ツミデミック
「ツミデミック」のおすすめレビュー
罪の感染拡大を一冊にまとめた『ツミデミック』。一穂ミチの描く“犯罪小説集”での「正しさ」とは?
『ツミデミック』(一穂ミチ/光文社)
先の見えない禍にのまれ、その中で揉まれるうち、私たちは多分に狂わされた。真面目に暮らしてきたはずなのに、今はこのざま。人生という時間が狂わされたのはもちろんだが、もがき苦しめられ続けるなかで、価値観だって滅茶苦茶だ。特に思うのは、「正しさとは何か」ということ。おかしくなってしまった世界の中では、もうなりふり構っていられない。自分の中の正しい道を貫き通さねばならない。そんなことを思う人も少なくないのではないか。ときにそれが、人の道から外れていたとしても。
短編小説集『ツミデミック』(一穂ミチ/光文社)を読んでいると、そんな禍にのまれた人たちの息遣いを、そして、その人たちが犯す罪をすぐそばに感じる。作者は、一穂ミチさん。一穂さんといえば、『スモールワールズ』や『光のとこにいてね』で、直木賞や本屋大賞など多くの文学賞にノミネートされたことが記憶に新しいが、本作もこれから大きな話題を呼ぶことは疑いようがない。身に降りかかった禍の中でどう生きればいいのか。この“犯罪小説集”に収められた6篇の短編は、ほっこりさせられるも…
2023/12/22
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ツミデミック / 感想・レビュー
starbro
一穂 ミチ、4作目です。著者の新境地でしょうか、「罪」+「パンデミック」のミステリ短編集、オススメは「特別縁故者」&「さざなみドライブ」となります。 https://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334101398 本書で、本年は読了、読み納めです。
2023/12/31
さてさて
『マスクを求める人々が薬局の前に列をなし、転売が横行…今となっては「馬鹿馬鹿しい」のひと言に尽きるが、あの頃は誰もが切実だったのだ』。コロナ禍を背景に、それでも止まらない”犯罪”の数々を描き出したこの作品。そこには、まさしく「ツミデミック」な物語が描かれていました。コロナ禍の始まりから終わりまでを一冊に描いていくこの作品。そんな中にメジャーどころな”犯罪”が重なってもいくこの作品。“稀代のストーリーテラーによる心揺さぶる全6話”という紹介が伊達ではない、ぐいぐい読ませる物語が詰まった素晴らしい作品でした。
2023/11/26
R
嫌な汗をかいてしまいそうな短編集だった。後味が最高に悪いお話もあれば、なんとなし救われたようなものもあり、いずれも人間の闇寄りの隙間、魔が差したに近い、うしろめたさをぐいぐいついてくる感じで、読まされるんだが息苦しいという読書体験になった。小説的な小道具が最新令和のそれなんだが、扱っているテーマのようなものは普遍的で親近感というか、身に覚えがあるものだから、今もって生きている以上、こういう罪としたくないものがすり寄ってくる可能性があると思うと恐ろしい。SF的だが、ホラーだった。
2024/01/04
hirokun
★4 6作の短編集であるが、作品はどれも違った味わいであり、なんとも表現できないが不思議な読後感が感じられる作品だった。一穂さんの作品は2冊目だが、このような短編が得意な作家さんなのだろうか?どの作品も、コロナ禍の状況をうまく風刺を織り込みながら表現しているのが印象に残った。
2023/12/17
うっちー
これもヴァラエティに富んだ短編集で面白かった
2023/12/22
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