夜明けのすべて
「夜明けのすべて」のおすすめレビュー
PMSでイライラを抑えられない彼女。パニック障害の彼――人生は想像より厳しいけど、光もある。瀬尾まいこ『夜明けのすべて』
『夜明けのすべて』(瀬尾まいこ/文藝春秋)
PMS――月経前症候群。男性にはいまいち想像しづらいうえに、女性同士でも症状の軽重に差があるため、つらさを理解してもらいづらい。ねむい、だるい、イライラする、といった、言葉にすればただの怠惰に聞こえるような症状が多いせいもあるだろう。だからこそ、何をやっても制御がきかないそれらに何十年もつきあっていかなきゃいけない人たちの苦しみはいかばかりか。
瀬尾まいこさんが本屋大賞受賞後第一作として上梓した『夜明けのすべて』(文藝春秋)の主人公、藤沢さん(28歳)も、10代のころから重度のPMSに悩まされているひとりだ。
藤沢さんの場合、生理前になると、些細なことにも歯止めのきかない怒りがこみあげる。同僚の山添くん(25歳)が炭酸飲料のペットボトルの蓋をあける音が急に気に障ったように、降ってわいたようなイライラを、相手に徹底的にぶつけて当たり散らすまでおさまらないのだ。しかも周期は予測しづらく、なるときには予感もない。社会人にとっては致命的である。
できる対策は全部とった。病院には通っているし、漢方やサプリを飲み、…
2020/11/8
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夜明けのすべて / 感想・レビュー
starbro
瀬尾 まいこ、3作目です。水鈴社創立初の単行本とのこと、どおりで初めての出版社の本でした。本書は、本屋大賞受賞後第一作、PMS×パニック障害×Queenの優しい物語でした。著者もパニック障害を発症したことがあるようです。物語は、夜明け前で終了したので、続編もありそうです。 https://ddnavi.com/review/693424/a/
2020/11/14
海猫
月に一度のPMS(月経前症候群)でイライラが抑えられない藤沢美紗と、パニック障害に苦しむ山添孝俊。それぞれ特異な持病を抱えた男女の関係性を描く長編小説。ふとした機会からお互いを理解しようとし、支え合おうとする二人の姿には温かい気持ちになる。恋愛に発展するところまで持っていかないバランスがとても良いと、思います。「ボヘミアン・ラプソディ」のサントラで一緒に盛り上がるところが最高だった。二人が働く栗田金属がなかなか理想の職場。激しいドラマ性はなくても、人の立場になって優しくするって素敵だね。和んで読める一冊。
2021/02/04
うっちー
ホントに瀬尾さんの作品はいい人しか登場しません
2020/11/06
bunmei
瀬尾作品は、人生の行先に戸惑っている人に、新たな道への第一歩を後押ししてくれる。今回の主人公はパニック障害で悩む男性とPMS・月経前症候群の女性の2人。パニック障害は、自分も仕事柄、そうした症状の子供を知ってましたが、PMSは初めて聞いた病気。自分ではどうにもならない突然の不快感や感情の高ぶりに、周りからはそうした異変を理解されず、奇異に観られて誤解を招く。そうならない為に、自分の気持ちを押し殺して、過ごす苦しさが伝わってくる。最後に自ら開いた希望の光、2人のこれからの人生に、大きなエールを送りたい。
2020/12/21
tetsubun1000mg
突然怒り出すPMS症候群、新入社員のパニック障害と瀬尾まいこさんは路線を変えたのかと思ってしまいました。 世話好きでマイペースの藤沢さんが100均でハサミと床屋セットを買ってパニック障害の山添君のアパートに行って「髪を切りましょう」と言ってからのシーンは涙が出るほど笑ってしまいました。(自分の部屋で読んでいたから良かったけど) それから二人の良い関係が続いていくが自然とPMSとパニック障害を和らげていくようになり少しづつ前向きな気持ちが生まれてくる。 あったかい気持ちになる大人向けの童話のような本でした。
2020/12/09
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