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センスの哲学

センスの哲学

センスの哲学

作家
千葉雅也
出版社
文藝春秋
発売日
2024-04-05
ISBN
9784163918273
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センスの哲学 / 感想・レビュー

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ころこ

在と不在、意味とリズム、その反復と差異を途中で「いないいないばあ」と表現しさえする。本書でいうセンスとは意味ではなく、意味以前の事象そのもののとらえ方にあるという逆説にある。これをちょっと変形すると、「地」と「図」のうち、「図」ではなく「地」(文化資本とも言い得る)の方に着目すると考えると、少し問題がみえるかも知れない。このことを言うために、著者の専門であるフランス現代思想では、延々と「地」のテクストが続くところだ。『意味がない無意味』(著者の別の著作)ではそのことを論じた。本書はあえて意味として無意味を

2024/04/17

ほし

千葉雅也さんによる芸術論の本。本書では、何のためなのかという意味や目的を離れ、そのもの=「リズム」でものごとを把握することが提示されます。リズムとは凸凹であり、そこには0→1の落差による「ビート」と、複雑に絡み合う「うねり」がある。このような見方を主軸に、絵画や映画、食事などを分解していきます。自分に固有の偶然性を肯定したうえで、その中での反復と差異によるリズムで制作することを提示する千葉さんの話には開放感があり、本書を読むとなにかを作ってみよう、見てみようという気持ちになります。

2024/04/13

冬佳彰

個々の論旨は肯けるんだが、著者のふわっと定義するセンスが、「それは著者自身の趣味=良いセンスって言ってるような」と思っちゃって、根本的なところで理解が進まない感じだなあ。意味の手前のリズムに敏感になるは分かるが、そうすると抽象画や現代音楽みたいなものも楽しめるようになる、と言われても、俺、その辺が好きじゃないんだよな。頑張って個々のリズムを楽しめるように「勉強」するようなモチベーション自体が起こらないんだよね。とは言え、色々と考えさせられる本ではあった。しかし本書でセンスが良くなるのか、と言われると疑問。

2024/04/18

雪駄

最近、斜線堂有紀さんの本を読んで、その本を構成する文章自体がめちゃめちゃ美しい気がして感動する、という体験をした。「センスの哲学」を読んでからその体験を振り返ると、それは自分がリズムとして作品を捉えることが出来ていてそれに楽しくなった、ということだったのか。退屈だと思っていた毎日もそういう捉え方ができると楽しくなる。いつもと同じ朝の車通勤も真新しく感じる。後ろに過ぎていく中央線、青や黄色の標識、体に伝わる振動、歩行者…。規則性とズレ、強度を意識してみる。うおーこれがアート!楽しいかも!今日そんな朝でした。

2024/04/08

しゅん

閉鎖した環境で厳しい修練を経なければ得られない能力とステータスとして、今の「学問」はある。しかし、そうした学問が、多くの人の生活と繋がっていることを示す仕事は多くない。哲学者は生活に役立つ入門書を書かないし、入門書の執筆者は学問的修練を果たさないまま書いてしまう。千葉雅也の入門書三部作は、そのエアーポケットを埋めるように書かれた。「センス」をめぐって書かれた本書は、生活と芸術にまたがる「フォルマリズム」のすすめであり、精神分析と生物学から人間の本質を仮定する人間学の書である。

2024/04/08

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