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紋章と時間: 諏訪哲史文学芸術論集

紋章と時間: 諏訪哲史文学芸術論集

紋章と時間: 諏訪哲史文学芸術論集

作家
諏訪哲史
出版社
国書刊行会
発売日
2018-03-27
ISBN
9784336062499
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ジャンル

紋章と時間: 諏訪哲史文学芸術論集 / 感想・レビュー

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藤月はな(灯れ松明の火)

恥ずかしながら諏訪氏の作品は一冊しか、読んでいない。しかし、書評集である『偏愛蔵書室』が大好きだ。その本には言葉の韻律や響き、軽重、関係性などを一つ一つ、噛み締め、真摯に向き合い、大衆に媚びない姿勢が鮮烈に印象に残ったからだ。だからこそ、凛然とした作者の言葉や芸術への評論を余すことなく、収めたこの本を読める幸福を噛み締めている。同時に作者の博識と好奇心の広さ、自分を貫く姿、自分がしたいと思ったことにはすぐにアプローチを掛けるアグレッシブな姿勢、特に言葉や小説への向き合い方に頭が下がるしかない。

2018/06/09

燃えつきた棒

2007年〜17までの11年間に書いた文学・音楽・美術などに関する論考、エッセー、講演録。 この人の文章が好きだ。 まだ、小説の方は読んでさえいないのだが。 最初に読んだ『偏愛蔵書室』で、その異様に絢爛豪華な文学的感性に圧倒されてしまった。 その「見者」の自負に満ちた独断と病的なまでの偏愛は、まだ、文学に力があった頃の作家たちを彷彿とさせる。 人から「時代錯誤の小説狂」と呼ばれ、また、本人自ら《僕は時代錯誤な芸術至上主義者だ。》と本書のあとがきに書いている。 現代日本においては間違いなく希少種だろう。/

2021/07/31

zirou1984

著者が以前出版した書評集『偏愛蔵書室』は文学の魔導書とでも言うべき圧巻の完成度を誇っていたが、対談・エッセイを纏めた本作はさながら魔術の理論書であり、一層に圧倒させられてしまった。冒頭の書き下ろし「言語芸術論」にて展開される読みの可能性、言語芸術が連れてゆくイマージュとしての時間が持つ豊かさは言うに及ばず、他のエッセイでも言葉の端々から知性と博識さが溢れ出しており、読書という孤独な営みがこんなにも背筋を正してくれるのかと打ちのめしてくれる。ハードカバー500頁という大著だが、人生観を掛けて読むべき一冊。

2020/05/01

スミス市松

音楽と美術の精神からの文学の誕生を願い謳う「言語芸術論」は必読だが、それ以上に数々の論考を読みながら考えていたのは、ひとつの文学作品と相対したときのたたずまいであった。大勢の他者と接触しアレルギーさえ起こしつつ単独性を高めて一人の真の孤独者としてあること。書かれた言葉の表面に立ち作品への跳躍を試みること。つぶさに観察すると同時にこの眼差しが作品の反映であると自覚すること。著者ほどではないが、この数カ月のあいだ気候も言語も違う各地を移動し自らを「シャッフル」したこともあって、明鏡止水の心持ちで読みふけった。

2018/04/10

vaudou

音と文字と意味。言語芸術として文学を定義しつつ、あらゆる劃定の檻から言葉を解き放とうとする、孤独なる発話者の精華たる「言語芸術論」は云うに及ばず、軽重、長短を問わず掲載された批評もまた、この上なく審美的で、文体から何から自己言及性の眼が全てのセンテンスを被い、全ての文字までを律している。文学史の燦然たる文豪たちをも同じ言葉の遣い手として引き比べ、筆先は次の百年をも射程に入れる。これは当代の書き手の誰もが畏れてやらないことであろう。

2018/04/30

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