クロコダイル・ティアーズ
「クロコダイル・ティアーズ」のおすすめレビュー
この悲劇の連鎖は他人事ではない…息子を殺した犯人は、嫁の元恋人だった――嘘か本当か、一家は混乱の渦に! 雫井脩介氏最新作『クロコダイル・ティアーズ』
『クロコダイル・ティアーズ』(雫井脩介/鉄人社)
人を呪わば穴二つ、という言葉が読後に思い浮かんだ雫井脩介さんの『クロコダイル・ティアーズ』(文藝春秋)。息子の康平を殺された老舗陶磁器店の店主・貞彦と妻・暁美は、遺された息子の妻・想代子と幼い息子の那由太とともに暮らすことになるのだが、犯人が想代子の元恋人であり、さらには「想代子から頼まれて殺した」と裁判で証言したことから、関係に亀裂が入り始める。
もちろんそんな証言は苦し紛れのいやがらせで、本当に疑わしいところがあれば、警察が動いているはずだ。それでも、一度芽生えた疑念は、そう簡単には晴れない。とくに、以前から康平は想代子に暴力をふるっていたかもしれないと怪しんでいた暁美は、同居を機に、疑念をますます深めていく。元恋人とはいえ、夫を殺した憎い犯人のことをいまだに「さん」付けで呼ぶのは、なぜか。自分と同じように、悲嘆にくれる様子もなく、夫のいなくなった生活を満喫し始めているように見える想代子は、店の仕事にあれこれと口を出すようになり、家でも職場でも、暁美の居場所は少しずつ奪われていく。もしかしてこ…
2022/9/26
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2023/1/19
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クロコダイル・ティアーズ / 感想・レビュー
starbro
雫井 脩介は、新作をコンスタントに読んでいる作家です。本書は、魔性の女サスペンス、一気読みしましたが、最期にサプライズがあれば・・・ https://books.bunshun.jp/articles/-/7438?ud_book
2022/10/22
ムーミン
雫井氏の作品を読むのは久しぶり。やっぱりモヤモヤ感を抱えたまま最後まで読ませていく力はさすがだと感じました。
2023/03/10
まちゃ
タイトルにすっかり騙されました。予想外の結末。何が真実なのか、先が気になって読む手が止まらない、家族の疑心暗鬼を描いたサスペンス。面白かったです。東鎌倉で陶磁器店「土岐屋吉平」を営む久野家。長男・康平の殺人事件を発端に嫁・想代子を疑う母親と、信じたい父親。ままならない家族の関係。
2022/11/22
のぶ
とても多面的なサスペンスだった。陶磁器展を営む貞彦とその妻、暁美は近くに住む、息子の康平とその妻、想代子と幸せに暮らしていた。ところが康平が、想代子の昔の交際相手に殺されてしまう。被告となった男は裁判で「想代子から夫殺しを依頼された」と主張する。話は基本的に暁美や貞彦の視点で進行していく。想代子は作中、頻繁に登場するが、本当の心の内面が最後まで明かされない。想代子を疑う母親と、信じたい父親。全体が不気味で重苦しい空気を漂わせて進行する。想代子の強さとしたたかさがずっと際立った物語だった。
2022/10/06
いつでも母さん
凄い!終始口の中に残る何とも言えない苦さをどうしてくれよう。久しぶりの雫井さんを堪能した。帯の『家族への「疑念」を描く静謐なミステリー!』は噓じゃない。怪しい‥何から何まで全て老舗陶磁器店の嫁・想代子に結びついてしまう不穏さ。これはどの立場で読むかで受け止め方は違う。けれど、結局は想代子一人勝ちの感。くぅぅ、これを唸らずに読める人はいる?いみじくも『焼き締められて強くなる』この思いが想代子を言い表している。凄い!
2022/10/12
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