東京女子×上京女子 vol.5 「現実の女同士はたぶん、マウンティングなんかしない」

文芸・カルチャー

2016/12/20

 東京という大都市で生まれ育った華子と地方から夢を抱いて上京してきた美紀。東京女子と上京女子、まったく違う境遇のふたりがひとりの男をめぐって出会ったら……。そんな物語を通してアラサー女子が抱える悩みや葛藤を描き出した山内マリコさんの小説『あのこは貴族』(集英社)。その出版を記念して、実際に東京で働くアラサー女子6人を集め「東京女子×上京女子」の座談会を実施。その模様をレポートしてきたこの連載もいよいよ今回が最終回。話題は今後のライフプランについてだ。

▶ 第1回はこちら(東京女子×上京女子 vol.1「女の友情は物理的距離で壊れる!? 」
▶ 第2回はこちら(東京女子×上京女子 vol.2 「逃れられない“東京のカルマ”」
▶ 第3回はこちら(東京女子×上京女子 vol.3 「東京男子と上京男子、魅力的なのはどっち?」
▶ 第4回はこちら(東京女子×上京女子 vol.4 「理想の結婚相手は孫悟飯!? 本当の幸せってなんだろう?」

 交友関係や地元への愛着、恋愛や結婚に対する価値観など、さまざまな話題で盛り上がってきたこの座談会。最後のテーマは今後のライフプランについて。6人のアラサー独身女子が抱えている悩みや葛藤、そして希望を覗いてみよう。

子どもはほしい。でもいい母親になれる自信がない

──すごくストレートな質問なんですが、みなさん子どもはほしいですか? まずは上京女子の方からお答え、お願いします。

上京Fさん(以下、上京F):すごくほしいです!

上京Eさん(以下、上京E):私もいつかはほしいなと思ってます。

上京Dさん(以下、上京D):うーん、旦那はいらないけど、子どもはほしいかな……。

──結婚はしたくないけど子どもはほしいってやつですね。上京女子は子どもがほしい派が多数ですけど、東京女子の方はどうですか?

東京Cさん(以下、東京C):うーん……。最近、子連れの方のマナーの悪さとかモンスターペアレンツとか、話題になるじゃないですか。自分に子どもができたとき、愛情が行き過ぎてそういう母親になってしまうんじゃないかと思うとちょっと不安です。

東京Aさん(以下、東京A):仕事がうまくいってるときはこのままひとりで生きていくぞ!って思うんだけど、嫌なことがあったり落ち込んだりすると、夜も眠れないほど子どもがほしくなるときがあります。自分を必要としてくれる存在がほしいなって。

東京Bさん(以下、東京B):ほしいんですけど、正直自信がなくて。自分がちゃんとした母親になれるかわからないし。そもそも誰のためにほしいのかって考えちゃうんです。ただ「自分が母親になりたい」とか「子育てを経験してみたい」とかって理由で子どもがほしいって言っていいものか……。

上京F:私、そんなに深く考えたことなかったです! ただ素直に子どもがほしいって思えるので。

──子育てに対して不安はないんですか?

上京F:正直、自分に自信があるわけじゃありません。でももし私に子どもができたら、家族とか親戚とか友だちとかが、絶対にサポートしてくれるはず。周りの人たちを信頼してるから、素直に子どもがほしいって言えるんです。私自身も母親だけじゃなくて親戚や地域の大人、みんなに育てられたって自覚があるので。

──なるほど! 自分が育った環境が大きく影響しているわけですね。東京女子が子育てに対して自信がもてないのって、もしかしたら第2回で話題になった「東京のカルマ」のような何かが関係しているのかも……。

東京B:それはあるかもしれません。東京だと、子どもを保育園に入れるのだってすごく大変じゃないですか。電車のなかで白い目で見られるとも聞くし……。

東京A:東京の物理的な余裕のなさって、子育てには絶対マイナスになりますよね。保育園だって土地があれば数が増えるだろうし、電車だって乗客が少なければ、白い目で見るどころか「かわいい」って感じると思う。

上京E:正直、東京では子育てしたくないなって考えています。子どもができたら、地元じゃなくてもどこか子育てしやすい土地に移りたいですね。

女の人生は十人十色。大切なのは自分らしさ

──子どもができたら子育てしやすい他の土地に移りたいって話が出ましたが、そうすると仕事は辞めざるを得なくなりますよね?

上京E:いまの会社は辞めないといけないですね。でも、もともと働く場所にしばられたくなくて手に職をつけたので、仕事自体は続けられると思います。

──たしかに職種によって子育てのしやすさ、しにくさってありますよね。

東京A:私は就活で前の会社を選んだとき、ワークライフバランスとか福利厚生も鑑みていたはずなのに、蓋を開けてみたらかなりの激務で。子どもをつくる以前に、周りの男性と同じように働いてたら身が持たないと思いました。

東京B:私もそれが理由で転職しました。この会社にいたら結婚も子どもも無理だって思って。

──バリバリ仕事して、結婚したいと思えるだけの人に出会って、子育てもするって考えただけでも大変……! それができる人ってほんとひと握りですよね。

上京D:全部を手に入れようとするのは難しいですよね。今はひとりで自由に生きたいから残業があっても土日出勤があっても仕事を優先してますが、もし誰か結婚したいと思える人に出会ったら転職するかもしれないし、専業主婦になるかもしれない。そのとき自分が何を優先したいかですよね。

──ほんとその通りですね。これまで話してきたように、いろいろ悩みや葛藤があると思いますが、みなさん今後の目標ってなにかありますか?

上京E:仕事で成し遂げたいことがあります! 恥ずかしいので詳細は秘密ですが。結婚はそのうちって感じですが、周りの年下の子たちが結婚しはじめてちょっと焦ってます。

上京F:私はバリバリ働いて、30歳までに今の彼氏と結婚したいです!

東京C:私もいまは仕事を頑張りたいですね。それとまだまだいろいろな人と恋愛して楽しみたい!

東京A:さっき、家がほしいって話をしたんですけど、家を持ってる男性と結婚できたらいいな(笑)

上京D:私はあんまり、目標っていう意識はないですね。今を楽しく、しがらみを感じずに生きたい。

東京B:私もいま仕事がすごく楽しいので、目標というよりはそれをずっと維持していきたいって感じです。

──答えがバラバラなのは、きっとみなさん自分らしい生き方をしたいってことだからですよね。今回の座談会を通して、いろいろな気づきや発見がありました。みなさん、どうもありがとうございました!

 東京女子と上京女子。境遇は違えど、みんな同じ東京で生きる女。今回の座談会も、全員初対面ながら終始話題が尽きなかったように、心の奥底でつながる何かがあるのかもしれない。『あのこは貴族』の華子と美紀も、ひとりの男をめぐって出会うものの、けっして険悪な雰囲気になることはない。むしろ運命共同体のような、不思議な縁と絆で結ばれていく。それこそが、この小説の魅力であり真髄だ。

 ドラマや漫画、小説などのなかでは、女同士というだけでマウンティングし合ったり、仲がいいように見えて実は対立していたりするシーンが描かれることが多いが、それはたぶん本当の姿ではない。リアルな世界に生きている女たちは、お互いの弱さや脆さを理解し合いながら、馴れ合うことも、傷付け合うこともしない。『あのこは貴族』にはそんな“本物の”女同士の関係が描かれているのだ。

 女なら、共感しないわけがない。

取材・文=近藤世菜

『あのこは貴族』(山内マリコ/集英社

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『あのこは貴族』(山内マリコ/集英社)

地方生まれの美紀と東京生まれの華子。アラサー女子たちの葛藤と成長を描く、山内マリコの最新長編!