『コナン』青山剛昌インタビュー!「赤井一家全員がしっかり活躍する」『名探偵コナン 緋色の弾丸』公開延期。今の心境は?

マンガ・アニメ

2020/5/22

『ダ・ヴィンチ』6月号(KADOKAWA)

 5月7日に発売した雑誌『ダ・ヴィンチ』(KADOKAWA)の「名探偵コナン特集」で、マンガ『名探偵コナン』の作者・青山剛昌さんへの取材が行われたのは4月6日。新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、緊急事態宣言が発令される前日だった。17日より予定していた劇場版『名探偵コナン 緋色の弾丸』の公開延期を受け、青山さんは、なにを思うのか――今の心境をうかがったロングインタビューの一部を、WEBで特別公開します!

「本音を言うと、わりとはやい段階から延期にしたほうがいいんじゃないかなって思ってたんです。だってみんな、安心して観られるほうがいいでしょう? オレだって、今はマジで怖いもの。家で観られるようにするとか、みんなに届けるうまい方法は何かないかずっと考えていたんだけど、システム的に難しいし、やっぱり大画面で観てほしいしね。オレにできるのは、マンガを読んでいる間だけはリアルを忘れられるよう精いっぱい描くことだけだけど、表現の仕方も難しくなってきたのを感じていますよ。たとえば、合コンやパーティみたいなシーンは、今後は描くのに慎重になってしまうかもしれない」

 それは、外出の自粛が要請される現状において不謹慎に映るから、というわけではもちろんない。「ありえない」と思われないギリギリのラインを狙って描くのが面白い――昨年の『ダ・ヴィンチ』のコナン特集でそう語っていた青山さんにとって、現実はフィクションを構築するうえで無視できないファクターだからだ。

「人と集まってごはんを食べるという、これまではあたりまえだったことが、今はファンタジーになってしまうでしょう。この先、事態が収束したとして、海外との関係もどうなっているかわからない。『名探偵コナン』はアメリカやイギリスとの関わりも深いけど、簡単に行き来できない状態が続くとしたら、やっぱりどう描いていくべきかは悩みますよね。だからまあ、率直な今の気持ちをと聞かれたら、はやく“普通”に戻ってほしい。世の中のしくみとか、いろんなことが以前と同じ状態には戻らないんだとしても……みんなで安心してコナンの映画を観に行ける日常が、はやく戻ってきてほしいですね」

(c)青山剛昌/小学館

『緋色の弾丸』のカギとなるのは、数十年ぶりに日本で開催されることとなったWSG(ワールド・スポーツ・ゲームス)。世界中のアスリートが国の威信をかけて競いあう4年に一度のスポーツ大会だ。

「赤井一家を勢ぞろいさせるってことは最初から決めていたので、何か国際的に大きな舞台を用意したいなと思ったらやっぱりスポーツがいいかなあと。ほんと、この一家は驚くほど読者に人気でね。赤井だけかと思いきや、他の3人もまんべんなく好かれている。脚本の櫻井(武晴)さんは、安室が主軸の『ゼロの執行人』も書いてくれた人だし、最初は赤井をメインに据えるつもりだったみたいなんだけど、オレが3人の出番をどんどん書き足していくもんだから『これは赤井秀一ではなく、赤井一家の話なんですね』って言われちゃいました(笑)。というわけで、最終的には全員がしっかり活躍する物語になっています」

 もちろん、例年同様、青山さんも脚本づくりからガッツリ関わり、原画も描き下ろしている。

「もともと映画の脚本は、最初に物語の大筋を書いてもらったあとに、オレがラブコメシーンを足していくスタイルなんだけど、秀𠮷と由美の関係は障害が何もないぶん、描きやすくて楽しいんですよ。だから必然的に秀𠮷の出番も増えているんだけど、とにかく頭がいいもんだから、ときどき、秀𠮷と赤井さえいればコナンくんがいなくても全部解決しちゃうんじゃね?って思っちゃうんだよね」

 と、冗談まじりに不穏なことを漏らす青山さんだが、そもそもなぜ由美のパートナーとして秀𠮷を登場させたのだろう?

「なんでだったかなあ。そろそろ由美の相手も出したいなあと思ってはいたんですよ。甘えん坊で頼りなさそうだけど、実はすごくキレ者でカッコいい、みたいな男をね。で、赤井の弟も登場させたかったから、ちょうどいいかなって。メアリーの設定も、世良ちゃんを出すことになったとき、彼女が来日する理由を考えなきゃっていうんで決めたから……最初から伏線を張っているように見えるかもしれないけど、実は全部あとづけなんですよねえ」

 青山さんは「感覚」や「あとづけ」という言葉をよく使う。あまりに飄々とした物腰に、うっかり信じそうになるのだが、これほど膨大なキャラクターの絡みあう緻密な伏線の張られた物語が、思いつきだけで成立するわけがない。

「いやー、ほんとに感覚やあとづけで決めていることが多いんですよ。たとえば、秀𠮷のモデルは羽生(善治)名人。羽生さんは『由美ターン!』なんて言わないだろうから、七冠王をめざす棋士として、ってことだけど、そこから羽をもじって苗字は羽田にした。名前は、兄・秀一の“秀”と、昭和初期に活躍した棋士・阪田三𠮷の“𠮷”をあわせて秀𠮷。で、できあがった羽田秀𠮷という名前をみたら、羽柴秀𠮷と似てるじゃんってことで、太閤名人と呼ばれてることにしよう、って感じにね。ただまあ、最初はなんとなくでも、キャラクター設定はそれなりにしっかりつくっておくから、あとから『彼だったらこう動くな』『じゃあ、この物語はこんなふうに繋がっていくな』と組み立てやすい、というのはありますね。そういう意味では、感覚が起点だとしても展開は論理的に考えています」

 では、ご自身でも「うまく繋がった」と思う会心のエピソードは?

「うーん、どうだろう。最近『週刊少年サンデー』に掲載された、ベルモットとメアリーのエピソードを担当編集に見せたときは『すごい!』って驚いていたけど、その前に箇条書きでちゃんと道筋は教えておいたのに不思議だなあと思いました(笑)。設定で聞くのと読むのとでは違うってことかな。オレとしては、うまく繋がるように考えているんだからあたりまえだろうと思ってしまうので、どれもあんまり会心って感じはないんだけど……。どちらかというと、もっとああしておけばよかったという反省のくりかえしですよ。だいたい読者が食いつくのはオレが全然予想もしていなかったところで、灰原も安室も世良ちゃんも、なんでこんなに好かれたのかいまだによくわからない。ただ、理由はわからないけど、人気ならもう少し出しておくかと登場回数を増やしてみると、意外と物語に絡んできたりする。そんなふうに、感覚と理屈をいったりきたりしながら走り続けた結果、今に至るというわけです。きっとこの先も、やりきった! なんて思えることはないんじゃないかなあ。『YAIBA』にだって心残りはあるし、完璧な仕事なんて存在しませんからね」

取材・構成・文=立花もも 撮影=山口宏之

詳しくは『ダ・ヴィンチ』6月号でお楽しみください。


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