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破滅の王 (双葉文庫)

破滅の王 (双葉文庫)

破滅の王 (双葉文庫)

作家
上田早夕里
出版社
双葉社
発売日
2019-11-13
ISBN
9784575522815
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「破滅の王 (双葉文庫)」のおすすめレビュー

世界を破滅に追い込む治療薬のない細菌兵器、暗号名は“キング”――コロナパンデミックの今こそ読むべき歴史サスペンス大作!

『破滅の王』(上田早夕里/双葉文庫)

 瞬く間に地球上を覆いつくしていった新型コロナウイルス。緊急事態宣言下にある、先の見えない日々は、苛立ちや孤独、危うい想像を呼びがちだ。ここ数か月間、耳にせぬ日はない“細菌”というワードから、ふと脳裏に浮かんでくるのは、第2次世界大戦期、生物兵器の開発を進めていた日本軍の秘密部隊、関東軍防疫給水部本部、通称731部隊にまつわる史実だ。

 直木賞候補作ともなった『破滅の王』(上田早夕里/双葉文庫)では、捕虜を人体実験に使い、“死の実験場”と呼ばれた満州の研究所、そしてその中心人物となった帝国陸軍軍医中将・石井四郎の名が冒頭で提示される。そうした史実のパーツを巧みに取り込んだストーリーは、ひとりの日本人科学者の狂気が特殊な細菌兵器を生み出したことによって、怒涛の展開を見せていく。

 ドイツでベルリン・オリンピックが開催され、ナチスが華々しく政権の誇示をした1936年、上海自然科学研究所に細菌学科の研究員として赴任した宮本敏明は、彼の地で防疫活動を担う。満州事変以降、抗日運動が激化の一途を辿る大陸であったが、同研究所では…

2020/5/9

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破滅の王 (双葉文庫) / 感想・レビュー

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サンダーバード@読メ野鳥の会・怪鳥

1943年の上海。細菌学者の宮本に密かに依頼された調査は、「キング」と呼ばれる高致死性で治療法が存在しない病原菌の謎。このキングを巡る日中欧米各国の陰謀。これまで異形の生物、独自の世界を描く事の多かった上田さんだが、今回はちょっと志向を変えたストーリー。SFというよりもミステリー、スリラーの要素が強いかな?でも最後まで続きが気になり楽しめました。貧者の核兵器と呼ばれる細菌兵器、使えば敵味方の区別なく人類を破滅に陥れる。なんと人類は愚かな生き物なのだろうか。★★★★

2020/12/19

オーウェン

満州事変の折に細菌研究のため上海に呼ばれた宮本。 激変する上海事情とは知らずにやってくるが、そこで生み出された新種の菌R2vの存在を知る。 細菌を巡るサスペンスだが、灰塚から監視の身になったあたりから緊張が増していく。 爆撃や暗殺の間の手。 敵味方のような関係から変わる宮本と灰塚の関係性。 そしてR2vの恐怖。 全ては終戦とともに収まっていくのも偶然ではないだろう。

2024/03/26

hrmt

上田作品2作目。満洲事変後の大陸で研究されていた細菌兵器が、治療薬も開発されないままばら撒かれようとする危機に、上海の研究所で働く細菌学者が創薬の為に巻き込まれていく。治療薬の開発は同時に細菌兵器を完全なものとし、それこそが脅威となる中で、科学者としてどう在るべきか。科学の進歩は学問の追求や平和利用ならば素晴らしい事ですが、結局どう活用するかは人間なのだと思い出させてくれます。細菌や原爆その他にしろ、科学者たちは本当にそんな結果を望んだのでしょうか。そうならば科学の進歩は私達に一体何を齎すのでしょう。

2020/01/06

ピロ麻呂

2018年の直木賞候補作品☆第二次世界大戦の最中、強力な細菌兵器となりうる「バクテリアを食うバクテリア」通称キングの争奪戦を描く。軍人たちは兵器として使用するため、科学者たちはパンデミックを組織運営するためワクチンの製造を模索する。ノンフィクションと思えるほどのリアリティ。読了に時間がかかったけど、おもしろかった。

2019/12/24

Shun

長編は初読の作家。先の大戦時、日本の満州国建設頃から始まる架空の細菌兵器計画に絡む国家間のグレートゲームが繰り広げられる。とある日本人科学者は軍国化の波に呑まれ、研究中の極めて危険な性質の細菌に自らの絶望を込め殺戮兵器となす。これは論文としてまとめられ、それを分割した部分が覇権争い中の各国大使館へと届けられた。この恐るべき細菌に対して、人類を破滅から救うには完全な論文が必要となるが、人類共通の敵を前にしても各国は戦後を見据えた諜報戦を行い続ける。まるで現在のコロナ後を見据えた対立を予見したかのような内容。

2021/03/21

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