旅の予習・復習に最適! 本で旅気分を味わう5冊をセレクト

文芸・カルチャー

公開日:2022/4/29

 旅に出かけたくて出かけたくてたまらない。そんな気持ちを抑えられずに、旅の計画を着々と進めている人もいれば、旅に出かけたい気持ちはあるけれど、今はちょっと難しそう…という人もいることだろう。旅に行く予定の人も、今は行けないという人も、どんな人も楽しむことができるのが、小説やエッセイ。本稿では、旅行に行きたくなる小説・エッセイを5つご紹介する。旅の予習や復習に、まずは本で旅気分に浸ってみてほしい。

『丘の上の賢人 旅屋おかえり (集英社文庫)』(原田 マハ/集英社)

『丘の上の賢人 旅屋おかえり (集英社文庫)』(原田 マハ/集英社)

 旅に出たい気持ちはあるけれど、今はどうしても出かけられない…。そんな人は、大人気小説『旅屋おかえり』(原田マハ/集英社文庫)の特別編『丘の上の賢人 旅屋おかえり』(原田マハ/集英社文庫)を読んでみるといいだろう。

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 崖っぷちアラサータレント“おかえり”こと丘えりかが始めた、依頼人の代わりに旅をする「旅屋」のお仕事。特別編では、彼女は札幌・小樽へ旅に出かける。苦い過去を抱えた依頼人は、東京に出た後、18年以上故郷・北海道に帰っておらず、今もなお帰ることができないでいるというのだ。依頼人の代わりに旅に出た“おかえり”は、一度はほどけた縁をそっと再び結び直していく。そんな笑顔と感動がつまった旅物語は、身動きが取れないでいるあなたの背中をそっと押してくれるに違いない。読めば、旅に出たくなり、故郷にも帰りたくなってしまう1冊。


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『ひとり旅日和 運開き! (角川書店単行本)』(秋川 滝美/KADOKAWA)

『ひとり旅日和 運開き! (角川書店単行本)』(秋川 滝美/KADOKAWA)

 いつも周囲に気を遣ってばかり…というあなたにこそオススメしたいのが、自分のペースで楽しめる「ひとり旅」。そのガイドブックとなるのが、人見知りのOL・梶倉日和が日本全国を旅する「ひとり旅日和」シリーズだ。

 シリーズの中でも『ひとり旅日和 運開き!』(秋川滝美/KADOKAWA)ではコロナ禍でも密を避けながら「ひとり旅」を楽しむ日和の姿が描かれる。宇都宮の餃子や和歌山のマグロ丼など、日和の旅にはご当地グルメが盛りだくさん。その土地の名所、パワースポットも紹介され、気分はすっかり旅気分だ。それに「ひとり旅」を通じて日和が変化していくのも微笑ましい。「ひとり旅」は人を成長させてくれるもの。日和にならって、あなたも勇気を出して「ひとり旅」に挑戦してみてはどうだろう。その気楽さにきっと虜になってしまうに違いない。


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『楽園ジューシー ホテルジューシー (角川書店単行本)』(坂木 司/KADOKAWA)

『楽園ジューシー ホテルジューシー (角川書店単行本)』(坂木 司/KADOKAWA)

 居場所を変えると、本当の自分が見えてくるもの。『楽園ジューシー』(坂木司/KADOKAWA)は、人生諦めムードの大学生・ザッくんが自分自身を見つめ直す南国青春ストーリー。タコライスに、ゴーヤーチャンプルー、ラフテー…。「和菓子のアン」シリーズで知られる坂木司氏が描き出す美味しそうな沖縄料理とともに、沖縄でのリゾートバイトの日々が綴られていく。

 訳ありの観光客と、個性的な従業員たち。彼らと関わる中で、ザッくんは少しずつ成長していく。その成長は、ほろ苦くも爽快感満載。成長とは時に痛みを伴うものなのだ。自分の弱さと向き合うザッくんにエールを送りたくなると同時に、この本自体が、読者が自分自身と向き合うキッカケにもなりそう。この本で南国の風を感じながら、あなたもザッくんのように、自分自身を見つめ直す旅に出かけてみよう。


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『ももこの世界あっちこっちめぐり (集英社文庫)』(さくら ももこ/集英社)

『ももこの世界あっちこっちめぐり (集英社文庫)』(さくら ももこ/集英社)

 海外旅行に出かけたくても思うように出かけられない。そんな今だからこそ読みたいのが、さくらももこさんによる旅行エッセイ『ももこの世界あっちこっちめぐり』(集英社文庫)だ。1996年、当時31歳のももこさんが訪れた、スペイン、バリ島、アメリカ西海岸、ラスベガス、ベネチア、パリなど6カ国17カ所での出来事が綴られている。

 ももこさんの独自の視点で描き出される魅力的な海外の風景と、旅先での思いもよらぬトラブル。ももこさんってなんて面白くってチャーミングな人なのだろう。ももこさんの旅に爆笑させられたり、感動させられたりしているうちに、気づけば、彼女のファンになってしまう。コロナが終息したら、この本で紹介された場所をめぐってみたい。旅行気分を味わううちに、コロナが終息した後の楽しみができてしまう1冊。


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『マスカレード・ゲーム』(東野 圭吾/集英社)

『マスカレード・ゲーム』(東野 圭吾/集英社)

 一流のホテルには、一流のホテルマンがいる。ミステリーとしての面白さはもちろんのこと、ホテルの裏側に迫る「お仕事もの」としても見どころ満載のシリーズが東野圭吾氏の「マスカレード」シリーズだ。特に、最新刊『マスカレード・ゲーム』(東野圭吾/集英社)は、このシリーズの集大成となる重要な1冊。今までのシリーズファンも未読の人もぜひとも読んでみてほしい。

 都内で発生した3つの不可解な殺人事件。3つの事件の容疑者全員が、同じクリスマスの時期に、一流ホテル・コルテシア東京に宿泊予定だということが判明し、刑事・新田浩介は、再びホテルクラークに扮して潜入捜査を行う。現在はコルテシア・ロサンゼルスに勤務するコンシェルジュ・山岸尚美とのコンビ復活はあるのか。中間管理職となった新田の奮闘に加えて、ホテルマンたちのプロフェッショナルな仕事が心に残る。せっかくならこんなホテルマンたちが働く一流ホテルに泊まってみたい。そう思わずにはいられない1冊。


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 あなたならどこに旅に出かけるだろうか。旅先でどんなグルメを味わうだろうか。小説やエッセイを読むうちに、「自分ならこんな旅をしてみたい」という想像が膨らんでいくに違いない。本からヒントをもらいながら、あなたも、物語の主人公やエッセイの作者のように、自分ならではの自由気ままな旅を計画してみてはいかがだろうか。

文=アサトーミナミ

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