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しくじり家族

しくじり家族

しくじり家族

作家
五十嵐大
出版社
CCCメディアハウス
発売日
2020-10-31
ISBN
9784484202280
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「知らない世界を知ることは生きやすくなること」ろうの両親を持った子が綴る一人称の物語【読書日記38冊目】

2021年2月某日

 つい最近まで「子ども」「高齢者」「動物」が苦手だった。

 怖かったのだ。

 子どもやお年寄り、動物が苦手だと言うと、冷たい人だと思われそうだ。彼らに相対するときには必ず最大限のやさしさを持って接しなければいけない気がする。

 それは、“彼ら”のことを「弱くて守らなければいけない存在」だとどこかで思っているからで、そうやって無意識のうちに他人を“見下している”自分に向き合わなければいけなくなる。だから「子ども」「高齢者」「動物」とは積極的には関わりたくなかった。

 この「弱くて守らなければいけない存在」には、「障害者」も含まれるかもしれない。

 ハンデがあることに対して、どう向き合えばいいのかわからない。「弱くて守らなければいけない存在」として腫れ物に触るような対応は失礼な気がする。一方で、障害のない人と全く同じことを求め、サポートをせずにいるのも違う気がする。

 自分の一挙一動が“正しい”かわからないから、間違っていると指摘されたり、相手を傷つけたりするリスクが高くなるところにできれば首を突っ込みたくないという気持ちもある。

 しかし、“…

2021/3/1

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大ゲンカの末、包丁を畳に突き刺した“粗暴なヤクザ”とのコミュニケーション方法/『しくじり家族』⑥

葬儀はカオス。耳が聴こえない、父と母。宗教にハマる、祖母。暴力的な、祖父。ややこしい家族との関係が愛しくなる。不器用な一家の再構築エッセイ。

『しくじり家族』(五十嵐大/CCCメディアハウス)

粗暴なヤクザ者

 祖父とのコミュニケーション方法がわからない。

 これは祖父が危篤になってしまったからではなく、昔からそうだった。

 若い頃にヤクザをしていた祖父は、とても気性が荒く、孫のぼくに対しても暴言を吐いたり、ときには物を投げつけたりするような人だった。

 小学生の頃、祖父への反発心を募らせていたぼくは、一度、泥酔した彼と大喧嘩をしたことがある。理由はもう覚えていないけれど、些細なことだったと思う。

 火がついてしまった祖父は、台所から包丁を持ち出してきた。殺気だった目とともに、それをぼくに向ける。でも、ぼくは怯みつつも睨み返した。

 すると、慌てた父が、ぼくと祖父の間に入った。母や祖母は「やめて!」と叫んでいた。

 どれくらい睨み合っていただろうか。祖父は包丁を畳に突き刺すと、その場で胡座をかいた。そして、大声をあげた。

「俺を馬鹿にすんじゃねぇぞ!」

 母になだめら…

2020/12/4

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しくじり家族 / 感想・レビュー

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鱒子

耳が聞こえない両親。宗教にハマっている祖母。元ヤクザの暴力的な祖父。「ふつう」を求めて東京で働き始めたぼくは、伯母からの突然の電話により仙台に帰省することに……。キャラの濃い小説だなぁと思っていたら、あとがきでエッセイだと知り、おどろきました。愛を感じるあたたかい本でした。読みやすいレイアウトで一気読み。かなり良かった!!

2020/11/27

kei302

ライターの五十嵐大さんが自分の家族を綴ったエッセイ。 帯に記された家族構成「耳が聞こえない父と母/宗教にハマる祖母/暴力的な(元ヤクザの)祖父」。 暗い内容ではない。表紙の穏やかなイメージどおり、大切に育てられたことが伝わってくる。 お母さんはかわいそうな人じゃない、その場に存在しないような扱いをするな。五十嵐さんのモヤモヤ。 家族や親族への不満も現れるが、そこから、いい思い出やその人のよい部分も思い出し、感謝の気持ちを持つ五十嵐さんの生き方や考え方がいいな。

2021/01/07

kum

耳の聴こえない両親、元ヤクザの祖父、宗教信者の祖母という"ふつうではない"家族の元で育った著者。幼い頃からかわいそうだと言われたり差別的な目で見られたり、当たり前だけれどそういうことがとても嫌だったと言う。祖父が亡くなったことをきっかけに仙台に帰省し、そこから東京に戻るまでの数日間の実話は、ふつうでないのにとても"ふつう"の家族の面倒くささと葛藤と、そして愛に溢れている。両親の愛情を深く感じ、ふつうではないことを自分自身が「肯定したい」と思えるまでの道のりが、じんわりと伝わってくる1冊だった。

2022/03/09

ドシル

とても読みやすいエッセイ。一気に読める。 著者のデビュー作。 五十嵐大さんがコーダである..聞こえない親を持つ聞こえる子ども..だと言うことは知っていたし、ライターとしての作品は雑誌などで読んだことがあったが、ご家族のことは初めて知った。 色々複雑な想いを経験して、今があるんだろうなとしみじみ思う。 サラッとしか書かれていないが障害者差別や無理解という社会のバリアが、書かれていて考えさせられる。 ご両親が旧優生保護法の被害に合わなくて良かったなと思った。

2020/11/10

アコ

自伝的エッセイ。耳が聴こえない両親、元ヤクザな祖父、新興宗教にハマる祖母。そんな'“普通ではない”家庭で育った著者。祖父の葬儀で久しぶりに帰省して直面する「血の繋がり」のややこしさがリアル。でもこれって'“普通”の家庭にもありそう。そういう意味でも登場人物の誰も厄介だけど、しくじってはいない。各々の生き様が他者目線ではしくじっているにすぎないのかも?と。んー〈家族〉そして〈普通〉の在りかたの答えなんてどこにもなさそう。だからいつの世でも悩むんだろうけど。/軽妙なタッチで悲壮感がなく読みやすい。

2021/06/04

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