後ろめたさやひけめを晴れがましく感じながら前向きに生きる、ユニークな感性が横溢
志ん生を知らなけりゃあ落語を聞いたことにならねえとかいって威張るいけ好かないオヤジになったみたいな気がしてメゲるが、80年代前半に解散した「つかこうへい事務所」時代のつか芝居を見てなきゃ、本物のつかこうへいを見たことにゃならないんである。いや、往年はそれぐらい凄かったってこと。
そんなこといったって、生まれた時期がズレてたんだからしかたないって反論も当然だ。過去へタイムトラベルするわけにもいかないしね。そこでせめて当時のつかが残した言葉だけでも味わってみてほしい、とそう思うわけなのである。70年代に書かれたつかこうへいのエッセイ集である。
まず言語センスの鋭さがこたえられない。「傷つくことだけ上手になって」、ってタイトルを見ただけで分かるんじゃないだろうか。この言葉の組み合わせはそうそう簡単に出てきやしないものだ。本書の全編で展開される、エッここでその単語が出てくるの? エッここでその言い回し? と驚かされるフレーズはたまらない快感だ。
もちろん言葉遣いの表面上の問題だけではない。独特の表現によってあぶり出される「生き方のスタイル」みたいなものも、小気…