永遠の愛は存在しない? 愛ほど軽いものはない? 性欲旺盛で愛を信じない後輩と、包容力MAXの先輩が紡ぐ同居系ラブストーリー『心くんは愛とかいらない』

マンガ

PR公開日:2023/11/8

心くんは愛とかいらない
心くんは愛とかいらない』(鉢野うら/白泉社)

「愛なんて、箸よりも軽い」

 それが信条の心くんは、恋愛への夢も希望もまったく持たずに生きてきた18歳の男の子。彼がこの世で唯一心を許しているのは、同居している2歳年上の先輩、燈だけだ。先輩といやらしいことをするのは大好きだけど、これは絶対に「恋愛」ではない。なぜなら自分たちは友だち同士なのだから――。

 ウェブマガジン「花丸漫画」で大好評連載中のBL作品『心くんは愛とかいらない』(鉢野うら/白泉社)。性欲旺盛にして愛を信じない主人公・心くんと、そんな彼をどこまでも優しく包み込む包容力MAXの先輩・燈のイチャコラ同居生活を描いたラブストーリーだ。

 10代後半という年代は、なにかと大人ぶったり背伸びをしたくなったりするものだ。とりわけ恋愛に関しては、さほど豊富でもない経験をひけらかしたり、または冷笑系をきどったりもしがち。しかし心くんが恋愛に醒めているのには、れっきとした(?)理由がある。

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心くんは愛とかいらない

 それは、5度の離婚歴がある母親をはじめ、親族がことごとく結婚に失敗していること。

 みんな結婚するときは、永遠の愛を誓っていたはずだった。愛する人と一生をともにしようと、心の底から思っていたはずだった。なのに自分の周囲の大人たちは、みな別れてしまった。

 永遠の愛は存在しない。いや、愛ほど軽いものはない。

 それは呪いとなって心くんの心に刻まれる。

 そうした彼の背景を知っている燈先輩は、ひとりHを手伝ってはくれるけど、それ以上の行為はけっしてしようとしてこない。心くんが自分に向けてくる感情は「愛情」ではなく、まだ「友情」と「信頼」の方が大きいと知っているので。

 自分が望むときに、望むようにふれてくれる先輩との関係に心くんは満足していたけれど、ある日突然先輩から「今後は心を触らない」と宣言されてしまい、呆然とする……。

 先輩に再び触ってほしい一心で、自分たちの関係を「友人」から「恋人」へ変えようと、一歩踏み出す心くん。

心くんは愛とかいらない

心くんは愛とかいらない

 しかし愛も恋も信じていない自分には、恋人同士というのがどういうものなのか、今ひとつ分からない。恋愛マンガを熟読したり、周りの人に相談したりして、少しずつ愛について学びはじめる。

 その懸命な姿はぎこちなくも(いやだからこそ)、胸打たれる。

心くんは愛とかいらない

 これまで真剣に捉えようとしたこともなかった愛という感情。しかし先輩を喜ばせたい、先輩をしあわせにしたいと思って様々に試行錯誤するうち、次第に自分の内側から新しい気持ちが込み上がってくる。どきどきして、ずきずきして、不安でたまらなくなるこの気持ち。ひょっとしてこれが愛というものなのだろうか――と。

心くんは愛とかいらない

 愛を信じなかったはずの心くんが愛を知るようになるのと同時に、燈先輩も彼に対する自分の、想像以上に強い気持ちに気づいて戸惑う。彼らの心のゆらぎが繊細に展開され、それにつれて性愛描写が変化していくのもまた読みどころだ。

心くんは愛とかいらない

心くんは愛とかいらない

 愛と性の相関関係に悩み、葛藤しながら仲を深めあっていく2人がこれからどうなっていくのか、にまにまと見守っていきたい。

文=皆川ちか

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