【科学編TOP10】海の水はなぜしょっぱい?「2019年人気記事ランキング」

スポーツ・科学

更新日:2019/12/30

 2019年は、昨年に引き続き、動物に関する雑学本が売れた年だった。2019年は『わけあって絶滅しました。 世界一おもしろい絶滅したいきもの図鑑』の続編として『続 わけあって絶滅しました。 世界一おもしろい絶滅したいきもの図鑑』(ともにダイヤモンド社)が、『おもしろい! 進化のふしぎ ざんねんないきもの事典』のシリーズ第4弾として『おもしろい! 進化のふしぎ もっとざんねんないきもの事典』(ともに高橋書店)が刊行され、老若男女問わず、多くの人の人気を集めたのだ。

 ダ・ヴィンチニュースの「2019年人気記事ランキングベスト10【科学編】」でも動物に関する雑学記事が複数ランクイン。人間の生態と比べてみると、動物の生態を知ることはなんと興味深いことだろう。その他にはどんな記事が読まれたのか?「2019年人気記事ランキング(科学編)ベスト10」を見てみるとしよう。

【第1位】海の水はなぜしょっぱいのか? 誰かに話したくなる理系雑学

『人類なら知っておきたい 地球の雑学』(雑学総研/KADOKAWA)

『人類なら知っておきたい 地球の雑学』(KADOKAWA)は、思わず誰かに話したくなる「理系雑学」を212話収録した一冊。本記事では「塩」に関する雑学をご紹介している。

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 例えば、海の水がしょっぱい理由には2つの説があいうる。空気中の塩素ガスを溶かした雨が塩素を含み、岩石や土に含まれているナトリウムと結びつき、海に流れ込んで、塩化ナトリウムを含んだ海ができたという説。陸地の岩や土に含まれていた塩素やナトリウムが雨に溶け出し、海水に流れて、水分の蒸発を何億年もかけて繰り返すうちに、ゆっくりと塩分濃度が徐々に濃くなったという説。

 現在では、これら2つの説の両方が相まって、海はしょっぱくなったと考えられているという。このように、この本は仕事で家庭で、日々のなにげない「雑談」に必ず役立つ理系ジャンルネタが存分に楽しめる。これはもはや、「理系テーマ」を超えた「地球テーマ」の雑学と言っても良いだろう。

【第2位】首都機能停止!? 今やスタンバイ状態の富士山が噴火するXデーは…

『富士山噴火と南海トラフ 海が揺さぶる陸のマグマ(ブルーバックス)』(鎌田浩毅 /講談社)

 日本が世界に誇る名峰「富士山」。国内外から多くの観光客が訪れる日本一高い山だが、かつて大噴火を何度も起こしてきた活火山であることは忘れられがちだ。1707年の宝永噴火から300年以上経った現在、富士山はいつ噴火してもおかしくない「スタンバイ状態」に入っているという。

 そう警鐘を鳴らすのが、『富士山噴火と南海トラフ 海が揺さぶる陸のマグマ(ブルーバックス)』(鎌田浩毅 /講談社)だ。2011年の東日本大震災によって、富士山の状況は一変。富士山のマグマだまり直上に、重大な異変が起きた可能性があるのだそうだ。

 さらに、火山学者の懸念材料となっているのが、2030年代に起こると予想されている南海トラフ巨大地震。実は、宝永噴火の直前にも、南海トラフでマグニチュード9クラスの「宝永地震」が発生していたという。富士山が噴火したのは、その49日後。100以上の活火山がある日本に住む私たちだからこそ、本書を通じて、Xデーに備えてみてはいかがだろうか。

【第3位】身近な食事に含まれる毒から、世間を騒がせたあの毒まで。好奇心を刺激する毒辞典

『増補 へんな毒 すごい毒』(田中真知/筑摩書房)

『増補 へんな毒 すごい毒』(田中真知/筑摩書房)は、フグやキノコなどの動植物に由来する毒から、鉱物や火山ガスなどの自然に由来する毒、そして麻薬や毒ガスなどの人工的につくられた毒といった、あらゆる毒の成り立ちや、それにまつわる事件、自然界の進化など、さまざまな切り口から「毒」について語られた1冊だ。

 例えば、毒と薬はまったく別物のようだが、科学的に明確な違いはないらしい。2000年に埼玉県本庄市で発生した保険金殺人では、長期にわたって酒と大量のアセトアミノフェンを飲ませることで、被害者は殺害された。アセトアミノフェンは風邪薬の成分だが、アルコールと一緒に大量摂取すると、肝機能障害を起こして死亡する危険があり、容疑者はこれを利用したのだ。まさに、「薬」を「毒」として悪用した事件と言えるだろう。

 本書の読後にはすっかり毒の世界に魅了されてしまう人もいるかもしれない。得られた知識を悪用することなきよう、くれぐれもご注意を。

【第4位】無駄にセックスをするのは人間だけ? 鳥と人間の離婚率を比べてみると? 動物と人間を全比較!

『生物学ものしり帖』(池田清彦/KADOKAWA)

 ある研究結果によると、男性は52秒に一度のペースで「性的なこと」を考えているそうだ。しかし、これは人間特有の事象かもしれない。交尾はエネルギーを使い、大きなリスクを伴う行動。だから、人間以外の生物は無駄なセックスを避けているのだ。生物について学ぶと、人間という動物の特殊さ、そして生物の興味深さがみえてくる。

『生物学ものしり帖』(KADOKAWA)は、「ホンマでっか!? TV」などの番組にも出演する生物学者・池田清彦氏が、生物学についてわかりやすく綴った1冊。

 例えば、鳥類の多くは一夫一妻で協力して子育てをするが、繁殖期間を終えると行動を共にすることはなくなるそうだ。アホウドリは死ぬまで一夫一妻を守り通す一方で、コウテイペンギンは85%の確率で離別する。鳥類の中でも、種類によって離婚率がバラバラな現状を知ると、人間の離婚率にもなんだか納得してしまう。

 この本を読むと、動物だけでなく、人間の行動に対し、新たな視点が生まれてくるのだ。

【第5位】あなたのパスワードはこうやって盗まれている! ネットの裏に潜む詐欺事件のカラクリ

『フェイクウェブ』(高野聖玄、セキュリティ集団スプラウト/文藝春秋)

 インターネット上に「膨大な個人情報や個人資産」が集積されている現代。『フェイクウェブ』(高野聖玄、セキュリティ集団スプラウト/文藝春秋)では、インターネット上の詐欺事件の実態を明らかにしている。昨今、クレジットカードや電子マネー、ポイントの不正利用、仮想通貨の窃取がいった詐欺事件の被害が拡大している。個人情報が盗まれた場合、メールアドレスやクレジットカード番号と一緒に、パスワードも盗まれている、というケースは少なくない。こうした被害を防ぐひとつの手段としては「同一のパスワードを使い回すことを避ける」ことだ。サイバー攻撃者は、盗み取った膨大なIDやパスワードをリスト化してログインを試み、無理やりにでもアカウントの鍵をこじ開けようとする。共通したIDとパスワードを使っていると複数のサービスにまたがり情報を盗み取られる可能性もあるため、万が一に備えるには、古典的ながらも確実な対策を取っておくのが肝心なのだ。

【第6位】人工生命体はすでに誕生している! 衝撃の最先端科学レポート

『合成生物学の衝撃』(須田桃子/文藝春秋)

 SFのような話だが、すでに人間が生み出した人工生命体が誕生しているらしい。パソコン上でDNAを設計し、新種の生物を合成する学問「合成生物学」の最先端をレポートするのが『合成生物学の衝撃』(須田桃子/文藝春秋)だ。

 2016年、クレイグ・ベンター氏によって誕生した世界初の人工生命体。遺伝子上、直結する「親」の存在しないこの微生物は、生存に必要な最小のゲノムによって構成されていることから「ミニマル・セル」と名付けられたが、この新たな生命は、社会的および倫理的な多くの課題をはらんでいるのだという。

 ひとたび軍事利用されれば生物兵器の脅威は計り知れないし、現在のところ研究は微生物にとどまっているが、将来の技術的には他の生物やヒトゲノムの合成も不可能ではない。技術をどう展開するかは、それを運用する者の判断にかかっている。生命とは、尊厳とは、さらには親子関係とは――。読み手によってさまざまな示唆を与えてくれる一冊。

【第7位】「鳥はなぜ飛べるの?」 モスチキンをよく見れば理由が分かる!

『鳥肉以上、鳥学未満。』(川上和人/岩波書店)

“モスチキン”や“焼き鳥”など卑近な例を参照しながら、鳥の生態を解説してくれる本、それが『鳥肉以上、鳥学未満。』(川上和人/岩波書店)だ。

 例えば、鳥が空を飛ぶための仕組みをおいしく手軽に学びたいのであれば、“モスチキン”がおすすめだと、川上氏は語る。身近な鶏肉の中でも親しみ深い部位のひとつ・胸肉は空を飛ぶのに役立つ胸筋部分の肉だ。鳥は翼の基点にある上腕骨から胸骨に連なっている胸筋の力を使って、翼を大きく打ち下ろし空を飛ぶ。もちろんこの作業だけなら人間でもできるわけだが、それだけでは空を飛べない。

 そこで鳥がとった戦略が胸筋を発達させてそのほかの部位をコンパクトにすることだったという。“モスチキン”では、スーパーに並ぶ胸肉などでは取り除かれている上腕骨がついているので、胸筋がどのように翼を動かしているのか、わかりやすいのだそうだ。

 鳥類の進化の旅に思いをはせながら彼らのお肉をほおばってみるのもいいかもしれない?

【第8位】好き嫌いはどうやって決まる? 人間の好き嫌いを左右する仕組みを大解剖

『好き嫌い―行動科学最大の謎―』(トム・ヴァンダービルト:著、桃井緑美子:訳/早川書房)

 好きなもの、嫌いなものの理由を説明するのは難しい。『好き嫌い―行動科学最大の謎―』(トム・ヴァンダービルト:著、桃井緑美子:訳/早川書房)は、これまで「説明できない」とされてきた「好き」と「嫌い」のメカニズムに迫る野心作だ。

 例えば、私たちは、ある食べ物を繰り返し食べたり、ある音楽を繰り返し聴いたりすることで、その対象を好きになることがあるという。そして、私たちは接触による「なじみ深さ」に弱い一方で、移り変わる最新のファッションを追うように、同時に「目新しさ」も切望しているのだ。なじみ深さと目新しさ。私たちは、この相反するふたつの要素の中間――“どこか古いものを思わせる、新しいもの”を求めているらしい。

 さまざまな事例を読んでいると、だんだんと自分の中の「好き」と「嫌い」が疑わしいもののように思えてくる…。自分の好みには相当のこだわりがある人にとっても、本書で語られる理論は共感と発見の連続になるはずだ。

【第9位】「性的魅力=美」の方程式は動物にヒントが? セックスアピールの源をたどってみると…

『動物たちのセックスアピール 性的魅力の進化論』(マイケル・J・ライアン:著、東郷えりか:訳/河出書房新社)

「魅力的な人」とはどんな人だろう。見た目が整っていること、美しさ、話し方、声、香り…。それはときに「性的魅力」として異性を刺激し、引き寄せる。それは人だけでなく、動物の場合も同様だ。『動物たちのセックスアピール 性的魅力の進化論』(マイケル・J・ライアン:著、東郷えりか:訳/河出書房新社)は、「美」という魅力についてさまざまな実験や観察の記録から分析する1冊だ。

 著者は、人における事例をあげて、そこに専門的な分析や著者自身の研究説明を用いて解説を加えてくれる。たとえば、それは、現実離れしたスタイルを持つバービー人形の美についてやフェティシズムについての考察、映画のワンシーン…。

 この本は自分の中に無意識に存在する「好き」や「欲しい」を知る、大きなヒントになるに違いない。

【第10位】声がいい人は免疫力が高いってホント? 動物行動学でわかる“残酷な現実”

『人間と遺伝子の本当の話 ウソばっかり!』(竹内久美子/ワニブックス)

 どうして女性はイケメンに恋をするの?『人間と遺伝子の本当の話 ウソばっかり!』(竹内久美子/ワニブックス)は、「なんとなく分かっているつもりだったけど、よくよく考えると分からない」問題を、深く掘り下げ、科学的根拠に基づいて解説している本だ。

 例えば、なぜ女性がイケメンに恋をするのかといえば、動物行動学や進化論の分野では、ルックスの良さは免疫力の高さを示すのだという。顔の良さやケンカの強さ、体臭など、外に表れる様々な魅力と免疫力には相関があるそうだ。

 ちなみに、いい声の人は、身体が左右対称な傾向にあり、免疫力が高いそうだから、いい声の男の人に惹かれるのも仕方のないらしい。

 本書の記載はすべて動物行動学の見地から解き明かしたものであり、読み終えたときには納得してしまうものばかり。人間がいかにニンゲンという生物を理解していないか、痛感させられる。

集計期間:2019/01/01~2019/12/20

文=アサトーミナミ