「減塩=健康」は大間違い!? 健康のために必要な「適塩」生活とは? レシピも紹介《インタビュー》

食・料理

公開日:2021/10/29

 冬になると、新型コロナ、インフルエンザ、風邪……と、健康面での不安が高まってきます。

 そんな不安を少しでも減らすべく、免疫力を高めることが大切だと、おうちごはんの頻度が高い現在、健康のためのご飯づくりに励んでいる人も多いのではないでしょうか。

 ところが、「減塩=健康」と誤った理解でごはんづくりをしてしまっている人が少なくないようです。

advertisement

 そこで、塩の専門家である青山志穂さんに、このたび上梓した『免疫力を高める 塩レシピ』(あさ出版)で紹介されている「適塩」生活、53種類のレシピの中からおすすめのものについてお話しいただきました。

――「塩の専門家」の方に初めてお会いするのですが、どんなきっかけでこの道を歩まれたのでしょうか?

青山志穂さん(以下:青山):もともと調味料のメーカーで食品開発の仕事をしていたため、食には興味があったんです。16年前に沖縄に移住したのですが、そこで「塩」の専門店に出会い、面白そうと思って就職したのがスタートですね。昔から沖縄では塩の生産が多く行われている地域であり、生産者の方々のお話を聞いたり、たくさんの塩と出会う中でどんどん「塩」の奥深さにはまってしまい、当時「塩の専門家」という人はいなかったのですが、「極めたい」と目指すことにしました。

――青山さんの最新刊『免疫力を高める塩レシピ』では、どのようなことを大切にされたのでしょうか?

青山:これまでは商品の紹介、生産者の想いをご紹介するというスタンスが多かったのですが、今回は、実際に「塩」を楽しく、健康のために活用していただきたい、そのうえで、お役立ちできるような内容にすることを大切に考えて執筆しました。本書では、塩がいかに私たちの健康、それも、身体だけでなく心の健康においても必要であるか、美容・健康のための塩活用法についてお話ししています。

――「塩」は健康にどのような影響があるのでしょうか?

青山:「塩は健康に悪い」「減塩しなくてはいけない」といった間違った思い込みをしている方がいらっしゃいます。それはとても危険です。最近は、減塩しすぎたことによる健康被害が増えています。減塩生活をしているのに、健康な気がしない、元気が出ないという人は、塩が足りていないということ。

 私たち、人間の身体にとって、塩は欠かせない存在なのです。

 地球上に初めて生命が誕生したのは海の中でした。私たち人間を含む脊椎(せきつい)動物は、進化の過程でその海を体内に閉じ込めることで、陸上で生活できるようになりました。お母さんのお腹の中にいる赤ちゃんを守っている羊水(ようすい)は、この太古の海とほぼ同じ成分でできています。また、戦時中は、輸血がどうしても足りないときには海水を薄めて使用したという事例もあります。

 かつて日本では、囚人の食事に塩を使わずに、じわじわと気力と体力を奪うという刑罰が行われていました。塩を極端に減らすと、人の身体には悪影響があるということです。夏になると、意識して塩分を摂取する必要があるのも、体内の塩分を減らしてしまわないためなのです。

 体内の「海」を正常な状態に保つこと、つまり、必要な塩分をきちんと摂ることが、私たちの健康には欠かせないのです。

 最近、問題とされているミネラル不足、マグネシウム不足の問題も、塩を摂取することで補うことができます。

――健康のために「塩」を上手に活用する方法として「適塩(てきえん)」を推奨されていますが、具体的にはどのようにすればよいのでしょうか。

青山:厚生労働省では、1日の塩分の推奨摂取量(摂るべき塩の量)として、成人男性で7.5g、成人女性で6.5gと定めています(2021年7月現在)。ですが、人により身長も、体重も、基礎代謝量も体質も違いますから、必要な塩分摂取量も当然、1人ひとり違います。そして、同じ人でも、体調や汗をかいた量によって、日々、必要な塩分摂取量が変わります。運動や熱を出すなどして汗をたくさんかいたり、お腹を壊して下痢をしていたりする時、体はいつもより多くの塩を必要とします。そんな時に、塩を減らしてしまっては、さらに不調になってしまいます。

 一方で、「塩」の摂りすぎもまた、身体にとって良いことではありません。

「適塩」とは、身体が求める塩分を、適切な質の塩、適正な量の塩を摂取することです。

 たとえば、家族みんなで食卓を囲むとき、控えめな塩分量で食事を作り、それぞれが必要な量の塩をパラパラと振りかけることで、同じ料理をみんなでおいしくいただくことができるようになります。

――「適塩」生活を送るうえでおすすめの塩レシピを1つ、ご紹介いただけますでしょうか。

青山:そうですね。塩麻婆豆腐はいかがでしょうか。中華料理の代表的なメニューであり、ピリッとした辛みのある赤い麻婆豆腐とは違い、辛みの少ないあっさりした味わいの麻婆豆腐です。

塩麻婆豆腐
材料2人分(1人分の食塩相当量 1.74g)
合い挽き肉…150g/絹豆腐…1丁/空心菜…200g/ごま油…小さじ1/水溶き片栗粉…適宜/にんにく…1片/しょうが…1片/唐辛子…1片
★[ 水…250cc/塩…5g/ブラックペッパー…適宜]

作り方
1 にんにく、しょうが、唐辛子をみじん切りにする。空心菜は茹で、豆腐は水切りしておく。
2 フライパンにごま油を入れ、火をつける。ごま油が熱したら、にんにく、しょうが、唐辛子を入れ、香りが出るま で熱す。
3 合い挽き肉を入れ、火が通ったら★を入れて混ぜ合わせる。
4 豆腐を加え、フライパンの中で崩しながら全体を混ぜ、ひと煮立ちさせる。
5 茹でておいた空心菜を入れ、水溶き片栗粉でとろみをつける。最後に、ごま油をかけたらできあがり。

*食卓に小皿に入れた塩を数種類出しておき、それぞれで振りかけてちょうどよい塩加減に仕上げる。

青山:本では、ほかにも塩回鍋肉などの塩中華をはじめとしたご飯のレシピ、ドリンク、スイーツなどのレシピも紹介しています。ぜひ、楽しんでいただきたいです。

――この本を、どんな人に届けたいでしょうか?

青山:多くの人に、塩を活用して健康的で、楽しい生活を送っていただきたいと思っています。なので、毎日、家族のために、お客様のためにご飯を作っている人にこの本をお届けしたいです。

 塩に興味がある方、塩には興味ないけれど免疫力を高めていきたい方、そして、なぜか不調である、元気が出ない方に、活用いただきたいです。

 最近は、スーパーやコンビニでも、たくさんの種類の塩が販売されています。せっかく手に入れやすくなっているので、塩の使い分けを楽しみながら、免疫力を高め、健康的な生活を送っていただきたいと考えています。

 多くのレシピでは、材料として「塩 〇グラム」と一言だけ記されていますが、塩はたくさんの種類があり、それぞれ味わいも違います。つまり、どの塩を使うかでもお料理の味が変わります。本の中でも、レシピごとに合う塩を紹介していますので、試してみていただきたいです。

――貴重なお話をありがとうございました!

青山志穂(あおやま しほ)
一般社団法人日本ソルトコーディネーター協会 代表理事

 東京都出身。慶應義塾大学卒業後に総合食品メーカーに勤務。商品開発部門に従事していたが、激務で体調を崩したため退職。療養のために移住した沖縄で塩の専門店「塩屋」を営む(株)パラダイスプランに出会い、転職。日々の業務の傍ら、産地の訪問や塩の研究を進めていく中で、世間に広がる塩に対する誤解や不理解を改善したいという気持ちが強くなる。

 2012年、想いが講じて、塩の正しい知識の啓蒙を目的とした(社)日本ソルトコーディネーター協会を立ち上げ、独立。国内外での講座やセミナーのほか、塩に関する商品開発や販売店の商品セレクト等のアドバイザーとしても活躍。塩を基軸とした地域活性化も手がける。訪れた製塩所は国内外合わせて延べ400カ所以上。自宅には1800 種類以上の塩コレクションが並ぶ。著書に『日本と世界の塩の図鑑』(あさ出版)他がある。

『免疫力を高める 塩レシピ』(あさ出版)
「塩」を上手に使って、健康的な体をつくろう!
塩が足りないと、身体のさまざまなところにダメージが出てしまい、免疫力が低下する。だからこそ、適正な質の、適正な量の塩を摂る「適塩生活」が大事。いま、注目の「塩」の働きをきちんと理解し、生活に取り入れることで免疫力を高めるレシピ&健康・美容に役立つ知識を紹介した1冊!

あわせて読みたい