アトムの系譜を引き継ぐ人型ロボットはどう進化したのか? 現代のロボット漫画まとめ

マンガ

更新日:2018/11/19

 アトムが誕生したのは2003年だとされています。それから15年たった現在でも、アトムのようなロボットは実用化されておらず、AI(人工知能)の進化は著しいものの、アトムが生まれるまでまだ時間がかかることでしょう。しかしながら、漫画の世界ではアトムの系譜を受け継ぐものたちが、さまざまな活躍をしています。本稿ではそんなロボット漫画を紹介したいと思います。

■21世紀だからこそ描ける新しいアトムの物語

 日本のみならず世界中に大きな影響を与えた『鉄腕アトム』は、漫画の神様と呼ばれる手塚治虫氏の代表作のひとつ。ストーリーのおもしろさこそ色あせないものの、やはり今から60年以上前に生み出されたものであり、現代のテクノロジーからみると色々と無理な部分があることは否めません。そんな部分をロボット漫画の第一人者が大胆にリメイクした、21世紀だからこそ描けるアトム誕生の物語が『アトム ザ・ビギニング』(手塚治虫:原案、ゆうきまさみ:コンセプトワークス、カサハラテツロー:漫画/ヒーローズ・小学館クリエイティブ)。未だにアトムが生まれていない21世紀の今を生きる私たちだからこそ楽しむことのできる、近未来に命を得た新しいアトムの活躍を楽しめるでしょう。

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■人型のロボットを作ることの意味とは?

 巨大な二足歩行ロボットは、フィクションの世界だけでしか活躍できないといわれています。そのようなロボットは一般的に戦闘用に使われることが多いのですが、現実的には、戦車や飛行機などといった兵器の方がコスト面でも性能面でも有利だというのです。では、等身大のロボットはどうなのでしょう? こちらは介護や人間を支援するものとして研究開発が進んでいます。そんなリアルなロボット開発を描いた作品が『アイアンバディ』(左藤真通/講談社)。派手な戦闘も、ヒーローのようなロボットも出てきませんが、現実社会でロボットを開発することの大変さとロマン、そして科学の可能性を感じることのできる、良質なロボット漫画になっています。

■気がつくと世界を滅ぼせるほどの力を持たされてしまった58歳の物語

 なんの理由もなく、単なる偶然によって、異星人の兵器ユニットとして蘇ったふたり。すでに、人間ではなく、それどころか人の生死を文字通り指1本で左右できるほどの力を得てしまった。そんなとき、どんな行動を取るのが正解なのか? という、非常に深い命題を高い描写力で表現した『いぬやしき』(奥 浩哉/講談社)は、その内容から高い人気を集め、瞬く間にアニメ化、映画化された作品です。人の意識と記憶を持ちながらも、ロボットにされてしまったという同じ状況でありながら、年齢も立場も違うふたりが選んだ結末とは? すでに完結済みですので、結末まで一気に読んでしまうこと間違いなしです。

■ロボットが人間として生きていくために必要なものとは?

 超高度なAI(人工知能)が、人間と同じ姿を手に入れた時、どんなことをするのか? このように表現すると、世界征服や人類を支配するといったイメージがあるかもしれませんが、ひっそりと人間社会に溶け込んで暮らそうとするロボットも存在します。そんなロボットが主人公である『ORIGIN』(Boichi/講談社)では、ロボットが人間社会に溶け込むために必要な光熱費や部品代を、どのようにして調達するかというリアルな問題をコミカルに描きつつ、別の勢力のロボットとの戦いを圧倒的な画力で表現してくれます。ロボットだからこその悩みを描写することによって、日常と非日常がくっきりと色分けされ、迫力のあるアクションシーンがより説得力を持って輝いてくれる作品です。

■人とヒューマノイドとロボットが共存する未来世界で癒やされるココロとは?

 AI(人工知能)が、人間を超えるいわゆる「シンギュラリティ」は、あと30年以内には訪れるといわれています。そんなシンギュラリティを経て、超AIが存在する近未来。人間だけでなく、生体ボディを持ち、脳を模倣したAIを持つヒューマノイドと、用途を限定したAIによって行動するロボットの3種類が存在する世界を描いた『AIの遺電子』(山田胡瓜/秋田書店)は、ヒューマノイドを治療する医師が主役であり、人間でもロボットでもない、ヒューマノイドだからこその悩みを解決していきます。今よりも遙かに科学が発達した世界を描写しながらも、ヒューマノイドが持つ悩みは私たちにも共通するものがあり、どこか懐かしさすら感じさせてくれる素敵な味わいを持つ作品です。

 ロボットやAI(人工知能)というのは、これからもドンドンと進歩を続けていく分野です。60年以上前に手塚治虫氏が創造したスーパーロボットは誕生していませんが、人工知能は、すでに日常生活の中で活用されるようになってきています。一昔前は人工知能が人間を超える=人類支配というイメージがありましたが、近年では私たちに気がつかないようにサポートして導いてくれる、という考え方の方が優勢になりつつあります。本稿で紹介した作品を読んで、AIと人間がどのような道を辿るのか? そんな来るべき未来へと想いをはせて見るのもおもしろいのではないでしょうか。

文=龍音堂