地方百貨店の衰退、夜行列車の終了…平成から令和への日本現代史。30年間で47都道府県にはどんな変化が生まれたか

文芸・カルチャー

公開日:2024/2/15

30年でこんなに変わった! 47都道府県の平成と令和
30年でこんなに変わった! 47都道府県の平成と令和』(内田宗治/実業之日本社)

 元号が「令和」となって久しく、昨今、平成から令和への変化がメディアで話題になる機会も多い。日本全国47都道府県もまた、時代の移り変わりによる変化にさらされている。

 書籍『30年でこんなに変わった! 47都道府県の平成と令和』(内田宗治/実業之日本社)はまさしく、膨大なデータにもとづき1990年代から現在に至る30年間にあった、都道府県の変化を紹介する1冊だ。地域ごとの歴史や産業などの情報をはじめ、民放の「キー局をどれだけ見られた?」といった視点もユニーク。つい自身の出身地を中心に追いたくなる。

お中元やお歳暮でも重宝した「地方百貨店」は衰退

 各都道府県のデータをもとに、序盤ではここ30年に起こった日本全体の変化も俯瞰する本書。例えば「地方百貨店の興亡」は、一定の年齢以上であれば、身をもって感じる部分も大いにある。

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 かつて日本では、百貨店のブランド価値が高かった。平成初期には、お中元やお歳暮で百貨店の贈答品を贈り合う慣習があり、本稿の筆者も子どもながらに、親のもとへ届いた贈答品の中身にワクワクしたものである。

 しかし、ここ十数年で地方百貨店の閉店が続いていると本書は指摘。2020年1月に「大沼百貨店」の閉店で全国初の「百貨店空白県」となった山形県をはじめ、複数の事例を取り上げている。

 特に地方百貨店が窮地に立たされた要因は「住宅地の郊外化による郊外の大型ショッピングモールの台頭」「地方都市の人口減少及び高齢化による実質的購買層の減少」で、背景には、自動車が生活必需品となるモータリゼーションの影響もあるという。

 本書にあるとおり、百貨店は都市の中心の駅または古くからの町の賑わいの中心地付近に立地しているのはうなずける。ショッピングモールの台頭を、けっして否定するわけではない。ただ、地方百貨店はもちろん、昔ながらの商店街も消えかけているのはどこか、もの寂しさも感じる。

平成から令和への鉄道事情「夜行列車」は貴重な存在に

 日本の交通事情も、ここ30年で大きく変わった。日本各地を高速で駆け抜ける新幹線はその象徴かもしれない。

 本書によると、平成5年にあたる1993年当時、新幹線の開通状況は以下のとおりだ。

東海道・山陽新幹線(東京―博多)
東北新幹線(東京―盛岡)。東京―上野は1991年開業
山形新幹線(福島―山形)。実際の列車は東京―山形などで運行
上越新幹線(大宮―新潟)。実際の列車は東京―新潟などで運行

 この時点では長野新幹線や秋田新幹線、九州新幹線はまだ開業していなかった。また、東海道新幹線で「のぞみ」が初めて運行したのは1992年で、当時はまだ、目新しい存在だったのは驚きだ。

 さらに、今から30年前には夜行列車が頻繁に走っていたというのも、歴史を感じさせる。本書にある1992年8月の東京から出発していた夜行列車の例では、長崎・佐世保行き「さくら」や熊本・長崎行き「みずほ」、高松行き「瀬戸」など、夜行寝台特急(ブルートレイン)が9本も走っていた。

 しかし、時代は流れて2009年には、東京駅と岐阜県の大垣駅の間を走る夜行列車「ムーンライトながら」、東京と九州をつなぐ「夜行寝台特急」が定期運行終了に。2024年2月現在、定期運行する夜行列車は、東京―四国・山陰を結ぶ「サンライズ瀬戸・出雲」のみだ。

 十年一昔とはよく言ったもので、特に平成から令和の変化はとても大きく感じる。そしてかつて見た景色が失われていくのは寂しくもある。ただ、そこにだけとらわれるのではなく、変化を受け入れるのも大事ではないかと、47都道府県の移り変わりを紹介する本書から学んだ。

文=カネコシュウヘイ

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