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青春をクビになって

青春をクビになって

青春をクビになって

作家
額賀澪
出版社
文藝春秋
発売日
2023-09-11
ISBN
9784163917467
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「青春をクビになって」のおすすめレビュー

夢を諦めることの途方もない痛み…大人にならざるを得なかった全ての人たちに送る「青春の終わり」の景色

『青春をクビになって』(額賀澪/文藝春秋)

 どうして学校では「諦めなければ、夢は絶対に叶う」だなんて、そんな綺麗事ばかりを教えるのだろう。青春はいつか終わる。残酷な教えを信じ込んで、ただがむしゃらに夢を追い続けた日々にも、きっと終わりは来る。「諦めなければどうにかなるはず」「ここでやめたら何も残らない」と踏ん張っても、起死回生が望めない時、一体、どうすればいいのだろう。そんな時、私たちが本当に知りたいのは、どうやって次の一歩を踏み出すかということ。夢の諦めかたは、誰も教えてはくれない。

 だが、この小説——『青春をクビになって』(額賀澪/文藝春秋)は、教えてくれる。夢破れた者たちが、どうやってその現実と向き合うかということを。その痛みがどれほど途方もないものなのかを。ずっと青春に浸っていたかったのに大人にならざるを得なかった全ての人たちの心に、この物語は深く突き刺さるに違いない。

「夢を追う人」というと、なぜだか、俳優やミュージシャン、スポーツ選手、漫画家などを目指す若者をイメージしてしまうが、この本で描かれるのは、ある研究者の姿だ。主人公は、瀬川…

2023/9/11

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青春をクビになって / 感想・レビュー

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のぶ

瀬川朝彦は35歳。無給のポスト・ドクター。学生時代に魅了された古事記の研究に青春を賭してきたが、教授職など夢のまた夢。契約期間の限られた講師として大学間を渡り歩く不安定な毎日。古事記への愛は変わらないが、今や講師の座すら危うく、研究を続けるべきかの煩悶が続いている。そんな折、ゼミ時代の先輩が大学の貴重な資料を持ったまま行方不明になってしまうという事件が。45歳の高齢ポスドク”となっていた先輩は、講師の職も失い、なかばホームレス状態だったという。この事件を柱に朝彦の日常を綴っていく。気軽に読めて楽しかった。

2023/09/24

ショースケ

とても興味深い話だった。そして切ない最後。35歳独身の朝彦は古事記の研究をしながら大学の非常勤講師をしている。が、契約を切られ生活も不安定に…若い頃夢みた研究者の道は果てしなく辛いものだった。憧れだった10歳年上の研究者小柳は職と家も失い大学の貴重な古事記の版本を盗み失踪した。 古事記といえば、私も学生時代から慣れ親しんでいたのでとても興味を注がれた。夢を叶える人は一握り。多くの者は淡い夢破れて、現実に折り合いをつけて生きていく。何が正解かはわからない。その時その時を懸命に生きることが正解なのかも。

2024/01/03

けんとまん1007

青春という2文字。そこから連想することは、人、それぞれ。とは言え、一定のイメージがあると思う。そんな青春の後の物語。ふと振り返ると・・・とは、よくあるのではと思う。その振り返りのきっかけは、いろいろある。思うようにならないことが多いが、それでも、少しずつ歩を進める。読みながら、これまでの自分や、今、これからを考える。

2023/11/07

hirokun

★4 この作品を読み終わり、青春をクビになってという表題の意味が胸に響いてくる。夢に向かって進んでいけることが青春であると額賀さんは考えて、この表題を選んだのだろう。ポスドクの大変さ、特に文学系については今に始まったことではなく、まだ私が大学生であった40年以上前からの事だと思う。最近は、企業と結びつく共同研究の進展、基礎研究の重要性に対する世間の評価などもあり、理系分野、特に事業化の可能性と結びつく分野においては、以前よりまだ増しになっていると思う。国がどこまでサポートすればいいのか?

2023/10/06

tetsubun1000mg

大学院博士課程を修了して非常勤講師を務めてもうすぐ5年となる前に雇止めになるなんて。 今年理化学研究所で200人の雇用が打ち切られて研究者をクビにするとの報道が有ったのを思い出した。 日本は大学院、研究者が大切にされない国なんだと実感した。 この作品では35歳になる講師が来年での契約打ち切りを宣告されて、同期だった友人の派遣会社に登録してレンタルフレンドを経験するのだが割とリアルな状況にやや寒気がする。 大学の講師が友達派遣のバイトより収入が低いというのも悲しい。 国が大学への補助金を削っているからなあ。

2023/11/07

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