「何があっても人のせい」クロちゃんのメンタル管理術。アンチコメントにも「僕は絶対悪くない!」と立ち向かえるハートの作りかた《インタビュー》

エンタメ

公開日:2023/3/4

クロちゃん

 人気テレビ番組『水曜日のダウンタウン』で息をするように嘘をつく姿が暴かれ、国民的ヒールとなった「安田大サーカス」のクロちゃん。普通の人だったらあっという間に病みそうだが、クロちゃんはバッシングなんてどこ吹く風。こんなに叩かれているのになぜ平然としているのか、鋼のメンタルに驚嘆する人も多いだろう。

 だが、本人によればクロちゃんは「ガラスのメンタル」。ダメージを正面から食らわないよう、回避する術を身につけているだけだという。そんなクロちゃんのメンタル管理術を明かすのが『日本中から嫌われている僕が、絶対に病まない理由 今すぐ真似できる! クロちゃん流モンスターメンタル術30』(徳間書店)だ。発売直後から話題沸騰、わずか1週間で重版が決定した本書について、クロちゃんに話を伺った。

(取材・文=野本由起 撮影=島本絵梨佳)

advertisement

先生に叱られたら「あ、この先生、スキルが低いんだな」と考える

日本中から嫌われている僕が、絶対に病まない理由 今すぐ真似できる! クロちゃん流モンスターメンタル術30
日本中から嫌われている僕が、絶対に病まない理由 今すぐ真似できる! クロちゃん流モンスターメンタル術30』(クロちゃん/徳間書店)

──1月28日に著書が発売されましたが、現時点での反響はいかがですか。

クロちゃん:賛否両論ですね。好意的な意見もいただきましたけど、「鍋敷きにする」というコメントもあって。あと、僕も知らなかったんですけど、本の帯には僕の写真が入ってるんですが、帯を外した表紙にはないんですよ。「帯を取れば外でも読める」ってTwitterに書いてる人もいて、「いや、俺の写真がついてたら外じゃ読めないんかい!」って思いました。

 そもそも本の題名もひどくないですか? 僕は編集さんから「『僕が絶対に病まない理由』ってタイトルはどうでしょう」って言われていたんです。でも刷り上がってきたら、「日本中から嫌われている」が付け加えられてて、「聞いてないんだけど!」ってなりました。みんなが「キャッチーだね」って言ってくれるから文句言えなくなっちゃいましたけど、ひどくないですか!?

──この本では、クロちゃんが体得したメンタル管理術が語られています。そもそもクロちゃんは「ガラスのメンタル」だそうですが、バッシングからどうやって心を守っているのでしょう。

クロちゃん:僕は小さい頃から声が女の子より高かったし、お化けが嫌いだし、虫も怖いし、偏食だし、友達と言い争いになったら泣いちゃうような子だったんです。誰よりも弱くて、心はいつもズタズタ。このままじゃダメだって、どこかで思ったんでしょうね。つらいことを受け止めきれなくなったから、人のせいにするようになったんです。

 親や先生は、よく「人のせいにしちゃダメだよ」って言いますけど、僕はいいことだと思うんですよ。先生に強く叱られて「もう学校に行きたくない。このままだと心が壊れちゃう」ってなったら、先生のせいにすればいい。「あ、この先生は語彙力がないから、僕に対してこんな怒り方をするんだな。ああ、スキルが低い先生なんだな」と思うと、自分がダメージを食らわずにすむんですよね。

 それができるようになったら、次のステップ。そこから「この先生、教えるのが下手だから、俺が予習していってやろうかな」って考えれば、自分をプラスに持っていくことができるんです。先生に怒られて「もう勉強したくない」と落ち込んでいる時は、100%、120%の力を出さないとやる気になれないじゃないですか。でも「この先生アホだから、俺がやってやるか」と思えば、50%の力でやる気になります。すっごく楽だったんですよね。

──ただ人のせいにするだけではなく、そこから「仕方ないからそいつらに合わせてやるか」と行動を起こすのがいいですね。

クロちゃん:人のせいにするだけだと、そこで終わりですよね。せっかくなら、もっとプラスになったほうがいいじゃないですか。僕、マイナスのままで終わるのが嫌なんです。絶対損はしたくない。だから「得するためにはどうしよう」という発想なんです。

SNSでは誰もが加害者にも被害者にもなる

クロちゃん

──今、多くの方々がストレスを抱えて生きていますよね。「真面目すぎるな」「もっとこう損しない生き方もあるのにな」と思うのは、どういう時でしょう。

クロちゃん:SNSを使っている時に思いますね。SNSで何か発信していると、不特定多数の人に「面白くない」「かわいくない」って言われることがあるじゃないですか。応援してくれる人たちもたくさんいるのに、たったひとりの声にショックを受けちゃう。そんなことで傷ついてSNSを閉じちゃうなんて、もったいないですよね。例えば「かわいくない」って言われたら、「写真のフィルター外してみました」って次の展開を試してみればいいと思います。

 今の時代、SNSを使わないなんてほぼありえません。SNSに携わっている限りは、誰もが被害者にも加害者にもなる可能性があるんですよね。だったら、どうすればどっちにもならずにすむか、もし被害者になった時にどう対応するのか考えていかないと、世の中に呑み込まれてしまうと思うんです。

──クロちゃんは炎上経験もありますが、そのあたりのバランス感覚に優れていますよね。

クロちゃん:この本にも書きましたけど、「ヤクルトか新幹線か」という指針があるんです。ある時、ヤクルトをお風呂で飲もうとして、容器を浴槽に落としちゃったんですね。それを写真に撮ってTwitterにあげたら「食品を粗末にするな!」って炎上して。蓋は開いてなかったからヤクルトが無駄になったわけじゃないけど、やっぱり飲食関係の人は気を悪くするかもしれないし、反省したほうがいいなと思いました。

 逆に、新幹線のシートを倒して寝ている写真をアップして、「マナー違反」と炎上した時は納得がいかなかったんです。後ろの座席には人が座っていなかったし、批判されるようなルール違反もしていませんでしたから。

 それ以来、僕はSNSに投稿する時、「この言葉はどうなんだろう。面白いけど、攻撃的だったり引っ掛かったりするところがないかな」って考えるようになったんです。それで、「新幹線のケースだな」と判断したらSNSに載せますし、「ヤクルトっぽいな」と思ったら載せないって決めてます。

──そういう基準で考えると炎上を避けることができそうですね。

クロちゃん:僕はそれでも炎上しますけどね。『水曜日のダウンタウン』で、「歩いて帰る」って言ったのにタクシーに乗ったとか、「ご飯はプロテインだけ」って言って米を食べてたって放送されたじゃないですか。被害者はいないのに、日本一炎上しましたから。

 だって、Twitterに「今日もジムに行ってトレーニングしました」「こんな素敵な花が咲いてました」って画像をアップするだけで、「そのジム、お前が臭いから行く人減るだろ」「うるせえ、お前が近くにいると花が枯れるだろう」なんてむちゃくちゃなことを言われますからね。もう意味がわかんない。

──そういうリプライが届いた時に、落ち込むことはないのでしょうか。

クロちゃん:僕はないですね。ただ、SNSを始めたばかりの人って、RPGでいうとレベル1じゃないですか。でも「お前、気持ち悪いな」ってコメントしてくる人たちって、レベル10とか20なんです。反射的に言い返しても、相手は「しめしめ」ってなるだけ。ブロックしても、新しいアカウントを作って攻撃がきますしね。だから、スルースキルを身につけて反応しないのが一番。この本を読んでもらうと、「この場合、どうするのが得なのかな」って深呼吸して考える余裕ができると思います。

 僕のフォロワーさんって、「おはよう。今日もクロちゃんにいろいろ言っていこうぜ」って僕に文句を言うのをみんなで楽しんでるんですよ。それを見ながら、僕はほのぼのしてるんですけど。ただ、たまにそのコミュニティの中で喧嘩が起きることがあるんですね。フォロワーさん同士が揉めて嫌な気持ちになって、SNSをやめちゃったら悲しいじゃないですか。だから「僕の悪口を言うのはいいけど、みんなで楽しくやってね」って言ったこともありました。僕としては、楽しい場を保ってほしいんですよね。

──最近は、悩んだり落ち込んだりすることはありませんか?

クロちゃん:切り替えが早いので、落ち込むことはあんまりないかな。でも、最近10年ぶりにリチっていう彼女ができたじゃないですか。すごい楽しいし幸せなんですけど、なぜか付き合ってから1カ月くらいずっと蕁麻疹が出てるんですよね。

──えっ!?

クロちゃん:僕とリチが一緒に寝る時は、僕が右、リチが左なんですね。たまたまだと思うんですけど、リチ側に蕁麻疹が出て。すぐ治るだろうと思ったら、もう1カ月くらいこの状態ですからね。体の両側に出るならわかるけど、リチ側だけ出てるから。おかしくないですか? そろそろ病院に行こうと思ってます。

人のせいにすれば、ストレス社会をポジティブに生き抜ける

クロちゃん

──この本には、クロちゃんの親友・高橋みなみさん、『水曜日のダウンタウン』演出の藤井健太郎さん、マネージャーの紀井英顕さんのインタビューも掲載されています。こちらを読んだ感想は?

クロちゃん:たかみなは、本当に僕のことをよく見てますよね。ただ「クロは努力家」って言ってたのは間違ってます。僕からすると、怒られないためにやってることだから別に努力じゃないから。

 藤井さんのインタビューは、めっちゃ怖かったから最後に読みました。「クロちゃんは変な人」って認識みたいですけど、それを素直に捉えていいのか、それともまた何か始まるのか怖くて。ただ、「クロちゃんの嘘には被害者がいない」っていうのは本当にそう。僕、ルールは意外と守るんですよ。5年くらい前から、バラエティ番組で「次に捕まるのはお前だ」って言われてましたけど、それをひな壇で笑ってたヤツらのほうが車で事故ったり、何股もかけたり、ペットボトル投げたりしてテレビからいなくなってますからね。僕は損したくないから、絶対そんなことしません。今は家の中に監視カメラをつけられてるし、外でも一般の人たちに盗撮されるし、全国民に見張られてますしね。それに、もしタクシーに乗った時にシートベルトをつけなかったら、ドッキリが仕掛けられていたとしてもオンエアできないじゃないですか。それは、ルールを破ったこっちのミスになりますから。

 だから僕は、絶対に法に触れること、ルールを破ることをしないんです。ルールを破れば目立つけど、それ相応のリスクも伴うから。ルールの中でどれだけ奥行きを使って遊ぶかが、すごく大事なんですよね。

──最後に、この本を読もうか迷っている人に向けてメッセージをお願いします。

クロちゃん:今ストレス社会で、心も体も疲れてる人が多いと思います。自分ひとりでストレスを受け止めようとすると、100%を超えて心が壊れちゃうんですよね。でも、人のせいにすれば、他の人に背負わせることができるから自分は疲れません。この本を読んで、なるべく人のせいにしながら、ポジティブに楽しくストレス社会を生き抜いてほしいですね。

あわせて読みたい