7人の敗者たちから描く宮本武蔵の真の姿は――『敵の名は、宮本武蔵』

文芸・カルチャー

2017/3/9

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『敵の名は、宮本武蔵』(木下昌輝/KADOKAWA)

剣豪・宮本武蔵の真の姿を、7人の敵側の視点から焦点を当てた『敵の名は、宮本武蔵』が、2017年2月25日(土)に発売された。

同書の著者・木下昌輝は、2014年にデビュー作『宇喜多の捨て嫁』が第152回直木賞候補に、2017年2月には『天下一の軽口男』が第38回吉川英治文学新人賞候補になるなど、今注目の作家。

これまで敗者に光を当ててきた木下が今回選んだのは、剣豪・宮本武蔵。今までに武蔵を題材にした作品は無数にあったが、一人で武者修行の旅に出ていたことは描かれていても、「大勢の弟子を引き連れた」という史実はほとんど扱われてこなかった。同書は吉岡憲法や佐々木小次郎など7人の敵(=敗者)から見る武蔵像という新たな視点で、読みごたえのあるエンターテインメントとして描き上げ、木下自信も「勝敗を超越した勝負がある!!」と自信を覗かせる渾身の歴史小説だ。

また書道家・武田双雲は同書を「こんなにも多様な角度から宮本武蔵を描いた作品は初体験だ。心を突き刺す物語」と絶賛し、文芸評論家の末國善己も「7つの物語の先にある武蔵の“真実”が分かった時、胸が熱くなるだろう」と太鼓判を押している。

<各章あらすじ>

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「有馬喜兵衛の童打ち」
島原沖田畷の戦いで“童殺し”の悪名を背負い、家中を追放された鹿島新当流の有馬喜兵衛の前に、宮本無二斎と、弁助(武蔵)と呼ばれる十二、三歳の子どもが喜兵衛の前に現れた。弁助は、「生死無用」の真剣で果たし合いをするというのだが…。

「クサリ鎌のシシド」
人買いにすら見捨てられた自らの命を、千春によって救われたシシド。だが、貧しい境遇の2人は、引き裂かれる運命にあった―。哀しき邂逅と、避けられぬ戦いが迫る。

「吉岡憲法の色」
かつて染め物を業としていた京八流の名門剣術流派、吉岡流。その跡継ぎとなった吉岡源左衛門は、武蔵が描いたという絵に衝撃を受けた。幾内を席巻しつつある宮本武蔵とは、何者か。憲法の名を継いだ源左衛門は、勝負のなかで武蔵になにを視るのか。

「皆伝の太刀」
吉岡憲法との戦いの後、江戸の道場で弟子たちと剣を交す武蔵。だが武蔵の剣は、いままでの殺気みなぎるものでは無くなっていた。弟子を引き連れてやってきた屋敷では、全く異なる真剣勝負が待っていた。

「巌流の剣」
宮本無二の弟子・本位田外記の二刀流を遣う津田小次郎は、鹿島新当流の遠山を一刀で打ち負かすほどになっていた。外記からの思いもよらぬ手紙を受け取った小次郎は、外記を救うために、美作へ向かう。だが、そこで出逢ったのは圧倒的な強さの“美作の狂犬”だった。

「無二の十字架」
前五篇の秘密が明かされる。そして運命の闘いが待ち受ける。

「武蔵の絵」
書き下ろしの最終章。巌流島の戦いから二十数年。消息が途絶えていた武蔵の噂を聞いた吉岡源左衛門は、京都を発ち九州へ向かうが…。かつての敵は、生きているのか。

木下昌輝(きのした・まさき)
1974年奈良県生まれ。近畿大学理工学部建築学科卒業。ハウスメーカーに勤務後、フリーライターとして関西を中心に活動。2012年『宇喜多の捨て嫁』で第92回オール讀物新人賞を受賞し、2014年『宇喜多の捨て嫁』で単行本デビュー。同作は直木賞候補となり、2015年第2回高校生直木賞、第4回歴史時代作家クラブ賞新人賞、第9回舟橋聖一文学賞を受賞。2作目の『人魚ノ肉』は第6回山田風太郎賞の候補となる。最新刊に『戦国24時 さいごの刻』がある。2017年2月、『天下一の軽口男』が第38回吉川英治文学新人賞候補に選出される。

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