人間タワーは全員の力をかけて築くものです。人間タワーは、誰ひとり欠けても…

2017/11/20

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人間タワー / 感想・レビュー

powerd by 読書メーター

ケンイチミズバ

崩れたのはなぜ?もし最上段の生徒がいじめられっ子だったとしたら。私の学生時代にもいじめはあった。内向的で大人しい生徒がクラス委員長に選ばれた選挙そのものが集団いじめだった。直接加担しなくても深く考えなかったことは罪深い。異議を口にした生徒の勇気を笑い流した全員が共犯だった。組体操の事故が増え社会問題化したが、その背景に迫るものではない。未成熟で無責任に無自覚な男女が結婚し子供を持ち別れる。人間ピラミッドは女には過去のトラウマ、マスコミ関係の男には面白半分のネタのひとつに過ぎない。気持ちをざらつかせる。

2017/12/18

takaC

これも連作長編て呼ぶんでしょうか。主人公を取っ替えての連作短編集。全部読み終えるとある連携性が浮き上がる仕組。

2018/03/16

fwhd8325

一種の連帯感をどこかで望んでいるのかもしれない。ひとりではなく、みんなで行う、作り上げる。そんな達成感を。確かに小学校では組み体操やりました。その一員になっている私たちは、その姿を見ることはできなかったけれど、完成されたかたちは、教師をはじめ大人たちは満足だったのでしょう。この物語にもそんな大人のエゴが描かれますが、最終的にいつに美しい姿で終了していることに、心の澱がとれたような爽やかさを感じました。

2018/02/13

ゆみねこ

25年前に二つの小学校が統合し、みんなの絆を示すためにと運動会で続けてきた人間タワー。そこに関わる人たちを描いた群像劇。生徒・教師・保護者・マスコミ、それぞれの心を巧みに書けていて、心に残る作品です。

2018/02/05

taiko

桜丘小学校の運動会で行われる組体操のメインのシーン、人間タワーで繋がる連作短編。息子が桜丘小学校に転入した離婚したばかりの雪子。人間タワーに感動し投書をしたことのあるホームで暮らす伊佐夫。桜丘小学校の教員、自分の名にコンプレックスのある沖田。母の過度の学歴意識に振り回される桜丘小学校の生徒澪。自分は子供に好かれるいい教師だと信じていた桜丘小学校の教員島倉。桜丘小学校の卒業生で、いじめにあった過去から、小学校にいい思い出がなかった高田。…立場の違う登場人物のそれぞれの立場での思いや気持ちがリアルで→続く

2018/05/27

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