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世界で最後の花 (一般書)

世界で最後の花 (一般書)

世界で最後の花 (一般書)

作家
ジェームズ・サーバー
村上春樹
出版社
ポプラ社
発売日
2023-06-14
ISBN
9784591178102
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「世界で最後の花 (一般書)」のおすすめレビュー

「なぜ戦争はなくならない?」──繰り返される問いに向き合う世界的ロングセラーを、村上春樹の新訳で読む『世界で最後の花』

『世界で最後の花』(ジェームズ・サーバー:著、村上春樹:翻訳/ポプラ社)

 世界がコロナ禍に見舞われはじめた2020年の春、長く関西に住んでいた人に、「東日本大震災のあと、関東の人たちはどんなふうに日常を取り戻したの?」と訊かれてハッとした。そういえば、東日本大震災の直後、東京に住んでいた私は、被災地の状況に心を痛め、電気を無駄遣いしないよう心がけたり、防災グッズを揃えたりと、自分にできることをしようとしていた。しかし、それから数年が経っただけで、そういった気持ちを忘れかけてはいなかったか。

 同じような心持ちになったのが、『世界で最後の花』(ジェームズ・サーバー:著、村上春樹:翻訳/ポプラ社)という絵本を読んだときのことだ。

「みなさんもごぞんじのように、第十二次世界大戦があり」──こんな書き出しからはじまる本作品は、シンプルで、洗練されていて、どこかユーモアを感じるイラストとともに展開してゆく。

 第十二次世界大戦によって文明は破壊され、町や村、都市は地上から消え去った。森も林も、本も絵画も音楽も地上からなくなって、生き残った将軍たちも、最後の…

2023/6/14

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平和への祈り(2023年7月 新刊&おすすめ絵本)

2023年8月15日、日本は78回目の終戦記念日をむかえます。 長い月日を経て、戦争の爪痕を感じることの少ない生活を送る私たち。一方で世界に目を向けると、今もなお戦争の恐怖や苦しみに晒されている多くの人がいます。

戦争が残すものは、傷以外何もないことを、78年前、日本人は身をもって知りました。今、当たり前のように感じる平和な毎日は、「平和を守る」「戦争を二度と起こさない」という先人たちからつながる強い決意のもとで成り立っています。日本国内で戦争を体験した方から直接話を聞く機会が少しずつ減っていく中、戦争と平和について子どもたちに語り継いでいく役割を果たすもの。そのひとつが、本です。

過去のできごとから目を逸らさず、二度と戦争を起こさないために。 世界中全ての人々に、争いのない穏やかな毎日が保障されるように。 平和への祈りが込められた本を、お子さんと一緒に手に取ってみてください。

平和の象徴・折り鶴が世界中で折られるようになったのは……原爆症で亡くなった一人の少女の悲しみと願い『おりづるの旅』

おりづるの旅

作:うみの しほ 絵:狩野 富貴子 出版社か…

2023/7/22

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世界で最後の花 (一般書) / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

作者(文と絵)のジャームズ・サーバーは紆余曲折の後、雑誌「ニューヨーカー」の編集者・執筆者に。絵は極端なまでにシンプルな線だけで描かれているが、これは彼の視力が極端に弱かったためであるらしい。ところが、それが独特の強い線画となって逆に効を奏する結果に。本書は第2次大戦の始まった1939年に書かれている。近未来SFの、いわばディストピア物語ではあるのだが、最後はかすかな希望で終わる。サーバーは、人間の愚かな行為の繰り返しにあきれながらも、次世代には望みを捨ててはいない。次代を娘のローズマリーに託して。

2023/11/08

starbro

私はハルキストでも村上主義者でもありませんが、村上春樹の新作をコンスタントに読んでいます。村上春樹の新訳で、世界で読み継がれる名著の復刊(原書は第二次世界大戦直後に出版)、愚かな人類の戦争滅亡ループ絵本、未来のアダムとイブでした。LOVE&☮ https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000629.000031579.html

2023/06/12

旅するランナー

訳者村上春樹さんがあとがきに書いている通り、本作品は1939年11月に刊行されました。この年の9月に、ナチスドイツ軍がポーランドに侵攻し、第二次世界大戦が勃発しているタイミングです。戦争を懲りずに続ける人類の愚かしさを描きながら、世界の平和を切に願っているこの絵本。ちょっと絶望的な気分にもなりますが、世界で最後の最初の花であることが微かな希望です。懲りない悪魔のプーさんにも手に取ってもらいたいです。

2023/10/28

buchipanda3

人と戦争を描いた"絵のついた寓話"。絵も文章もシンプルだが、それ故に込められたものが伝わってきやすい。戦争によって自然も芸術も愛すらも失ってみじめな姿になった人間たち。そんな人間から犬たちが離れてしまう場面が印象に残った(犬たちはかわいい)。著者は犬好きだったらしい。彼にとってそうであるように戦争は大事なものを失わせてしまう。それを分かっていても同じことが繰り返される。いつまでも最後の花が、最後の希望が残ってくれるとは限らないことを忘れないでいようと思う。犬たちが離れてしまう人間にならないように。

2023/07/01

新しい形の戦争を考える本だなぁと感じました。人間は豊かになればなるほど身勝手になるのか。何度同じ歴史を繰り返しても戦争は起こるのか。年月かけて築いた文明もいともあっさり破壊する。最初はただ、美しい花が枯れないように守ることから始まったことだったのにね。本当に愚かだと思います。

2023/08/06

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