ある漢の生涯 安藤昇伝 (幻冬舎文庫)
ある漢の生涯 安藤昇伝 (幻冬舎文庫) / 感想・レビュー
あすなろ
過日お亡くなりになった慎太郎氏の最期に近い作品。僕は晩年、慎太郎氏が田中角栄やこの安藤昇を描いた事自体を不思議に思う面がある。人が好きであるというのは慎太郎氏の特徴として大いに分かるのではあるが。政治の世界から足を洗い、作家人生の先が見え始め、実はアンチテーゼとしながらも長年惹かれていたものを描きたかったということなのか。安藤昇につき、こう氏は記している。人間の本性の裏側に暴力という禁忌なエネルギーへの渇仰が在るに違いない。体の内にある得体の知れぬ共感がある、と。
2022/04/30
Shoji
昭和ヤクザの安藤昇さんの生涯を小説仕立てにしています。かの時代は、政治家も芸能人もスポーツ選手も会社の社長さんもヤクザと表裏一体な部分があって、世の中の均衡を保っていた部分があったんだろな。そんなこと思いつつ読み終えました。「ああ昭和だな」これが感想です。
2022/06/06
はかり
石原慎太郎の最後の方の作品らしい。田中角栄の本があったと思ったが、安藤昇のことも書いていたとは。関西では田岡満の方が馴染みが深いが関東では安藤昇なんだろう。漢稼業でのしてきた生涯は何とも痛快な面がある。しかも長命だったとは恐れ入る。やりたいだけ喧嘩して好き放題に生きてきた漢はある意味うらやましい。
2022/05/13
虹
石原慎太郎が実在した人物を題材にした作品を読むのは、田中角栄を題材にした「天才」以来の2作目で、彼の作品を読むのも2作目。今回は戦後間もない東京渋谷で名を馳せた、安藤昇を題材にし、彼の生涯を描いた作品。今で言うなら、半グレからヤクザの世界へと足を踏み入れ、横井英樹襲撃事件で世間を騒がせた人が題材。内容はともかく、本書を読んで感じるのは、慎太郎氏の「戦後感」とでも言うか、終戦後から復興、成長、繁栄と進んだ日本社会と日本人に対する、彼の視点。慎太郎かぁ・・・嫌いじゃない。彼もまた「漢」であったと思うし。
2022/04/15
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