たゆたえども沈まず (幻冬舎文庫)
たゆたえども沈まず (幻冬舎文庫) / 感想・レビュー
hit4papa
フィンセント・ファン・ゴッホ、テオ兄弟と、パリの日本人美術商の物語です。美し過ぎる兄弟愛と友情がつづられていますが、そこはフィクションということで。本作品と同時代の画家たちが主役の短編集『ジヴェルニーの食卓』も併せて読むと、絵画史におけるこの時代の位置付けについて理解が進みます。本作品は、ゴッホの生涯に、林忠正を絡ませて、よりドラマチックに仕上がっています。実際に、ゴッホ兄弟と林に交流があった事実は見つからないそうですが、著者の想像としてもリアリティを強く感じるでしょう。タイトルの意味が印象的です。
2020/11/02
SJW
1890年頃のパリ美術界において浮世絵を売っていた林忠正と重吉と、無名画家ゴッホと画商であるその弟テオ達との交流とゴッホの活動と苦悩について、フィクションと史実を交えて描かれる物語。今までゴッホについては作品を通してしか触れ合えなかったが、この作品を通して悩み苦しむゴッホ兄弟を目の当たりにして、ゴッホの見方が変わってしまった。今後、ゴッホの作品を鑑賞すると受ける印象がどのように変わるのか楽しみ。アルルに2回も訪れたが、ゴッホゆかりの場所を訪れなかったのはとても後悔した。
2020/04/25
enana
「考え込んでも、どうにもならないことだってあるさ。どんな嵐がやって来ても、やがて通り過ぎる。それが自然の摂理というものだ。強い風に身を任せて揺れていればいいのさ。そうすれば決して沈まない。だろう?」
2020/07/01
ふう
初めて見たゴッホの絵は、高校の教科書に載っていた「アルルの跳ね橋」でした。明るい光や色に惹かれましたが、その後に出合うゴッホの作品や人となりははじめの印象とはずいぶん違うものでした。フィクションですがこの物語を読むと、ゴッホやテオ、二人の日本人がまるで目の前にいるかのように惹きこまれ、運命のいたずらとも思えるような最後にうなだれてしまいました。こんなに愛される画家なのに、生きている間にどれだけ愛を感じていたのでしょう。物語の中に入っていけるなら伝えたい。ゴッホ、あなたの絵はたくさんの人に愛されていると。
2020/05/25
サンダーバード(読メ野鳥の会怪鳥)
たゆたえども沈まず(Fluctuat nec mergitur)これはパリ市の紋章に存在する標語なのだそうだ。炎の画家と言われるゴッホと彼の最大の理解者であった弟テオ。日本の美術をフランスに紹介した美術商林忠正。そこに加納重吉という架空の人物を配して描くゴッホの生涯。もがき苦しみながらも新しい芸術を生み出そうとするゴッホの苦悩。それを献身的に支えるテオの姿。史実に少しのifを加えてフィクションでありながらも、こうした手法で物語を描くのは上手いなぁと思う。★★★★
2020/04/20
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